ティラミス

静流

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「ライラス様が悪い実例集…、方々に迷惑って?」

いつの間にか復活していたカイが、目を丸くしてライラスを眺めている。

「今は落ち着いているが、昔は騒動の元凶だったと言えば驚くか?」

「アレクさん、まさか揶揄ってます?」

あり得ないと首を振れば、意味深な笑みを浮かべる。

「ライラス、よほど信頼されているようだな」

「閣下。今は、これでもギルドの副所長です。馬鹿な真似はしません」

「特注の猫を被っているようだな。カイ殿、サラに聞いてみるといい。ライラスは昔ヤンチャ坊主だったのか、どうかをね」

「聞く必要はないですよ。今暴露しますから、私がとんでもない学生だったとね」

仕方なさそうに告げられたが、現状からでは信じ難い話だ。

「ライラス様?あの冗談では…。まさか、アレクさんの言葉が、真だと言いませんよね」

「幻滅されるでしょうが、閣下の言に嘘は一切ないですよ。私は、騒ぎを引き起こす常習犯で、嫉妬に狂って暴走もしてます」

サラッと耳を疑うことを聴かされ、目が点になる。
常に冷静沈着で、紳士的な対応のライラスしか知らないだけに、俄には信じられないのだ。

「学術院では、悪い前例を大量生産したせいで、妙な禁止事項も多いが、多少のことでは動じない教師が育ってもいる。序でに、校舎や寮には、今も跡が残っているそうだ」

来年、探してみるといいとアレクが、追加してくる。

…跡が残る騒ぎって、乱闘以外にあるのか?

ソロっとライラスを窺えば、目が会い微笑まれる。
幻滅以前の問題のようなと、半笑いを返し微妙にアレクの方に身を引く。

「そう怯えなくても大丈夫ですよ。今は見ての通り更生してます。第一、閣下の番に危害を加えるほど耄碌してません」

哀しげに言われれば、罪悪感も湧くが、それすら演技に思えてくる。

「私としては役得だが、ライラスは信頼して問題ない相手だ。そう警戒しなくても大丈夫だ」

後ろから、忍び笑いを漏らしつつ、擁護しているアレクはどこか嬉しそうだ。
後ろに下がったぶん、深く抱き込まれ、今は頭や肩を撫でて楽しんでもいる。

「閣下、よく言えますね。疑惑を抱かせて、警戒させたのは誰ですか。全く、嫉妬の仕方が歪んでますよ」

心持ち、ヤニ下がった顔のアレクに、白い目を向け呆れた口調で話すライラスだが、口元は笑っている。

「アレクさん、嫉妬しているのですか?」

「うん?それほどでもないが…カイ殿が懐いているのは、少し面白くないのは確かかな」

その割に、見下ろす目は蕩けていて、機嫌も良さげなのが、解せない。

「でも、それほど気分を害していませんよね?凄く楽しそうです」

首を傾げて見せれば、余計に抱きしめられた上に、妙に興奮している。

「私を、どうしたいんだ?そんなに煽ってくれるな」

悶えながら、意味不明な発言をしてくる。
困惑しているのに気付いたライラスが、アレクを軽く叩いて「はい、そこまで」と、いなしている。
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