ティラミス

静流

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「カイさん、閣下の方が早く着きますから、今回は諦めて下さい」

挙句に、ライラスからも、大人しく運ばれるように諭される。

「でも、重くないですか?」

「心配ない。寧ろ、軽過ぎて怖い」

「いえ、軽くはないかと」

目を瞬かせて、それはないと反論したのだが、余計に眉を顰められた。

「カイ殿はそう言うがな、まだ武器の方が重い。壊しそうで不安になる」

「武器…ですか。あの因みに、何を使用されているのですか?」

「主に剣と弓だが、槍を振るうこともある」

意外に一般的な内容で驚いたが、総司令官が突飛な武器を持つのも変だと思い直した。

そんな会話をしている内に、到着したのだが、相変わらず降ろして貰えない。

「揃ったわね。それでは、入りましょう。奥の席を予約しているから、眺めもいいわよ」

昨夜行った店に比べて、格式ばった感じで、ギャルソンも黒服で全ての席に2人配置されていた。

「サラ様、ここは…?」

尻込みしたくなる雰囲気と、場違いな服装ではと心配になってきた。

「カイさん?ああ、ここはドレスコードもないし、気軽に楽しめる店だから安心していいわ。ちょっとリッチな気分を味わえる、で有名なのよ」

意外に値段も良心的よっと、ウインクされたが、ギルドの制服では完全に浮く。

「サラ。カイさんではなくても、我等では二の足を踏むのだが、他の店では駄目なのか?」

「俺も右に同じで、ちょっと遠慮したいんだけど…」

フランクに続きマックも、居心地が悪そうにサラに陳情したのだが、鼻で笑われて一蹴されてしまった。

「全く、男って妙なところで気が小さいわね。奥の席は、衝立で遮られているから、周りを気にする必要もないのよ?しかも、コース料理も手配済みなんだから、変更はなしよ」

サラは、他に何が問題なのっと一同を睨みつける。

「さっさと入らないと、他の客の邪魔だぞ」

あっさりと、アレクはカイを抱えたまま入店し、案内を乞うている。

「ちょっ、待って下さい。閣下、切替が早過ぎです」

「ほら、さっさと入って、後が詰まっているのよ」

アレクに声かけているライラスを、サラが急かしながらフランク達の背を押し、後に続いた。

フランクの予想通りに視線が突き刺さるが、直ぐに納得顔で逸らされ、逆に拍子抜けしている。

他の客達が、体格の良いアレク達軍人を異分子の様に感じても、連れが小柄な女性と子供だと気付いて、興味が失せたのだ。もっとも、相変わらず熱視線を送る者もいるにはいたが、アレクの一睨みで、みな竦み上がった。

サラが、いい気味だと言わんばかりに、鼻を鳴らし意地の悪い笑みを浮かべる。ライラスに色目を使う女性達には、辟易していただけに、すっきりしたようだった。
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