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ボロボロの刀
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まだ日は高い。時計を持っていないから分からないが、恐らく……15時くらいだろうか。
「明日の待ち合わせもあるし、帰りに雑貨店で時計でも買っておこう」
幸い、お金にはそこそこ余裕がある。ちょっと無駄遣いしか程度でピンチになることは無い。
いや、別に時計は無駄遣いではないんだけど。
せめてこの世界に服以外にも持ち物を持って来れれば良かったのだが……。そうすれば愛用の腕時計が今頃腕にあったのに。
「無い物ねだりしても虚しいだけ、とはよく言うが……。実際この状況に立たされると、無い物ねだりせざるを得ないな……」
そんなことをボケーっと考えているうちに、武器屋に辿り着く。
「よーおっちゃん!」
「お、兄ちゃん! 話は聞いてるぜ!」
武器屋の店主まで知ってるって……結構色んなとこに情報広まってるんだな。けど、街を出歩いても視線とかは感じないし顔は広まってないみたいだな。
「はぁ……なら話は早いな」
「早いって何がだ?」
腰にさした刀を抜いて店主に見せる。
「うぉ……これはまた派手にやったな……」
「先の戦いでちょっと無茶な使い方してな……」
刀身は見事に折れ曲がり、所々にヒビが入っている。ウィング戦の最後、刀で魔法を斬りつけた時に大きく負荷をかけてしまったようだ。
騎士団長サマが拾った時には既にこんな有様だったらしい。だが俺が気付いたのは城から出た直後で、急遽この武器屋に寄ることになったのだ。
こんなことなら王様に新しい武器でも頼んどけば良かった……。
「これを修理して欲しいのか?」
「最初は俺もそのつもりだったんだけど、それの修理って結構時間かかるだろ?」
「確かにかかりそうだが……どうしてだ?」
「実はな、急遽明日の朝一にこの国を出ることになったんだ」
その言葉におっちゃんは驚きの表情を浮かべる。
「出国を先延ばしにすることも出来なくてな……。半日ちょっとで修理するのも無理だろ? だから代わりの武器を買いに来たんだが……」
「なるほどね……」
折角作ってもらったが一日もせずに壊れるとか……ウィング許すまじ。
「確かに半日はちょっと難しいな……」
「気にするな、俺の使い方に問題があったワケだし」
苦い表情を浮かべるおっちゃんに、気にするなと伝える。いくら俺とて、そんな無茶ぶりはしない。
「おいおい兄ちゃん。俺を誰だと思っているんだ?」
「気前のいいおっちゃん」
「いや、そうじゃなくて」
……このおっちゃんは何を言いたいんだ?
「俺はこの国一番の武器屋の店主だぞ?」
「この国に一つしかないけどな」
「やかましいわ」
正論を言っただけなのに、何故か怒られた。おかしくねぇか。
「兎に角、俺は腕にはそこそこ自信がある。ちょっと本気を出せば半日で修理するなんざちょちょいのちょいだぜ」
「マジでか!?」
「勿論」
良い笑顔でグッドサインをするおっちゃん。なんか腹立つ。
「ほら、もう作業を始めるから帰りな」
「悪い、助かる。……金はいくらだ?」
「そうだな……お得意様割引ってのを考慮して、1万ってとこかな」
「1万!? それだけでいいのか?」
「ああ。その代わり、今度は大事に使えよ」
「勿論だ」
取り敢えず邪魔になるだろうから、武器屋から出る。
「さーてと、じゃ、時計でも買いに行こうかな」
手を組んで上に振り上げ、毛伸びをしながら雑貨店へと向かった。
「明日の待ち合わせもあるし、帰りに雑貨店で時計でも買っておこう」
幸い、お金にはそこそこ余裕がある。ちょっと無駄遣いしか程度でピンチになることは無い。
いや、別に時計は無駄遣いではないんだけど。
せめてこの世界に服以外にも持ち物を持って来れれば良かったのだが……。そうすれば愛用の腕時計が今頃腕にあったのに。
「無い物ねだりしても虚しいだけ、とはよく言うが……。実際この状況に立たされると、無い物ねだりせざるを得ないな……」
そんなことをボケーっと考えているうちに、武器屋に辿り着く。
「よーおっちゃん!」
「お、兄ちゃん! 話は聞いてるぜ!」
武器屋の店主まで知ってるって……結構色んなとこに情報広まってるんだな。けど、街を出歩いても視線とかは感じないし顔は広まってないみたいだな。
「はぁ……なら話は早いな」
「早いって何がだ?」
腰にさした刀を抜いて店主に見せる。
「うぉ……これはまた派手にやったな……」
「先の戦いでちょっと無茶な使い方してな……」
刀身は見事に折れ曲がり、所々にヒビが入っている。ウィング戦の最後、刀で魔法を斬りつけた時に大きく負荷をかけてしまったようだ。
騎士団長サマが拾った時には既にこんな有様だったらしい。だが俺が気付いたのは城から出た直後で、急遽この武器屋に寄ることになったのだ。
こんなことなら王様に新しい武器でも頼んどけば良かった……。
「これを修理して欲しいのか?」
「最初は俺もそのつもりだったんだけど、それの修理って結構時間かかるだろ?」
「確かにかかりそうだが……どうしてだ?」
「実はな、急遽明日の朝一にこの国を出ることになったんだ」
その言葉におっちゃんは驚きの表情を浮かべる。
「出国を先延ばしにすることも出来なくてな……。半日ちょっとで修理するのも無理だろ? だから代わりの武器を買いに来たんだが……」
「なるほどね……」
折角作ってもらったが一日もせずに壊れるとか……ウィング許すまじ。
「確かに半日はちょっと難しいな……」
「気にするな、俺の使い方に問題があったワケだし」
苦い表情を浮かべるおっちゃんに、気にするなと伝える。いくら俺とて、そんな無茶ぶりはしない。
「おいおい兄ちゃん。俺を誰だと思っているんだ?」
「気前のいいおっちゃん」
「いや、そうじゃなくて」
……このおっちゃんは何を言いたいんだ?
「俺はこの国一番の武器屋の店主だぞ?」
「この国に一つしかないけどな」
「やかましいわ」
正論を言っただけなのに、何故か怒られた。おかしくねぇか。
「兎に角、俺は腕にはそこそこ自信がある。ちょっと本気を出せば半日で修理するなんざちょちょいのちょいだぜ」
「マジでか!?」
「勿論」
良い笑顔でグッドサインをするおっちゃん。なんか腹立つ。
「ほら、もう作業を始めるから帰りな」
「悪い、助かる。……金はいくらだ?」
「そうだな……お得意様割引ってのを考慮して、1万ってとこかな」
「1万!? それだけでいいのか?」
「ああ。その代わり、今度は大事に使えよ」
「勿論だ」
取り敢えず邪魔になるだろうから、武器屋から出る。
「さーてと、じゃ、時計でも買いに行こうかな」
手を組んで上に振り上げ、毛伸びをしながら雑貨店へと向かった。
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