76 / 106
第十一話 後編
臼井と犬神のパレード 6
しおりを挟む周囲の時間が止まっていることに気付いた
最初は観覧車が停止したと思っていたが、窓から覗くアトラクションや人が止まっている
この光景はもしかして、と立花桃はゴンドラ内に視線を戻す
思わず体を震わせる
向かい側に鬼塚悟史が座っていた
「…驚かせないでください」
「すみません、立花さん」
鬼塚悟史の表情は厳しそうだった
「急に現れて、何かあったんですか?」
「立花さんに話さなければならないことがあって」
「なんですか?」
「立花さん、状況が変わりました。立花さんは命を狙われています」
「私の命を!?」
「複雑なんですが…立花さんの命を狙っている者と、立花さんに近づく人の命を狙う者がいます」
「私の能力のせい?」」
「立花さんに与えられた疎遠の能力には、他人の命を狙うどころか、危害を加えることは一切ありません。そもそもこの能力は、立花さんの命を守るために危険から遠ざける能力です」
「…私の周りで何が起きてるんですか?」
「以前、立花さんの様子は感じ取ることしか出来ないと言っていたこと、覚えてます?」
「ああ、そう言ってましたね」
「あれ、嘘です」
「はあ?!」
「ずっと見られてるように感じたら、死にたくなるでしょ?」
「そうですね…ただ、死ぬ前に貴方と風宮を殺します」
「ご心配なく、危険を感じた時だけですから」
「…もういいです。で、誰が私を殺そうとしてるんですか?」
「猿渡という男性です。そして、あなたに近づく人の命を狙っている者も、猿渡です」
「私の能力は猿渡を退ける能力があるんでしょ?」
「その状況が変わったので、こうして来ました。実は、立花さんに近付いている人の中に能力者がいます。これは想定外でした。能力者がいると立花さんの能力は低下します。つまり、猿渡が近付きやすくなるんです」
「臼井のことですね…私はどうすれば?」
「臼井誠、その方の能力は厄介です。能力の中では高いレベルの力です。立花さんが能力を与えられた時には、まだ臼井誠に能力はありませんでした。後から与えられ、そして能力者の立花さんに接触しようとしてる。これは風宮に対する挑発です!」
「…あの、そんなに熱くならなくても。風宮神楽と臼井の神は対話できないんですか?」
「できません。ただ、誰が能力者で何の能力を持っているかは分かります。なので、話を戻すと、立花さんの命を守る為に、立花さんの能力のレベルを上げることになりました」
「なんか怖いんですけど…透明人間にされないですよね?」
「大丈夫です。ただ、今までとは状況が変わります。今までは立花さんに深く関わる人がみんな退けられてきました。しかしレベルを上げると、特定の人だけを如何なる方法からも退けることができます。例えば、遠くから狙撃をしようとしたり、地球の反対側からロケットを撃ち込んでも、全て失敗します」
「特定の人になるってことは…」
「はい、今まで深い関係になれなかった人からの接触が可能になります。それほど、特定の人に集中することはパワーを使います。この特定の人は、二人までしか選べません」
「私が選べるんですか?」
「はい、既に危険が迫ってますので今選んでください」
「どうせ半年も無い期限だから、いずれは避けられない危険でしょうけど」
「すみませんが、先のことは答えられません」
「…分かりました。まず、一人目は、猿渡慎吾です。これは当然、命を狙われているから」
「分かりました」
「そして、もう一人は………」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる