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終幕後02 伯爵夫人ブリトニーの流儀
10. 友人の結婚指輪 3
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「ごめんなさい、アーサー。私、やってはいけないことをしたわ」
店を閉めた後、夫に謝罪する。
友人の婚約者に石の交換を申し出たことを最初から全て話した。
「やってはいけないと判っていて、それでもどうしてもやり遂げたかったんだろう? だったら仕方がないと思うな」
そう言って肩を抱かれる。
「ごめんなさい、ありがとう」
ブリトニーはそっと目を閉じた。
アーサーの優しさが妻の全てを包み込む。
* * *
エミリア夫婦の結婚式は素晴らしかった。
派手さは無いが二人らしい厳かな良い式だった。実家はそれぞれ侯爵家と伯爵家だから格式が高い。こればかりは新郎が騎士爵であるからといっても、両家が譲らなかったのだろう。
結婚式から戻った後、ブリトニーは引き出しの奥から一つの箱を取り出す。
友人が家を出るきっかけになった、あの新年会で身に着けた紅玉だった。
大切な友人が大変な思いをしている最中、見せびらかすように戦利品である紅玉を身に着けて自慢したのを後悔していた。
夜会から帰宅した後、ブリトニーは目に入らないように引き出しの一番奥へと隠すようにしまい込んで、そのままにしていた。
とても気に入った紅玉だったが、気持ち的に見るのが駄目だった。
しかし今日、その当事者であるエミリアから「とても素敵だったわ。今度、また見せて欲しいの」と言われて、再び身に着けることに決めたのだ。
友人は優しい夫を得て、とても幸せそうに微笑んでいた。
あんなにも嬉しそうに微笑む友人を見たのは初めてだった。
きっと見た目通りの幸せに包み込まれている。
次の夜会、ブリトニーは数年ぶりとなる紅玉を身に着けた。
「懐かしいね、あの大変な思いをした石だ」
胸元を見ながら、アーサーが目を細める。
「あの日、不幸のどん底にいる友人に気付かず浮かれていたことに、後悔してつけられなかったの」
「不幸は大きな幸せを掴むための試練だった?」
「そうかもしれないわ。できればつらい思いはしてほしくなかったけど」
「そうだね、でもこれからはずっと幸せだよ」
友人の幸せを一緒に祝ってくれたアーサーは、紅玉を手に入れたその日も、今日も変わらず優しい。
いつも横に居てブリトニーを支えている。エミリアの夫もアーサーが妻を支えるように、ずっと横に居て支えてくれることを願う。二度と友人の涙は見たくなかった。
「ありがとう、また頑張って良い石を探すわ」
「それは勘弁してほしいなあ……」
アーサーのぼやく言葉にブリトニーは笑いを禁じ得なかった。
__________________________________
ブリトニー編終了です。
次話からアーヴァイン大司教編になります。
店を閉めた後、夫に謝罪する。
友人の婚約者に石の交換を申し出たことを最初から全て話した。
「やってはいけないと判っていて、それでもどうしてもやり遂げたかったんだろう? だったら仕方がないと思うな」
そう言って肩を抱かれる。
「ごめんなさい、ありがとう」
ブリトニーはそっと目を閉じた。
アーサーの優しさが妻の全てを包み込む。
* * *
エミリア夫婦の結婚式は素晴らしかった。
派手さは無いが二人らしい厳かな良い式だった。実家はそれぞれ侯爵家と伯爵家だから格式が高い。こればかりは新郎が騎士爵であるからといっても、両家が譲らなかったのだろう。
結婚式から戻った後、ブリトニーは引き出しの奥から一つの箱を取り出す。
友人が家を出るきっかけになった、あの新年会で身に着けた紅玉だった。
大切な友人が大変な思いをしている最中、見せびらかすように戦利品である紅玉を身に着けて自慢したのを後悔していた。
夜会から帰宅した後、ブリトニーは目に入らないように引き出しの一番奥へと隠すようにしまい込んで、そのままにしていた。
とても気に入った紅玉だったが、気持ち的に見るのが駄目だった。
しかし今日、その当事者であるエミリアから「とても素敵だったわ。今度、また見せて欲しいの」と言われて、再び身に着けることに決めたのだ。
友人は優しい夫を得て、とても幸せそうに微笑んでいた。
あんなにも嬉しそうに微笑む友人を見たのは初めてだった。
きっと見た目通りの幸せに包み込まれている。
次の夜会、ブリトニーは数年ぶりとなる紅玉を身に着けた。
「懐かしいね、あの大変な思いをした石だ」
胸元を見ながら、アーサーが目を細める。
「あの日、不幸のどん底にいる友人に気付かず浮かれていたことに、後悔してつけられなかったの」
「不幸は大きな幸せを掴むための試練だった?」
「そうかもしれないわ。できればつらい思いはしてほしくなかったけど」
「そうだね、でもこれからはずっと幸せだよ」
友人の幸せを一緒に祝ってくれたアーサーは、紅玉を手に入れたその日も、今日も変わらず優しい。
いつも横に居てブリトニーを支えている。エミリアの夫もアーサーが妻を支えるように、ずっと横に居て支えてくれることを願う。二度と友人の涙は見たくなかった。
「ありがとう、また頑張って良い石を探すわ」
「それは勘弁してほしいなあ……」
アーサーのぼやく言葉にブリトニーは笑いを禁じ得なかった。
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ブリトニー編終了です。
次話からアーヴァイン大司教編になります。
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