ティラミス

静流

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「酷いって…そんな話だとは、知らなかったんだよ。謝るから、機嫌を直してくれないか?」

「なら、ご一緒しても良いわよね?」

「分かった…。申し訳ありませんが、明日もご相伴させて頂いても構いませんか?」

「ああ、構わないよ。だから言っただろ?勝手に断ると大変だとな」

ライラスが折れたお蔭で、話しが着いたが、揶揄われて渋面になっている。

でも、確かに食べ物の恨みは怖いし、アレクも類が及ばないように、しっかり避けていたくらだ。他の面々も、敢えて口出しを控えていたのが、逆に印象的だった。

「サラ、良かったな。これで、心置きなく仕事ができるだろ?」

「あ、そうだったわ。それでは、本当に失礼します!」

マックの言葉で、我に返ったサラは、慌ただしく挨拶し、去って行った。

「それでは、私達もこれで失礼します。カイさん、閣下とライラスは、甘いものは苦手です。試食は、サラと楽しむといいですよ」

フランクは去り際に、苦笑しながら一言添えていく。
一応は分かっていたが、それで腑に落ちるところも無きにしも非ずで、ついアレクと目を見合わせた。

「あの…本当に良かったのですか?」

「私達のことなら、支配人もよく分かっているから問題ない。下手に単独で行くのは、駄目だからね?」

「ですが、退屈しませんか?結構な数がありましたから、それなりに時間が掛かりますし…」

「カイさん。サラが楽しんでいるのを愛でるのも、また一興ですから、気に病まなくて大丈夫ですよ」

楽しむ術はあると言われても、想像すると若干引く状況に思える。
微妙な顔をした所為か、アレクがジロっとライラスを睨み、竦みあがらせた。

「支配人が、恐らく気を回し、摘むものを用意するだろうから、暇を持てあますことはないよ。心配は無用だ」

アレクが自信満々に言えば、妙に説得力がある。
用意周到だからと追加されると、余計にあり得そうな気がして、思わず頷いていた。

「カイ殿の疑念も晴れたところで、ギルドに帰るかな」

そう言いながら、見送りを兼ねて立ち止まっていた四角から歩き出す。
睨まれたライラスも、ぎこちない動きで後に続いた。

「そういえば、カイ殿の方は大丈夫なのか?」

「何がでしょうか?」

「甘い菓子が、だ。確か、果物の甘さ程度が好みだろう?」

アレクの指摘には驚かされたが、調査したと聞いていたから、さほど不快にも感じない。ただ、多少の呆れはやっぱりあった。

「サラ様のように好きとは言えませんが、食べられないほど嫌いでもありませんよ?」

「それでは、我等と大差ないのだが…何で請けたんだ?」

素直な感想に、アレクからは呆れた視線を向けられる。
同時に、訝しげに問い直されて、今更ながら理由を自問する羽目になった。
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