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1章 訣別
24-2. 最後の戦い
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『白旗が上がっています――』
元は四の塔があった付近で煙が上がった。偵察に向かったところ、白旗を振る兵士がいたというのだ。
『撤退したいが、糧食やポーションが尽き撤退もできない状況との事』
敵の将兵の言葉をそのまま伝える騎士の言葉は、悲惨の一言でしかない。
大きな怪我を負っている様子はないものの、半月以上も森の中を行動したものだから薄汚れ疲弊しきっている。現地調達しようとしても、まだ木が芽吹くには早く、熊が冬眠中だから多少は安全なものの、夜は狼の遠吠えに怯え熟睡できない。たまにウサギや鹿を狩るものの、全員の腹を満たす程でもなく、食事量を三分の一や4分の一まで減らしながらやりくりしていたのも昨日で全て尽きたのだと伝えてきた。
撤退しようとして方向を見失い、森を彷徨った挙句、再び塔の近くに辿り着いたらしい。
『降伏する、安全の保障と食事を――』
辺境側は捕虜を取る利がない。中央に帰すにしても、一旦、辺境に連れてきてからでは手間がかかり過ぎる。
勝手に攻めてきて、それなりの待遇をしろというのはどうなのか……。
「傷の手当をした後、森を抜けるギリギリの食料を与えて追い返すのは駄目かしら? 城壁の構造だとか森の広さだとか次の戦闘に使えそうな情報を与えたくない」
第二城壁は中央側だけど、高さが木とほぼ同じかやや低いくらいだから、中央側から見て発見し辛い。城壁が二重なのも知られたくなかった。
『森に秘せられたものを見せる必要はありませんよ』
司令官の言葉に、自分は間違ったことを言っていなかったのだと安心する。
正直なところ食料だって渡したくない。自業自得なのにという気持ちが強くて。国王陛下が出兵すると宣言すれば、嫌だと拒否するのが無理なことくらい理解している。でも頭ではわかっていても感情がついてこないのだ。中央人の辺境に対する扱いの酷さも相まって。
『中央の状況を知るためにも、食料を渡して会話をするのも悪くないでしょう』
司令官の言う通り、向こうの情報はまったく入ってこない。逆も然りだけど。
私たちが直接知っているのは王都の屋敷を引き払うまで。ジョルジュ……今はジャックと名を改め、ただの村人として働いている元婚約者と、お兄様の元婚約者カミラからその後の話を聞いたけど、それでさえ既に最新情報ではなくなっている。
少し間を置いて、食料を五日分と最短で森を抜けられるように教えたと連絡がきた。森を抜けるギリギリの量だ。水は魔法でどうにかなるから渡さなかったらしい。
「その食料で命を繋いで、また仕掛けてくる可能性は?」
『なくはないでしょうが、低いでしょう。もう士気がこれいじょうないほど下がっています。もし再び森に入れと言われたら暴動になりますよ、あれは』
そういうことであれば、無駄に人死にを出さないで良かったと思うべきだろう。
上空から監視……とはいえ木に隠れて碌に見えないらしいけど、その限りでは普通に森の外に向かっているらしい。
そして森の外で国王軍内での諍いが発生した。火の手が上がり煙は城壁からも確認できた。
混乱は三日ほど続き、相当数の死傷者を出したようだ。辺境との戦いというには一方的な蹂躙だったけど、それ以上に被害を出したのが自軍内の騒乱の結果というのは皮肉な話だった。
元は四の塔があった付近で煙が上がった。偵察に向かったところ、白旗を振る兵士がいたというのだ。
『撤退したいが、糧食やポーションが尽き撤退もできない状況との事』
敵の将兵の言葉をそのまま伝える騎士の言葉は、悲惨の一言でしかない。
大きな怪我を負っている様子はないものの、半月以上も森の中を行動したものだから薄汚れ疲弊しきっている。現地調達しようとしても、まだ木が芽吹くには早く、熊が冬眠中だから多少は安全なものの、夜は狼の遠吠えに怯え熟睡できない。たまにウサギや鹿を狩るものの、全員の腹を満たす程でもなく、食事量を三分の一や4分の一まで減らしながらやりくりしていたのも昨日で全て尽きたのだと伝えてきた。
撤退しようとして方向を見失い、森を彷徨った挙句、再び塔の近くに辿り着いたらしい。
『降伏する、安全の保障と食事を――』
辺境側は捕虜を取る利がない。中央に帰すにしても、一旦、辺境に連れてきてからでは手間がかかり過ぎる。
勝手に攻めてきて、それなりの待遇をしろというのはどうなのか……。
「傷の手当をした後、森を抜けるギリギリの食料を与えて追い返すのは駄目かしら? 城壁の構造だとか森の広さだとか次の戦闘に使えそうな情報を与えたくない」
第二城壁は中央側だけど、高さが木とほぼ同じかやや低いくらいだから、中央側から見て発見し辛い。城壁が二重なのも知られたくなかった。
『森に秘せられたものを見せる必要はありませんよ』
司令官の言葉に、自分は間違ったことを言っていなかったのだと安心する。
正直なところ食料だって渡したくない。自業自得なのにという気持ちが強くて。国王陛下が出兵すると宣言すれば、嫌だと拒否するのが無理なことくらい理解している。でも頭ではわかっていても感情がついてこないのだ。中央人の辺境に対する扱いの酷さも相まって。
『中央の状況を知るためにも、食料を渡して会話をするのも悪くないでしょう』
司令官の言う通り、向こうの情報はまったく入ってこない。逆も然りだけど。
私たちが直接知っているのは王都の屋敷を引き払うまで。ジョルジュ……今はジャックと名を改め、ただの村人として働いている元婚約者と、お兄様の元婚約者カミラからその後の話を聞いたけど、それでさえ既に最新情報ではなくなっている。
少し間を置いて、食料を五日分と最短で森を抜けられるように教えたと連絡がきた。森を抜けるギリギリの量だ。水は魔法でどうにかなるから渡さなかったらしい。
「その食料で命を繋いで、また仕掛けてくる可能性は?」
『なくはないでしょうが、低いでしょう。もう士気がこれいじょうないほど下がっています。もし再び森に入れと言われたら暴動になりますよ、あれは』
そういうことであれば、無駄に人死にを出さないで良かったと思うべきだろう。
上空から監視……とはいえ木に隠れて碌に見えないらしいけど、その限りでは普通に森の外に向かっているらしい。
そして森の外で国王軍内での諍いが発生した。火の手が上がり煙は城壁からも確認できた。
混乱は三日ほど続き、相当数の死傷者を出したようだ。辺境との戦いというには一方的な蹂躙だったけど、それ以上に被害を出したのが自軍内の騒乱の結果というのは皮肉な話だった。
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