傍観者を希望

静流

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「いや、グレン?気配を消し、視界に入らない様に控える以上に、何をする気なんだ」

「それはこれから検討するので、未定ですが…距離をもう少し置くか、完全に身を隠すでしょうか」

「…グレン、いったい何を目指しているんだ。密偵の、刺客にでもなる気か?」

サムに対する警護並みの内容で、方向性が斜め上ではないか、と呆れた反応になった。

「なるほど、確かに密偵ですね。今度、アルフに教えを乞うてみます!」

「いや、グレン?私は、参考例を挙げた訳ではないのだが…」

此方の意図を曲解されて、妙に意気込んでしまったグレンに、声を掛けたが聴こえてなさそうだ。

こうなると猪突猛進で、外野の意見が耳に入らない悪癖があるから厄介なのだ。
後はアルフレッドに、言い含めて置くしかないが、彼方も便乗する場合もあるから、打つ手がない状態のようで頭痛がしてくる。

「セイ様。そろそろ、お食事になさいませんか?」

背後から、アルフレッドが声を掛けてきた。
此方は毎回ながら気配がなく、声を掛けてこない限り気付けない。
コレはコレで、心臓に悪い気がする。毎回、驚かされるのも考えものだ。

「アルフ。どの辺から聞いていたんだ?」

「人聞きが悪いですね。サムの警護を依頼する辺りからです」

いや、それはほぼ最初からだ。
立ち聞きを、ー咎める私が責められては、本末転倒だろう。

「アルフ。なら、早々に声を掛ければ、良かった筈ではないか?」

実際、グレンに側を離れるように言った時点で居たなら、即座に手配出来ただろう。

「いえ、何やら話たげでしたので、控えさせて頂いたまでで、他意はありません」

ニッコリと嘯いてくれるが、色々と裏がありそうで、額面通りに受取難いものがある。

「そう…まあ良いが、アルフはサムの警護はどう思う?」

「双方への、抑止力になる良策だと存じます」

意外に肯定的な反応だが、アルフレッドには別の見解がありそうだ。
制裁への抑止力以外に、何の効果を期待しているのだろうか?

「制裁防止以外に、何の効力があると言うのだ?精々、気付いたサムが、気分を害する程度ではないのか?」

「制裁防止の他に、監視されている疑惑も生みます。そうなれば、双方共に下手な真似はしません」

警護目的だろうと、監視しているのは確かだが、そういう思考を働かせる可能性を考慮してなかった。防犯性はあるが、何とも微妙な話に聞こえる。

「だが、そうするとサムは、信用されてないと疑念を抱かないか?」

「多少は抱くでしょうが、これ以上疑われない様に頑張りもするでしょう。どう転んでも、セイ様に損はありません」

「いや、逆に疑われる位なら、と辞表を出さないかが心配なのだが…」

此方の心配とは裏腹な内容を言われ、首を振って言い募るのだが、返って生暖かい視線を向けられる。

「それに関しては、心配無用です。アレは、それほど器が小さくないですから、察して身を処すだけです」

「そうです。間違っても、誤解して辞める事はありえません」

2人揃って辞表を出す事はないと、主張されれば、納得するしかないが、果たして先程の命令は遂行させるべきか、内心逡巡していた。

「では、私は手配をして参ります」

あっさりというか、前言が翻る前にとばかりに急足に下がってしまう。

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