傍観者を希望

静流

文字の大きさ
上 下
259 / 292

259

しおりを挟む
「嫁ぎ先が、皆無よりはマシだろう。それに、それくらいしないと、効果がないと思わないか?グレンも、追いかけ回されずに済む」

陛下も、大分腹に据えかねていたのだろうが、目を半眼にして言われても、グレンとしては言葉に詰まる話だ。

「では…第六王女以下は、どうなさいますか?」

「上が修道院に入れられ、身を処せば良いが…。やはり全員修道院に入れるか?上は厳格な所で、下は一般的ながらも権力を排除したところを選定してくれ」

「つまり、私が修道院を選び、各々の行く先を決めろと?」

「アルフならば、内情も込みで詳しいだろう?悪いが、よろしく頼む」

全く悪びた雰囲気がない、とアルフレッドが冷めた視線を向けている。
権力者ならではの勝手さだと呆れ、親も子も大差ないなと内心思っていた。

「私は現在、宮司長を兼任してますが、辞任しても宜しいでしょうか?」

「急に何を言い出すのだ。アルフ以上の適任者はいないのだぞ?」

「それが何か?いなければ、次が嫌でも育ちますから、問題はありません」

アルフレッドの言いように、静かな怒りを感じる。
こうなると、後が大変だと知っているだけに、陛下に同情するものの、口出しする気がなくなり、目を逸らせた。

「いや、充分問題だろう⁉︎暫くの間は、苦情が噴き出して収拾がつかんぞ」

「現状からすれば、それはあり得ません。多少の混乱はあっても、1ヵ月もしないで落ち着きます。陛下の杞憂です」

「そうは言っても…アルフの様には如何だろう?辞任するのは、保留にして欲しいのだが、どうしても駄目なのか?」

「散々我慢し続けた結果です。いい加減、私も許容する気が失せました。今後は、セイ様のみにお仕えします。陛下と違い、仕え甲斐がありますので」

「悪い点は改善するから、どうか留任してくれ。アルフがいないと困るのだ」

辞めても困らない体制を、整えていた事に驚いたが、準備万端で言い出されては、引き留める口実がなく、陛下も泣き落としに掛かっていた。

宮司長の職務を片手間にこなす能吏は、確かにそう居ないだろうが、困った時の尻拭いを一手に引き受けるのは、確かに嫌気が差して当然だ。

だいたい、先程の命令は、本来なら宰相殿の仕事で、宮司長の管轄外だった。

「本来の職務内容のみなら、一切ご迷惑を掛けずに退任できますが?もう既に、次世代が育ってますよ」

「手回しが早過ぎだ。アルフが、引退するには時期尚早ではないのか?」

「兼任すること自体が、異例ですから、備えをして置いて当然でしょう?緊急事態に、両方対処するのは、いくら私でも不可能ですから、体制を整えたんです」

結局は、陛下の無茶な命令が、全ての原因だと言っているようなものだった。

グレンも、静かに頷いているが、確か近衛騎士団も、臨時で妙な地位ができたと耳にしたことがある。

つまり、アルフレッドと似た状態なのだろうが、陛下が把握している気がしない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...