辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良

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1章 訣別

05-1. 兄

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 文字が同じだから言葉が一緒とは限らないと知ったのは、隣国のキエザ辺境伯領と交流を持ってからだった。言い回しだとか文法が微妙に違う。単語なども微妙に変化していたりする。

 スタンピード以前と以後で言葉が変わってしまったのは、多くの人が死に国土の八割までもが魔獣に蹂躙したせいだ。人の往来が絶えたせいで、独自の文化が発達したのだろうと思う。

 魔素の森に覆われた国土を少しずつ再開拓して居住可能地域を増やし人口も増えた。だけど二百年以上経った今でも元の国土より三割くらい少ないし、人口は半分にも満たない。

 人とともに知識は失われ、言い回しの多い湾曲表現は影を潜め、より直接的な言葉遣いに変わっていった。
 結果、スタンピード以前の言葉を古語として、理解するために学ぶ必要が生まれた。

 我が家は聖女として必要なことは言葉で代々伝わっているほかに、歴代聖女が覚書として自分用のまとめノートを作り、それを娘に渡していっているから、特に困ってはいないが、それ以外の古語の書物を目にしたことはない。

「まさか古語で書かれた叙事詩を読む日がくるとは思わなかったわ」
「でも面白いでしょう?」
 ルイーゼはニコニコとしながらお薦めの本を手に持つ。

 昨日は算術の勉強がいかに役に立つかという実践のために帳簿のつけ方を教わった。その前は建築技術の強度の話。
 学院の卒業までに学ぶ内容は半年足らずで終了した。集団授業と個別授業の違いを考慮しても、習熟度が格段に良い。
 今は応用として授業以上に深く踏み込んだ授業ばかりだ。

 ルイーゼの教え方はとても上手くて面白い。今まで難解だと思っていたのが嘘みたい。
 私たちは教師と生徒というだけでなく、友人としても仲良くなった。一緒にお茶を楽しみ、一緒にワイバーンで空を駆けるだけではなく、結界の見回りや魔獣退治まで一緒だ。

 彼女は私と同じ魔法だけで魔獣に立ち向かう魔法士だから、攻撃方法などを話し合って、より効率的な仕留め方などを研究する仲間でもある。

「ルイーゼ、勉強は終わってしまったけど、できればこのまま家にいて欲しいわ。お兄様の奥さんがルイーゼになればいいのにって思うくらい大好きよ」
 そう言えばポンと音が聞こえそうなほどの勢いで顔が赤くなった。
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