ティラミス

静流

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「わぁ!カイさん、すごく美味しそうよ」

覗き込み、サラが歓声を上げている。
実際、上手く盛り付けられた果物とゼリーが、皿の中で煌めいていた。

「サラ様も一口如何ですか?」

「え、いいの?」

目を輝かせているサラに、取皿に分けた物を渡せば、跳び上がらんばかりに喜んでいる。

「カイ殿。この中なら、どの果物が1番好きなのか?」

アレクが興味深気に、皿の中を眺めて訊いてくる。

「やっぱり、ベリーが1番美味しそうです。あ、でも桃も…。1番ですよね?」

「私の聞き方が悪かったな。好きな果物を、教えてくれるか?」

アレクが苦笑を浮かべ、訂正してくる。
何処か生温かい視線に、急に恥ずかしくなってきた。

「ベリーと桃ですが、他の果物も好きですよ?」

「また、そのようなことを言う。確か、柑橘類は苦手なのだったな」

言葉と共に、ヒョイっと皿にあったグレープフルーツを攫っていく。

「ふむ。ゼリーの甘さで、これなら好きだったりするのか?」

一口食べて、申し訳なさそうな顔をし、尋ねてきた。
まだ食べてなかったので、残っている同じ物を食べてみる。

「あ、これなら大丈夫です。こうすれば、美味しいんですね」

不思議に思えて、ジッと皿を見つめていると、サラが笑い出した。

「カイさん。皿じゃなくて、閣下を見てあげなさい」

皿は逃げないわよっと、揶揄われてしまうが、アレクに目を遣れば、微妙に拗ねていた。

「アレクさん。つい、不思議に思えて魅入ってしまい、申し訳ありません」

「いや。別に怒ってはいないが…。忘れられたようなのが、少し悲しかった」

最初は否定していたのだが、突如一転した態度で眉尻まで下がった。

「閣下、その調子です。素直が1番ですからね」

ライラスが、変な褒め方をしていて、元凶が判明した。
サラとマックが、白い眼でライラスを見ているのに、気付かないで耳打ちをしている。

「ライラス。閣下に、変なことを吹き込まないでくれる?カイさんに迷惑よ」

サラが、我慢の限界とばかりに噛み付いている。

「唆してはないだろ?ちょっと、助言しただけだ」

「それが、余計なお世話なのよ!」

サラがギッと睨めば、ライラスが面白くなさそうな顔をし、渋々両手を挙げ降参だと謝った。

「サラ嬢。そう怒らないでやってくれないか?ライラスは、拗ねているだけだよ」

アレクが、苦笑し執り成すような事をしている。

「拗ねるって…?」

サラは怪訝な表情で、ライラスを見遣っている。

「閣下は、余計なことを言っている暇があるので?」

ライラスが苦虫を噛み潰したように、負け惜しみを零し、半ば認めたような態度だ。
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