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エスト公国にて
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しおりを挟む………今の私の気分は、最悪最低、超絶奈落の底である。
昨日、殿下に呪印の件がバレたと言うのもあるが、何よりもその後、呪印を見ようとする殿下に無理やり服を剥ぎ取られたのだ。下着見られた。死にたい。前世と合わせても、異性に下着姿を見られる事などなかったのに……何が嬉しくて、殿下に見られなくてはいけないのだろうか。死にたい。せめて、好きな人に見られたかった。死にたい。何そのラッキースケベ的な展開。いらないよ。ラッキーじゃないよ。アンラッキーそのものだよ。こう見えても純情なんだよ!!
「馬鹿ルーナ、なにその死んだような顔に、生気のない目は。朝からそんな顔見せられる僕の身にもなってよ」
「…………」
お前の事なんて知らねえよ!私の事だけで精一杯なんだ!!
まったく、昨日はえんえんと子供のように泣きじゃくっていたというのに、一晩開ければこのざま。アネルさんや、もう少し、優しさというものをね………うん、君は私のことをもう少しは考えてみてくれ。ください。
「はぁ!?無視するの!?ねぇ、聞いてる!?ルーナ」
「……聞いてる、聞いてる。はぁ、でも、私のこの死んだ目は、別に今に始まったことではないじゃん」
自分で言うのも、なんだがこの旅が始まってからそこそこ目が死んでることが多い気がする。いや、もしかしたら始まる前から死んでいたかもしれない。そして、死亡フラグもビンビン。あはははは
「そんなの知ってる!」
いや、ならなおさら、何故今になって一々目が死んでるの云々を言うんだ。
「だから、僕が言いたいのは、お前の目がいつも以上に生気がなくて、元気がなさそうだったから、その、何かあったたんじゃないかと思ったんだよ!察しろよ!」
え、何それ、どゆこと?
「………あ、いや、別にお前の事を心配してるとか、偶には僕の事を頼ってくれてもいいとか、そんなんじゃないんだからな!全然違うんだからな!!お前のためじゃなくて、僕のために聞いてるんだからな!」
なんで、アネルのためになるんだよ。素直になればいいものを。そして、何その典型的なテンプレとも言えるツンデレのセリフ。なんていうか可愛いな!!
うん、でも、そうかぁ、心配してくれたのかぁ、頼って欲しいのかぁ
「勘違いするなよ。馬鹿ルーナ!!」
「あぁ、うん。」
長年の経験からして、ここで刺激すると逆上しそうなので、やめておくが…….なんて言うかアネルのセリフは本当に可愛いなぁ。バカわいい。
この、宝玉を探す旅を始めて、嫌なことは、もちろん山のようにあった。だけど、なんと言うか、旅をしたおかげで気づけたこともあったからよかったなと思う。ゲームとは違い、アネルに、完全に嫌われている、好かれていないと思ったけれど、そうじゃないんだなぁと、何となく思うことができた。まぁ、好かれているかどうかは微妙だが、ちゃんとこうして心配してくれたり、昨日みたいに、お母さんにあった後に、頼ってくれたりしてくれるってことは、ある程度信頼はされてて、嫌われてはないってことなのだろう。嬉しいな。
「……何その顔、ムカつくんだけど。」
「え、いや、あははは。」
いけない、いけない。うっかり顔がにやけてしまった。
「まぁ、その、兎に角。ありがとね。アネル、心配してくれて」
「だから!心配なんてしてないって言ってるだろ!」
「あぁ、うん。そうだった、そうだったね」
ごめん、ごめん、不機嫌になるアネルをなだめれば、納得してないと言った顔でそっぽを向いてしまう彼。うーん、可愛いなぁ。本当に可愛い。
なんか、もう昨日のこととかどうでもよくなってきたなぁ。さっきまで、恥ずか死にたい出来事だったが、どうでもよくなってきたなぁ。よし、そうだ、なかった事にしよう。忘れよう!!それが一番だ!あはははは
「………で、馬鹿ルーナ。お前、なんかあったの?」
「ん?いやぁ、何にもなかったよ。うん、何にもね」
そう、昨日、殿下とは何にもなかった。そう言うことにしておこう
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