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1章 訣別

13-2. カミラの行く末

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カミラ視点が続きます
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 私は憂鬱な気持ちで王都を発ったけれど、まさかもっと最低な気持ちになるなんて思ってもみなかった。
 南に行く馬車の中は誰もが無言で、まるで刑場に向かう罪人の気持ちだった。

 そして……感傷に耽るだけのうんざりするような長い時間が、とてもマシな状況だとは知らなかった。
 ランヴォヴィル侯爵家とオリオール伯爵家の境界にある森が南の辺境の入口だ。遠くで魔獣の鳴き声が聞こえる深い森。でもかつては道の見通しが良く、領兵の詰め所があって道中の護衛を買って出てくれていたから怖くなかった。

 でも数年ぶりの森は詰め所がなくなり、当然護衛もありはしない。茂った木々が道の上に濃い影をつくり陰鬱で、何より道の凹凸が酷かった。

 馬車の揺れが激しすぎて、座ったまま転ばないように気を付けるのに必死になる。
「何なんだ、一体!」
 王太子殿下が吐き捨てるように悪態をつく。

 王都の整備された道や、避暑地に向かう街道よりは揺れが大きいものの、比較的人の手が入った街道しか知らない身であれば、こんな獣道みたいに荒れた道に怒りを覚えても仕方がない。
 ちらりと視界に入ったジョルジュの様子を確認したら、私と同じく座席から落ちないように一生懸命な様子だった。

「もっと速度を落とせ!」
 馬車の中から怒鳴るように御者に告げる。うるさすぎて声を張らないと聞こえない。貴族的ではないとか下品だとか言ってられないのだ。

「無理ですよ! 早めに抜けないと何があるかわかりませんからね!」
 東の稜線が明るくなるころに入ったから、日の入りまでに森を抜けるのは余裕だと思う。でも昼間だからといって安心できないほど森は危険で、今までにないほど緊張感を強いられている。

「――くっ!」
 苛立ちに顔を歪める殿下の姿は、今まで見たことがなかった。いつだって王族らしい隙の無さだったから。

 森に入って既にずいぶん時間が経っている。もう少し我慢をしたら抜けきる筈だ。そうしたら大休止をとって、ゆっくりしても領主館に到着できる。晩餐の支度に間に合うくらいの時間になるだろう。

 私の見込みは、しかし甘いものだった。
 辺りが暗くなるよりほんの少しだけ前に、ようやく森を抜けたのだった。

 ――まさかまた野宿をするなんて。
 貴族令嬢の旅程とは程遠い。

 なんてこと、と内心では思っていても王太子殿下がいらっしゃるから口には出せない。計画を立てたのが殿下だから不敬になってしまう。
 ぐったりとしながら、でも貴族らしく体面を取り繕いながらイレネー様たちとの面会に挑んだ。

 ――今更だったわ。
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