傍観者を希望

静流

文字の大きさ
上 下
288 / 292

288

しおりを挟む
「騙されていると信じていたからですよ。バレていると解っていたら、とてもやってられません。私には、道化師の趣味はありませんからね」

「そこまで卑下する事もない、と思うがな」

「セイ様にだけは言われたくありません」

プイッと外方を向かれてしまうが、先程までとは雰囲気も違い、単なるリアクションとしてやっている感じだ。

「それで、実際のところどうしたい?」

「猶予期間を頂けるのでしょう?ゆっくりと再検討させて貰います」

ニッコリと態とらしく返され、意趣返しかと嘆息する事になった。
こちらにも非があるが、個人的な問題ではないという考慮はしてくれないようだ。

「まあ、確かにそう言いましたが…。揚げ足を取るなんて、大人気ないですよ」

「長々と無駄な努力をしたのですから、代償としては可愛いくらいです」

「それって開き直っただけで、私の所為でもないですよね?」

「そうですよね…、でも、何となく誰かにあたりたいと言いますか、責任転嫁したい気分なのかも?」

「かも?って可愛いらしく言われても、納得できかねますよ」

誤魔化すような対応に、文句を言えば笑って流そうとされる。
こうなると、老獪さを隠そうともしないで、余計にタチが悪い感じだ。

「突然の来訪で申し訳ありません。ライカが、ご迷惑をお掛けしました」

話に気を取られて、ライの来訪に気付かなかった。

突如声を掛けられた状態で、一瞬ギョッと驚き、反射的に振り返る。
ライの姿を認め、肩の力を抜いたが、グレンも迎えに出てない。

何処から入ったのだ、と眉根を寄せることになるが、悪るびない態度のライに元凶の要素を見つけた気がした。

「ライ。表玄関から入るのが、最低限の礼儀だと知らないのか?」

「私は客ではなく、単に引き取りに来ただけです。歓待されても困りますし、合わせる顔もないですからね。ライカの暴走は、私の落ち度であり、管理不行届と責められても仕方がないレベルだと理解してます」

そう言った後に、深々と頭を下げてくる。
この行為が最も嫌いだと知っていて、敢えてしてくる方に苛立つが、それを踏まえても、責任者としては謝罪をするしかないのだろう。

不本意な行為にも関わらず、頭を上げる気配すらなく、ひたすら下げ続けている。

ライカは、最初こそ唖然としていたが、いそいそと横に並び、同様に頭を下げた。

気配に気付いてグレンもやって来ていたが、その光景を観て退がって行く。
それを見届けて、ライ達に頭を上げるよう促した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

処理中です...