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「まったく、頭が沸いているのですか?気持ちは分からないでもないですが、少しは落ち着いて下さい」
「分かるなら、邪魔せずともいいだろう。可愛いらしい番を愛でて何が悪い」
憮然としながら、惚気るという器用な真似をしているが、腕の中で顔を蒸気させているカイに目を落とすと、相好を崩している。
「カイさんに迷惑でしょうが。慣れてないんですから、可哀想ですよ。手加減ぐらい覚えて下さい」
ライラスは「初々しくて、可愛いのは認めますがね」と言い添え、嘆息している。
だが、それを耳にした途端に、アレクは腕で囲い込み「見るな」と、無茶な注文を付けている。
「閣下。カイさんが窒息しますよ。狭量過ぎて、愛想を尽かされたいんですか?」
「減るっ」と文句を言うアレクに、「それどころではない」とライラスが注意を喚起させている。お蔭で、腕で窒息させられずに済むが、暫く必死に呼吸する羽目になった。
「済まない。もう大丈夫か?」
せっせと背中を摩っていたアレクが、気遣わしげに確認してくるのに、素直に頷きはしたが、一気に体力を消耗した気分だった。
「カイさん。はい、これでも飲んで一息ついて下さい」
いつの間に用意したのか、爽やかな香りのするお茶だ。
序でに、アレクにも差し出されたが、こちらは水のようだった。
「カイ殿へのお茶は感謝する。だが、これは酷くないか?」
「閣下には必要では?冷たい水で、頭を冷やして下さい」
顔を引き攣らせたアレクに、素気無く流すライラスだが、目がしっかり笑っている。
ただし、嘲た感じが混じっている。
「まさか、意趣返しではないだろうな」
胡乱気に見遣り、大人しく水を一気飲みした途端に、顔を歪めている。
緩められた腕の中で、カイは申し訳なさそうに温かいお茶を啜って、ライラスに目礼し、謝意を伝えていた。
キンキンに冷やされた水を飲んだアレクは、目を眇めて「どこが落ち着いただ」と零している。
「あの、大丈夫ですか?」
言葉と共に手を伸ばされ、頭痛が一瞬で消え去る。
アレクは、目を瞬き破顔した。
「治してくれたのか?ありがとう。私の番は世界一優しいな」
「あ、いえ緩和させただけです。治癒の方が良かったですか?」
否定しながら、窺ってくる姿を蕩けるようにみて、カイの頭を撫でる。
「そんなことはない。カイ殿が気にかけてくれるだけで、私は充分幸せなのだ。それよりも、疲れたのではないか?」
本気で心配になってきたアレクが覗き込み、額や頰に触れて確認してくるのに「大丈夫です」と返しながらもカイは、はにかんでいる。
「敵に塩を…、ではなくて藪蛇?いや、余計なお世話でしたかね」
ライラスが、生暖かい目で眺めながら、1人ボヤいていると、ノックの音が響いた。
時計に目を走らせれば、もう直ぐで昼時だ。
「分かるなら、邪魔せずともいいだろう。可愛いらしい番を愛でて何が悪い」
憮然としながら、惚気るという器用な真似をしているが、腕の中で顔を蒸気させているカイに目を落とすと、相好を崩している。
「カイさんに迷惑でしょうが。慣れてないんですから、可哀想ですよ。手加減ぐらい覚えて下さい」
ライラスは「初々しくて、可愛いのは認めますがね」と言い添え、嘆息している。
だが、それを耳にした途端に、アレクは腕で囲い込み「見るな」と、無茶な注文を付けている。
「閣下。カイさんが窒息しますよ。狭量過ぎて、愛想を尽かされたいんですか?」
「減るっ」と文句を言うアレクに、「それどころではない」とライラスが注意を喚起させている。お蔭で、腕で窒息させられずに済むが、暫く必死に呼吸する羽目になった。
「済まない。もう大丈夫か?」
せっせと背中を摩っていたアレクが、気遣わしげに確認してくるのに、素直に頷きはしたが、一気に体力を消耗した気分だった。
「カイさん。はい、これでも飲んで一息ついて下さい」
いつの間に用意したのか、爽やかな香りのするお茶だ。
序でに、アレクにも差し出されたが、こちらは水のようだった。
「カイ殿へのお茶は感謝する。だが、これは酷くないか?」
「閣下には必要では?冷たい水で、頭を冷やして下さい」
顔を引き攣らせたアレクに、素気無く流すライラスだが、目がしっかり笑っている。
ただし、嘲た感じが混じっている。
「まさか、意趣返しではないだろうな」
胡乱気に見遣り、大人しく水を一気飲みした途端に、顔を歪めている。
緩められた腕の中で、カイは申し訳なさそうに温かいお茶を啜って、ライラスに目礼し、謝意を伝えていた。
キンキンに冷やされた水を飲んだアレクは、目を眇めて「どこが落ち着いただ」と零している。
「あの、大丈夫ですか?」
言葉と共に手を伸ばされ、頭痛が一瞬で消え去る。
アレクは、目を瞬き破顔した。
「治してくれたのか?ありがとう。私の番は世界一優しいな」
「あ、いえ緩和させただけです。治癒の方が良かったですか?」
否定しながら、窺ってくる姿を蕩けるようにみて、カイの頭を撫でる。
「そんなことはない。カイ殿が気にかけてくれるだけで、私は充分幸せなのだ。それよりも、疲れたのではないか?」
本気で心配になってきたアレクが覗き込み、額や頰に触れて確認してくるのに「大丈夫です」と返しながらもカイは、はにかんでいる。
「敵に塩を…、ではなくて藪蛇?いや、余計なお世話でしたかね」
ライラスが、生暖かい目で眺めながら、1人ボヤいていると、ノックの音が響いた。
時計に目を走らせれば、もう直ぐで昼時だ。
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