ヒロインは他に任せて

オウラ

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エスト公国にて

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 ……………………………………………なんだこれ。

「おい!馬鹿ルーナ!どうせお前のことだから1人で、街をぶらつくんだろ。仕方ないから、僕が一緒にいてやっても良いぞ。」
「え、ルーナちゃん1人で行動するの?ねぇ、ねぇ、だったら、俺と一緒に、街を回らない?親睦を深めようよ」
「いや、ルーナ。君と2人きりで話したい事があるんだ。俺に付き合ってくれるよな?」


 ………本当に、なんだこれ。
 まさか、これが噂に聞くモテ期とやらだろうか。いやいや、それはないだろう。1人は、完全に好きな相手に対する態度じゃないし、1人は一種の気まぐれ、もしくは気の迷いだろうし、残りの1人に至っては、わたしを殺しかけてるのだから。あー、なんか頭痛くなる。


 エスト公国についてから数時間が経った。
 ディルクは叔父である大公様へご挨拶、そして我らがセシルちゃんは付添人としてディルクと共に、大公様が暮らす御殿へと行ってしまった。本来なら、旅の仲間全員で、もしくは殿下と共に、挨拶に行くべきなのだが、現段階ではアポなしという大変迷惑きわまりない状況であるため、迷惑にならない程度の人数である、あの2人が、大公様にひとまず挨拶をしに行くこととなったのだ。
 そして、街に残されたメンバーは、数時間はやることもなく時間をもてあましているため、観光でもしようということになったのだが……本当になんだこれ。


 待ち合わせの時間になるまで各自自由行動と言われたので、言わずもがな、1人寂しく観光を楽しむか(泣)と思っていたところに、ああして、やってきたお誘い。本来なら泣いて飛びつくが、いかせんあんまり嬉しくない。下手に好感度を上げたくもないし、ぶっちゃけ一緒にもいたくない。

「いや、あの。私……1人で行動したいんですけど」

「僕が一緒に居てやるって言ってるのに。何それ。ルーナ、酷くない?」

 酷くない。むしろお前のその言い方の方が酷い。

「えー、俺、ルーナちゃんと一緒に居たいのになぁ」

 いやいや、私は一緒に行動したくないんで

「君がそういうのなら仕方ないが……残念だな。折角2人きりになれると思っていたのに。恋人として、君と過ごせる時間は下手をしたらこの旅の間だけだというのにね。」


 あー、そう言えば恋人同士だっていうそんな設定がありましたね。はい、今思い出しました。というかさ、なんで皆して私を誘うんだ。何かの罰ゲーム?良くないよ、そういうのは。









「あぁ、そうそう。思い出した。その事なんだけどさアーサー。……確か、2人が恋人同士なのって、アーサーがルーナちゃんを見初めたからなんだよね?」
「そうだが?何か問題でもあるか?ルイ」
「あるに決まってるじゃん。だって、そこにルーナちゃんの意思はない訳だろ?」

 無いっすねー。全く無いっすねー。というか、今更ながは、一体どうしたんだルイは……お前、私と殿下が付き合ってない事を普通に知ってるだろ。

「………お前は、何がいいたいんだ?ルイ」
「うん、だからさぁ。仮に、俺がルーナちゃんの事が好きだ。落としたいと思っても問題ないよね?だって、アーサーは片思い。そして、半強制的にルーナちゃんと付き合ってる訳だからさ」

 ニコリと挑発的に笑いならが、殿下を見つめるルイ。………お前、何言ってるんだ、冗談は程々にしてくれよと思いながら、奴の顔を見れば、グイッと何故かそのままルイに寄って体を引き寄せられる。相変わらず、顔が近い。離れろ。

「ねぇ、君もそう思うよね?ルーナちゃん」
「はぁ……何言って「ちょっ!!馬鹿な事を言わないでください!!!!!」


 何言ってるんですか……そんな呆れた言葉をルイにかけようとしたのに、アネルのそんな声にそれは叶う事なかった。……てか、いきなりどうしたんだ、アネル。そんなに顔を真っ赤にさせて、なんで、そんなにワナワナと怒った顔でこっちを見てるんだよ。



「だいたい、殿下もヨハイネル様も、いい加減にしてくださいよ。そんなちんちくりんの何処がいいんですか!馬鹿で、間抜けで、考えなしに行動する!そんな奴の!」

 ビシッと私に向かって指をさしながら、手当たり次第に私を罵倒するアネル。
 お、お前確かにそうだけど、言いすぎじゃね?なに?いじめ?

 戸惑って、チラッと隣に立つルイを見ればあちゃーと言った顔をしてるし、目の前の殿下を見れば、これまたあー、やっちまったなぁ的な顔をしている。2人とも、なんなんですかねぇ、その顔は




「あー、アネルくんの前で言うのはちょっと配慮に欠けていたかなぁ。まぁ、遅かれ早かれこうなってたんだろうけどさぁ。」

 はい?それってどういう意味?どういう事ですかね、ルイさんよ

「取り敢えず、今回はアネルくんに譲るとするか。アーサーもそれでいいよね」
「はぁ、ダメなどと言える訳ないだろ。元はと言えば俺に非があるからな」

 いや、だから一体どういう事なんだよ!!

「まぁ、そういうわけで、2人で行動してくれ。ルーナ、後は頼んだぞ」


 じゃあな!と言い残して、殿下とルイは逃げるようにこの場から去って言った。え、二人して酷くない?この状況で私とアネルを残すか?普通

チラリと、アネルをみれば

「なに?」

 となんとも言えない表情で睨み付けられる。うわぁ、いつになく機嫌の悪い表情だ。

「え、いやぁ。と、取り敢えず観光しない?}


 苦し紛れにそんな事を言えば、機嫌の悪そうな顔ながらもアネルは浅く頷いた。
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