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後宮
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「妃たちによる劇の上演などと、変わったことを始めるものだと思っていたけれど。──そんな思惑を隠していたとは」
帝都のリンネ大公邸には、毎日数多くの手紙や招待状が届けられるが、差出人を見た家令がその足で主人に届けるものは限られる。
その数少ない手元の書面から顔を上げ、ハルディスは肩で息をついた。
せっかくミレニオ大使と話をつけたというのに、異母弟に邪魔をされクリスティーナとの面会が叶わないまま、二月半が過ぎていた。新婚だからと一月は大目に見ていたが、業を煮やして皇帝の執務室に乗り込んでも、時期尚早と異母弟は一歩も譲らない。
皇后は妃とは異なり、一生を後宮で過ごす者ではない。それなのに皇帝の私室である外殿に住まわせ、三月も後宮の外に出さないというのは、どう考えても異常である。いつまでもユングリング大公の譲位が聞こえてこず、后狩りの決着が公表されないのもおかしい。
戴冠式まであと三月。気を揉んでいたところに届いたのは、痛快な一報だった。
妃のように閉じ込められ、不満もあるだろうに、クリスティーナは粛々と皇后の務めを果たし、皇帝を支えようと奮闘しているようだ。
「流石ルチア様の御子、面白い皇后が入られたこと。──是非、お会いしなければね」
呼び鈴を鳴らし、現れた侍女に、ハルディスはペンと便箋を用意するように命じた。
帝都のリンネ大公邸には、毎日数多くの手紙や招待状が届けられるが、差出人を見た家令がその足で主人に届けるものは限られる。
その数少ない手元の書面から顔を上げ、ハルディスは肩で息をついた。
せっかくミレニオ大使と話をつけたというのに、異母弟に邪魔をされクリスティーナとの面会が叶わないまま、二月半が過ぎていた。新婚だからと一月は大目に見ていたが、業を煮やして皇帝の執務室に乗り込んでも、時期尚早と異母弟は一歩も譲らない。
皇后は妃とは異なり、一生を後宮で過ごす者ではない。それなのに皇帝の私室である外殿に住まわせ、三月も後宮の外に出さないというのは、どう考えても異常である。いつまでもユングリング大公の譲位が聞こえてこず、后狩りの決着が公表されないのもおかしい。
戴冠式まであと三月。気を揉んでいたところに届いたのは、痛快な一報だった。
妃のように閉じ込められ、不満もあるだろうに、クリスティーナは粛々と皇后の務めを果たし、皇帝を支えようと奮闘しているようだ。
「流石ルチア様の御子、面白い皇后が入られたこと。──是非、お会いしなければね」
呼び鈴を鳴らし、現れた侍女に、ハルディスはペンと便箋を用意するように命じた。
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