ティラミス

静流

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「これでは埒が明かないですね。取り敢えず、必要事項を先に進めませんか?」

ライラスが、仕方なさそうに話の舵をきってきた。

「そうだな。先ず、軍はこの度の戦功をカイ殿に認めている。5年間の生活保証に加え、魔力使用料と報奨金が出ることになっている。次に、魔力持ちである事を踏まえ、学術院への入学許可が下りた。此方も、学費やそれに纏わる費用は国費で賄われる」

一旦話を切って、質問はあるかと問われるが、寝耳に水の話で頭が回らない。

「閣下、纏めて質問を受けた方がいいのでは?」

ライラスが、助け舟を出している様で、余計に追い討ちをかけてきた。
アレクの逡巡から想定しても、嫌な予感がしてくる。

「あの、今の話だけで充分至れり尽くせりで、お腹いっぱいなのですが…これ以上何が?」

「カイ殿は謙虚だな。これでは、とても足りない位なのだが…。残りの話は、訴訟問題になっている親族関連だ」

「訴訟は起こしてますが、まだ結論は出ないのでは?暫くは、かかると聞いてます」

何でここで訴訟問題がと驚いて、つい聞き返していた。

「カイ殿には気持ちのいい内容ではないが、見せしめを兼ねて宰相が動いた結果、後数日中には終わるそうだ。なにしろ国法を破っているのだ、言い逃れようがない。驚異的な速さで追い詰め、自白させてるそうだ。決着が着き次第、絶縁し養子縁組の用意がされている」

「絶縁は解りますが、なぜ養子縁組が必要なのですか?」

「カイ殿は未だ未成年で、保護者が必要だ。それで、納得してくれないか?」

「閣下、それでは逆効果です。私でも違和感がありますよ」

ライラスが横槍を入れてくるが、同感だと大きく頷いて、抗議する意味で服を引っ張った。
だが、傍からみれば、子供が気を引く為にする行為の様で、可愛いだけだった。

「全て端折って、持って帰りたい…」

「それ、犯罪ですから。間違ってもしないで下さい」

「言われずとも解っている。第一、カイ殿に軽蔑されるだろ」

一頻り悶えて、落ち着いた様に見えるが、見下ろしてくる目が微妙に怖い。

引き攣り気味の笑みを浮かべて、逃げないから腕を緩めるよう頼んだ。
悶えながら、腕がどんどん締まっていたのだが、一応痛みを覚えない程度の加減はされていた。

「申し訳ない、痛みはないか?」

「はい、その点は大丈夫です。緩めて頂いて、ありがとうございます」

「いや、そうではないでしょう?普通なら、苦情の一つでも言いますよ」

人が良過ぎだと、ライラスが苦言を述べて、序でにアレクを責めている。

「悪いのは私だ。何とでも言ってくれ」

「あの、本当に気にしていませんから。話の続きをお願いします」

煙に撒かれそうで、半ば強引に話を戻した。

「カイ殿がそれで構わぬならいいが…、どこまで話をしたかな?」

「養子縁組の理由ですよ。納得がいかなくて抗議した結果、話が逸れたんです」

ライラスが、嫌味混じりの説明をし、アレクは苦り顔になっている。

「もう少し言いようはあるだろう。養子縁組の理由だが、辺境伯及び商家の主人は処罰され、取り潰される。その余波を防ぐのが一つ。又、親族から保護する目的もある。最後に、私の番故に避難場所が必要だからだ」

「……言いたいことは色々ありますが、最後の避難場所とは、どういうことですか?」

言葉を濁した理由が、何となく分かり問い詰める気がなくなる。
だが、付け加えられた内容が意味不明で、納得しようにもできない。
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