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国王陛下の嫁探し
信じてくれ、聖下
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先程のルーカスの想い人(仮)、もといリリアンヌ・ドロイア、通称リリィはドロイア侯爵家の長女であり、なんとルーカスの元婚約者らしい。だが、遠の昔に婚約は破棄され、ここ数年顔を合わせる事もなかったらしい。故に、今ではほぼ他人、以前話したルーカスの想い人は、彼女でもなんでもない、ただの知り合い。だから、勝手に勘違い、誤解しないでほしい。と言うのが、ルーカスの言い分だった。いや、そんな事を突然言われても
「誤解しないでくれ、聖下。違うんだ」
誤解しないでくれと言われても、その焦りようだとそうとしか思えなくなるのもまた事実。どう見ても、好きな人がバレてしまい恥ずかしい故に、言い訳をしている思春期の青年にしか見えない。……もう、とっくに思春期なんて、終わってますよね、貴方。
それに、思っているような相手じゃないって……私別に、彼女の事をどうのこうの言った覚えはないんだけど……いや、言ったわ。仲睦まじそうって、言ったな。ごめん、忘れてた。
「……そうですよね。でも、後宮に自ら赴くのではなく、自分の側に置き"あーん"なんて、する仲を誤解しないでくれと言われましても」
無理な事。さっさと認めて楽になれ。……うぐ、考えるだけで、胸が苦しくなってきた
「 違う、違う。あれは彼奴、リリィが勝手にやった事なんだ。俺はハッキリ言って困っていたし…」
あんなに可愛い子にアーンとされて困る野郎なんているのだろうか。内心嬉しかったんだろ?そうだろ?だいたい、リリィなんて、愛称で呼んでる時点で……2人の関係者が、丸わかりだよ。
「リリィの事は好きじゃない。信じてくれ、聖下」
なのに、なんでこんなに否定するのやら。そんなに、私に想い人がバレるのが嫌なのか。
「だったら、陛下の想い人は誰ですか?」
「え……、いや、それは。」
何をもったいぶっているのか。信じてくれって言うなら教えてくれてもいいじゃないか。言えないって事は、やっぱりそうなんじゃないか。バカ……
「ユーリ宰相は知ってるのに、なんで、私には教えたくないの?私は、ルーカスの為なら、ちゃんと協力するよ。」
「え……聖下?」
「もしかして、私、頼りない?信頼できない?……それとも嫌いなの?」
ついつい出てしまう本心。あぁ、聖下としての威厳が丸つぶれだ。言葉遣いも、声色も、てんでダメ。全部丸つぶれ。今にも泣きそう。じわっと視界が涙で揺らぐ。ベールがあるから、相手には見えないけど、でも、きっと泣いているのは、わかってしまうだろう。なんてことだ、今まで気付き上げて来たものが、こうも簡単に崩れ落ちるなんて
諦めたと思ってたのに。いや、仮に諦めきれなくても、こんな風に見っともなく泣くなんて、なんて私は馬鹿なんだろうか。
このままここにいたら、色々とやばい。もう遅いかもだけど、聖下としても、そうだけど、私、一個人としてもこうして泣きべそをかいてここにいるのはやばい。
「………申し訳、ございません陛下。今日は、ここら辺で…….失礼しますね。また後日、お伺いいたします。」
すぐにでもここを、この部屋を去ろう………今日の事はなかった事にしてしまおうと思い、ドアの方へと振り返ったその瞬間、腕を掴まれ、ぐいっと後ろに引っ張られた。
「っ!!」
バランスを崩し、そのまま後ろに倒れてしまう………と思ったのもつかの間、気がつけばルーカスに抱きしめられた状態。背中に手が回され、密着する身体と身体。高まる心臓の音、一気に赤くなる顔……果たして何が起きたのか、一切理解できなかった。……え、何この状況。
「馬鹿なことを言わないでくれ。信じてないわけがない。嫌いなわけがない。君がいたから、俺は今ここにいるんだ。俺は君を何よりも信じている。」
ぎゅっと力を込められ抱きしめられる。
「へ、へいか?」
見上げれば、キラキラと光るルーカスの翡翠色の瞳。その瞳には、私が写っていて……それで
「聖下、そんなに俺の好きな人が知りたいなら教えてあげるよ。まだ、その時じゃないけれど、俺はね……俺の好きな人は」
陛下の口から紡がれそうになる、彼の好きな人。聞きたいような、聞きたくないような。いや、諦めるって決めたんだ。それに、陛下が、私を信頼してくれて教えてくれるんだ。ちゃんと聞いて、ちゃんと向かい合おう。そして、形は違えど、ずっと、ずっと陛下の隣に立っていられるように……
「俺の好きな人はね……」
「陛下!!こちらの政策のことですが!!!………あ」
バーンっと言った効果音と共に、部屋に入ってきたやってきたユーリ宰相。………なんて言うか、なんて言うか、台無しだ。
慌てて、ユーリ宰相は、部屋を出て言ってしまったが、なんとも言えないこの状況。思わず、陛下と顔を見合わせる
「えっと、陛下?その……」
「あ、いや、やっぱ無し!!無しで!!」
さっきまで、話すって言ったのに!
