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不安の兆し

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「国家機密情報……!?」
「正確に言うならば、各国の王族のみが知る情報だ」
「それは国家機密情報とは違うような……」

 というか、そんな重大な秘密を後ろに騎士がいる状態で話て良いのだろうか。

「安心しなさい、あの騎士は私たち王族の近衛騎士。信用に値する者たちだ」

 俺の不安に勘づいたのか、王様がそう言う。

 まぁ、そういうことならば良いのか。

「話を戻すが、シュウ殿……君は本当に冒険者仲間に聞いたのか?」
「は、はい。一体どういうことだ……?」

 その冒険者は一体どこでその情報を得たんだ……?まさか王族の関係者……?俺が日本人であることに気付いてその情報を流したのか?

「その冒険者の名は?」
「……冒険者仲間と言っても、一緒に食事をしただけの仲です。冒険者は基本、その場の流れで食事をするような人が多いので、その場限りの仲というか……」
「そうか……」

 特徴も覚えてない。いくら何でも数日前に話した……それもこんな重要な情報を聞いた人物の容姿を跡形もなく忘れるのか……?

「それに、相手の容姿すら覚えてないんです。髪色も何も……。普通、そんな重要な情報をくれた人物の容姿など忘れないと思うのですが……」

 もしかしたら、四天王で頭を打ったりして記憶の一部が飛んだのかもしれない。だが、そんなピンポイントな部分だけ飛ぶか?いくらなんでも話がうますぎる……。

「認識阻害の魔法を使用していた可能性があるな」
「認識阻害……ですか?」
「あぁ、相手に自分の容姿等の情報の認識を阻害する魔法だ。使用している最中も相手にそれを悟られることがない厄介な魔法だ。」
「そんな魔法が……」
「だが、それこそ一国に一人か二人しか使えない魔法……。デルト王国がそんな魔術師を手放すわけがないのだが……」
「となると、協力者、またはその人物自身が城内の人間である可能性があるってことですね」
「そうなるな……」

 国がかりで俺の行動を制御しようとしている……?いや、それは考えすぎか。俺が勇者レベルの実力を持っているワケでもないし、制御しておく必要性が無い。

「して、その者は本当に勇者『召喚』と言ったのか?」
「え、えぇ。『グライアン王国で勇者が召喚された』と。」
「召喚と明言されているのか。勇者が現れた、というだけなら公表されているのだが」
「召喚された、という事実だけが秘密ってことですか?」
「そういうことだな」

 勇者って存在だけなら、世間から認知されてるのか。

「……自分で言うのもアレなんですが、僕が嘘ついているかもしれないとか思わないんですか?」

 信じてもらえるのはこちらとして有難いのだが、何の証拠も無しに信じているのであれば、一国の王として問題だと思うが。

「私には『看破』というスキルがあってな、嘘を言えばすぐに分かるのだよ」
「随分便利なスキルですね。国王様がスキルを持っているとは驚きましたよ」
「どういうことだ?」
「スキルポイントって初期ポイントか、レベルアップでしか手に入れるしかないでしょう? そのスキルの性能から、スキルポイントを大量に使用すると予想すれば、初期ポイントでは獲得出来ないだろうなーと思いまして……」
「シュウ殿……これは先天性スキルだぞ……」

 おーっと、なんか知らない単語が出てきたぞ。名前からして、生まれた時から持っているスキルってことか?

「え、えぇ、分かってましたよ。先天性スキルね……」
「……私が『看破』を持っていることを忘れたのか?」
「う……!」

 嘘が通じないとか……地味に辛いな。この人は絶対相手にしたくない。

「理解はしたようだが、先天性スキルとは生まれ持ったスキルのことだ。数百人に一人の確率で持っており、強力なスキルが多いのが特徴だ。」
「ということは、スキルポイントを消費して手に入れるスキルは、後天性スキルって言うんですか?」
「その通りだ」

 図書館で勉強していたからか、知識が偏っているな……。魔法についてはある程度勉強したが、ステータスやスキル等についての知識は皆無だし。

「とにかく、相当な実力者が何かを企んでいるのは明らかですね……」
「だが、シュウ殿に勇者の情報を流して一体何のつもりだ……? 何か心当たりはあるか?」
「心当たり……」

 十中八九、俺が日本人であることが関係してくるだろう。

 俺は勇者の情報を手に入れて真っ先に、勇者に会おうとした。ならば勇者と俺が出会うことで、何かが起こるってことなのか?

「……僕と勇者が出会うことで、何かが起こる……ってことですかね」
「それは、シュウ殿と勇者に何らかの共通点があるということで良いのかな?」
「……」
「……沈黙は肯定と捉えさせてもらう」

 『看破』スキル有能すぎねぇか!?決めた、この人とは絶対敵対しない、したくない。

「……これ以上は詮索しないで下さい……」
「……ワケありのようだな」

 僕は存在自体がワケありですから。但しこの世界に限る。

「……とにかく、今は分からないことだらけ……か」

 そこまで言って茶を一口。そして、再びその口を開いた。

「出来ることならそんな危険な人物を、この国には置いておきたくは無いな」

 そんな国王の冷徹な言葉が、その場に響いた。
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