ヒロインは他に任せて

オウラ

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エスト公国にて

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「無理!流石の俺でも、それは無理!」
「何の為の性職者なんですか……」

 あれから、ルイにセシルちゃんとディルクをどうにかくっつける事か出来ないかと相談してみれば、上記のような答えが返ってきた。

「いや、俺の職種関係ないよね?確かに、俺の職域は婚姻に関連する事もやってるけれどさ。それとこれとは別だよ。だいたい、あの2人が両片想いなのは今に始まった事じゃないし。昔からあぁなんだよ。一応、俺だって、2人をくっつけようと、何度けしかけたことがあるけど、見事ぜーんぶ、失敗したし」
「あーーー」

 話を聞いてなんとなくだが、想像がつく。ルイが、セシルちゃんを口説いて、それを軽くあしらうセシルちゃん。そして、そんな2人をヤキモキしながら、ただただ見ているだけのディルク。
 彼らと会って間もないと言うのに、なぜかそんな光景が簡単に思い浮かぶよ。


「……でも、いきなりなんで?2人をくっつけようと思ったの?ルーナちゃん」
「え?」

 不思議そうに聞いてくるルイに悪気はないのだろうか、それはなんとも困る質問だ。
 何故かと聞かれたら答えは、私の生存確率を高める為だ!の一択だけど、ぶっちゃけそれは通じない。言ったら絶対病院を紹介されるよ。しかも精神科。



「いや、だってさ。確かルーナちゃんって、あんまり好きじゃないよね。そう言うこと」
「はい?」

 そう言うことってどう言うことだよ

「いや、なんて言うのか、男女が付き合ったりするのが好きじゃないのかなって……ほら、前にいちゃつく男女がムカつくとか言ってたよね?」

 ……言ってたか?そんな事。いや、言ってたかもしれない。確かにムカつくし、いちゃつく男女は。っけ、滅びろよとは思うし

「それに、ルーナちゃん自身そう言ったことに興味がなさそうと言うか…なんと言うか。この俺がいつも口説いてるのに、一向に落ちないし」
「それはルイ殿の事が好きじゃないだけ……」

 あと、そのイケメンのみが許される発言をサラッとできるのが憎い。滅びればいいのに。

「…相変わらず、さらっと酷い」
「あー、でも、まぁ、どちらと言うと確かに、嫌いというか、興味がないですが。」
「そして、無視する。俺、つらたんだよ?………あ、いや、ごめん、そんな目で見ないで」

 おっと、うっかりルイを冷めた目でしてしまったようだ。いけない、いけない。



「と、話が逸れたけど。それで?理由はなんなの?2人をくっつけようとした、理由。」
「あー、それは」

 なんで、そんなに気になるんだと一瞬思ったが、この人はこう言う人だった。まぁ、無難な事を答えておくか。

「……旅を通じて、セシルちゃんの事の良いところをたくさん知って、彼女の事が好きになったからですかね。」
「はっ!まさか、ルーナちゃん。そっちのけが!だから、俺が口説いても」
「……違いますよ。馬鹿なことを言わないでください。……まぁ、兎に角、そのセシルちゃん見たいな良い子には幸せになって欲しいなぁと思って……だから、好きな人と結ばれれば良いのになぁ、せめてこの旅の間だけでも……と思っただけです。」

 まぁ、うん、変な話ではないよな。それに多少は本心も入ってるし……


「ふーん。確かに俺たちが好きな相手と結ばれるのって難しいからね。」

 平民同士ならいざ知らず、貴族というものが、恋愛結婚をするのは難しいと聞く。現に、ゲーム本編クリア後の話を描いたファンディスクでは、その事を大いに取り上げていたキャラもいた。
 そんな経験したこともなければ、今後する事もない私にとっては、全くよくわからない世界だが……2人が見事結婚する!と言う話がトントン拍子に進むのは難しいのだろ。いや、是が非でもさせるけどさ。私の将来のために





