傍観者を希望

静流

文字の大きさ
上 下
106 / 292

106

しおりを挟む
「そろそろ、大国の方の詳細も教えてくれないか?あの者が序でなら、大元はどういう内容なのか気になるのだが」

「物証付きだとするなら、なぜ今まで黙っていたにです」

宰相殿は、胡乱気に此方を責めてくる。
今更ながら、納得がいかないのだろう。

陛下は苦笑して宥めているが、今まで苦労しただけに思うところもありそうだが、おくびにも出さない。


文句を言われても、此方にも出せないだけの事情がある。

一気に方は着くだろうが、差し障りがあるし外聞も悪過ぎる内容なのだ。

ハッキリ言って、保険で持っていても使う気はなかった物で、今も気が進まない。


「先ほど、義母の件は猶予期間を設けた事を、呉々も忘れないで下さい。ライ、陛下にお渡ししなさい」

頷いたライが、書類の束を陛下に差し出した。


ペラペラと捲って、サッと目を通していたが、一瞬目を見張る。

慌てて、最初から熟読する様に熱心に読んでいる。


「陛下、如何なさいました?」

宰相殿の、控えめな問いかけにも応えずに凝視している。


書類の半分以上は、幾つかの組織のリストだ。聞き覚えのある名でも、見つけたのだろうと眺めていたら、血走った目で此方を見てきた。


「こう言っては変だが、名の通った組織が十年ほど前に一斉に消滅した。地に潜ったとも囁かれていたが…。私でも把握していた名が、ここにある理由を訊いてもいいか」

陛下の持つリストを見遣りながら、何も直球で来なくてもいいのにと、詮ない事を内心こぼしていた。


「其処に上がっているのは、壊滅した暗殺組織です。一般的には知られていませんが、派閥や部署名が違うだけで、本来は同一組織です。壊滅と言いましたが、実際には解散や粛清されたと表現した方がより正確です」


「なぜ、セイ殿がそれを知っている。それに、このリストはいったい誰が作ったのだ?」


「余りにも鬱陶しいので、直接文句を言った結果です。その誠意の証に、リストと処理内容及び今後の対応を、報告書として頂きました」


淡々と告げれば、何とも言えない顔でリストを嫌そうにみる。

暗殺組織の用意した物だからといって、嫌悪しなくてもいいのだが、そういう訳にもいかないのだろう。


「鬱陶しいほど、暗殺者が来ていたのですか?まだ、5歳にもならない子供相手に、皆して何をしているんです。セイ殿も、直談判に行くなんて無茶が過ぎます」

宰相殿は、内容に腹を立て叱責してくるが、今更だ。


「そのお蔭で証拠があるんだ、苦情は当時依頼した方に言ってくれ。言い忘れたが、依頼したのは大国と義母だ。二ヶ所から依頼を別々に受けた挙句、対象者の前で言い合いをして、暗殺そっちのけで同士討ちに縺れ込む始末。いい迷惑だから本家本元に、遺体を転送して手紙を添付した。別に、乗り込んで苦情を言い立てたりはしてない」


相手方に、乗り込むような愚を犯してないと主張はしたが、後日組織の長が謝罪に来た件は報告する気はない。

実は、今でも交流があり、良い茶飲み仲間だと知れば激怒されそうだ。

だが、お蔭で玉石混合の情報が得られて、重宝している。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

処理中です...