「え……」
「いや、ちゃんと今度話すから!な?」
「いや、陛下!?教えてくれるんじゃ……」
う、嘘つき!!陛下の嘘つき!!
「誤解しないでくれ、聖下。違うんだ」
誤解しないでくれと言われても、その焦りようだとそうとしか思えなくなるのもまた事実。どう見ても、好きな人がバレてしまい恥ずかしい故に、言い訳をしている思春期の青年にしか見えない。……もう、とっくに思春期なんて、終わってますよね、貴方。
それに、思っているような相手じゃないって……私別に、彼女の事をどうのこうの言った覚えはないんだけど……いや、言ったわ。仲睦まじそうって、言ったな。ごめん、忘れてた。
「……そうですよね。でも、後宮に自ら赴くのではなく、自分の側に置き"あーん"なんて、する仲を誤解しないでくれと言われましても」
無理な事。さっさと認めて楽になれ。……うぐ、考えるだけで、胸が苦しくなってきた
「 違う、違う。あれは彼奴、リリィが勝手にやった事なんだ。俺はハッキリ言って困っていたし…」
あんなに可愛い子にアーンとされて困る野郎なんているのだろうか。内心嬉しかったんだろ?そうだろ?だいたい、リリィなんて、愛称で呼んでる時点で……2人の関係者が、丸わかりだよ。
「リリィの事は好きじゃない。信じてくれ、聖下」
なのに、なんでこんなに否定するのやら。そんなに、私に想い人がバレるのが嫌なのか。
「だったら、陛下の想い人は誰ですか?」
「え……、いや、それは。」
何をもったいぶっているのか。信じてくれって言うなら教えてくれてもいいじゃないか。言えないって事は、やっぱりそうなんじゃないか。バカ……
「ユーリ宰相は知ってるのに、なんで、私には教えたくないの?私は、ルーカスの為なら、ちゃんと協力するよ。」
「え……聖下?」
「もしかして、私、頼りない?信頼できない?……それとも嫌いなの?」
ついつい出てしまう本心。あぁ、聖下としての威厳が丸つぶれだ。言葉遣いも、声色も、てんでダメ。全部丸つぶれ。今にも泣きそう。じわっと視界が涙で揺らぐ。ベールがあるから、相手には見えないけど、でも、きっと泣いているのは、わかってしまうだろう。なんてことだ、今まで気付き上げて来たものが、こうも簡単に崩れ落ちるなんて
諦めたと思ってたのに。いや、仮に諦めきれなくても、こんな風に見っともなく泣くなんて、なんて私は馬鹿なんだろうか。
このままここにいたら、色々とやばい。もう遅いかもだけど、聖下としても、そうだけど、私、一個人としてもこうして泣きべそをかいてここにいるのはやばい。
「………申し訳、ございません陛下。今日は、ここら辺で…….失礼しますね。また後日、お伺いいたします。」
すぐにでもここを、この部屋を去ろう………今日の事はなかった事にしてしまおうと思い、ドアの方へと振り返ったその瞬間、腕を掴まれ、ぐいっと後ろに引っ張られた。
「っ!!」
バランスを崩し、そのまま後ろに倒れてしまう………と思ったのもつかの間、気がつけばルーカスに抱きしめられた状態。背中に手が回され、密着する身体と身体。高まる心臓の音、一気に赤くなる顔……果たして何が起きたのか、一切理解できなかった。……え、何この状況。
「馬鹿なことを言わないでくれ。信じてないわけがない。嫌いなわけがない。君がいたから、俺は今ここにいるんだ。俺は君を何よりも信じている。」
ぎゅっと力を込められ抱きしめられる。
「へ、へいか?」
見上げれば、キラキラと光るルーカスの翡翠色の瞳。その瞳には、私が写っていて……それで
「聖下、そんなに俺の好きな人が知りたいなら教えてあげるよ。まだ、その時じゃないけれど、俺はね……俺の好きな人は」
陛下の口から紡がれそうになる、彼の好きな人。聞きたいような、聞きたくないような。いや、諦めるって決めたんだ。それに、陛下が、私を信頼してくれて教えてくれるんだ。ちゃんと聞いて、ちゃんと向かい合おう。そして、形は違えど、ずっと、ずっと陛下の隣に立っていられるように……
「俺の好きな人はね……」
「陛下!!こちらの政策のことですが!!!………あ」
バーンっと言った効果音と共に、部屋に入ってきたやってきたユーリ宰相。………なんて言うか、なんて言うか、台無しだ。
慌てて、ユーリ宰相は、部屋を出て言ってしまったが、なんとも言えないこの状況。思わず、陛下と顔を見合わせる
「えっと、陛下?その……」
「あ、いや、やっぱ無し!!無しで!!」
さっきまで、話すって言ったのに!
「え……」
「いや、ちゃんと今度話すから!な?」
「いや、陛下!?教えてくれるんじゃ……」
う、嘘つき!!陛下の嘘つき!!
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