「ふーん、仲間もいだね。…………あ!ねぇ、じゃあ俺は?俺に対してはどんなこと思ってる?」
「え、ルイ殿ですか?ルイ殿は、まぁ、作りすぎた恋人や現地妻に刺されないようにして下さい。」
「……俺の好感度の低さが異常」

 いや、妥当だと思いますよ。














 ふと、気がつけば、夜も更け、ふわぁとあくびが出始める。腕の中のポチが吐息を立て、すっか
 り夢の中だし、私もそろそろ寝ようかな。と思い席を立とうとしたその時だった。


「あぁ、そうだ。思い出した。」


 何かを思い出したルイがにこりと、笑いながら私の目の前に立ちはだかった。

「……なんですか?」
「なんですか、じゃないよ。この前約束したよね?」

 そう言って、ルイがポンポンっと私の右肩を叩いて、あっ!と思い出す。

 1つ目の宝玉を見つけた後に、三馬鹿にかけられた呪い。肩から広がりつつある死の印。そのことを、他のメンバーに秘密にしておく代わりに、定期的にルイにどのくらい印が広がっているかを教えなくてはいけないのだった。
 あれから、特に何もなかったから、忘れてた。


「ルーナちゃんが何も言いださないから、俺、すっかり忘れてたよ。」

 ……そのまま忘れてれば、よかったのに。忘れろ!!

「と言うわけで、見せて」
「え、ここで?」

 あれだぞ?今ここにみんな居ないと言えども、ここはいつ誰が来てもおかしくない談話室。誰か来たら困るじゃないか


「パッと見せれば問題ないよ。はい、見せて」


 さぁ、と催促するルイ。確かにこのまま渋って居ても、良いことはないか。いつ誰が来るかわからないのなら、さっさと見せてしまったほうがいい。とりあえず、恥だなんだは捨てるとしよう。
 右肩だけを出し、包帯を取れば呪いの印が見えて来る。


「前よりも、ちょっと印が大きくなってるね。」
「そうですか?」

 あんまり、見たくないため無視していた為、把握していなかった。確かに見てみれば、印が身体を覆う範囲が広がっている。これが、全身に広がれば、死ぬのか……もう、生きるのあきらめた方がいいのかな。…いやいや、そんな悲観的になるな!私!!きっと希望はまだあるはず、多分、きっと



「…痛くは無い?」

 そう言って、そっと肩に触れるルイ。
 なんとなくだが、その、距離が近くないだろうか。ふと横を見れば、目の鼻の先にある綺麗な顔。あー、なんかドキドキする。いや、ルイ殿って所がマイナスポイントなんだけど、それでも、こう綺麗な顔があると、やっぱりなんか、ドキドキするんだよ!!

「あれ?どうしたの?ルーナちゃん、顔が赤いよ」
「い、いや、別に。気のせいですよ」

 プイッと顔をそらして見たが、よくよく考えれば逆効果

「何?もしかして、ドキドキしてるの?嬉しいなぁ。可愛い」

 何故か更に顔を近づけくるルイ。ええーい、やめろ!近づくな。だいたい、こんな姿誰かに見られたら誤解どころではないから!とりあえず、やばいから!お願いなので、誰も来ない……で

「……2人とも何してるんだい?」

 あれか? 願ったのがやばかったのか、フラグを踏んでしまったのか、これは、最悪の展開だ。誰かに見られた。
 ぞっと寒気がして、声のする方へ振り返ればそこに居たのは、殿下。冷ややかに笑うその表情は、魔王そのもの。

「で、でんか……」
「あれ?アーサー?どうしたの?何か用?」

 なんで、ルイはそんなにあっけらかんとしてるんだ!やばいだろ、この状況は!!


「どうしたの?じゃないだろ?ルイ。何をしてるんだと俺が聞いているんだよ。」
「何って見ての通りだよ」

 見ての通りだよ。じゃないよ!!だらだらと流れる冷や汗。もしかして私は今日死ぬのかもしれない。
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