傍観者を希望

静流

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「では、セイ様が悔やむ必要はありません。あれは、人間なら老人ですよ?判断能力もあったのですから、全て納得の上です」

ライは、こちらが何に囚われているのか理解し、不要だと躊躇なく言い切る。
多少怒ったような態度だが、別に私に対してではない。

「余計な置き土産を残すとは、迷惑極まりない奴です。あれは捻くれてましたから、現状もあれの嫌がらせと考えられます」

目が半眼になり、恨み節を言い募られても、当の精霊は寿命により抹消している。
ライの姿を眺めつつ、一理あるなと思えてくる。あの精霊なら、それ位やりかねない。

「その亡くなった聖霊が、どうかしたのですか?」

ライトが、キョトンとした顔で声を掛けてきた。他のアルフレッド達も、怪訝そうに此方を注視している。

「どうもしないけど…老獪な精霊だったから、どこまで計算尽くだったか疑問なだけだよ」

「端的に言えば、セイ様が仰られる通りで間違いないが、唯一セイ様と契約を交わした精霊だ。同時に我らが、契約を認められるのに成人を待つ羽目になった元凶だ」

ライが憎々しげに追加してくる。
アルフレッドとグレンは、妙に驚いているし、ライトは何か考え込んでいるようだ。

「私としては、成人後に延期して置いて良かったけどね」

「どの辺が良かったと?我らは焦らされ続けましたがね」

「薬師、騎士、商人、庭師、実業家という伝を持てたし、各種違う知識や情報が得られるからね。話を聴くだけでも充分面白いけど、現場の者しか分からない生の声を聞けるのも助かるよ」

「…それは、良う御座いましたね。我らはこれでも必死なんですが?」

棒読みで賛同されて、愚痴られたが、その点を否定するつもりはない。
彼等が契約を結ぶのに必死なのは、よく解っているつもりだ。

「努力を否定した覚えはないし、理解もしてる。歩み寄る努力を怠っていないのもね」

「…そういうことをサラッと言うから、狡いんです。怒れないじゃないですか」

それまでの拗ねた物言いが、穏やかなものとなった。
そこまで傍観していたアルフレッドが、スッと一歩出て来る。

「あの、大変失礼だとは承知してますが、契約はされていないのですか?」

「…精霊王は誰もしてない。契約は成人後だ」

「それでも、従うものなんですか?」

「謂わば仮契約中だからな。それに、精霊の世界は力がある者が強いから当然だ。何か問題があるのか?」

「いいえ。もちろん、問題はありません」

「ライ様。一つ質問があります!」

声の方を見れば、ライトが妙に畏まって、挙手していた。
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