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言っていい事と悪いことがある
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ディゾン王国には、建国より続く名家がいくつか存在する。そして、その中でも特に力を持つのは、代々宰相を務めるモーント侯爵家、中枢機能の立役者であるヴルューメ伯爵家、軍事、国境においての防衛を任されているヴィント辺境伯、そして、裁判を取り仕切り公平と中立の立場を貫く我が、フォーゲル侯爵家。この通称4大名家とも呼ばれる大貴族の子息達、それからこの国の第1王子は、幸か不幸か歳が近く、幼い頃から、比べられ、競争しあい、良きライバル、良き友として共に成長してきた。
「そして、そんな彼らが攻略対象となったゲームがこの世界なのよ!!!」
呼ばれて来てみれば、いきなりなんなのだろうか。バンッとテーブルを叩き、興奮しながら話すヴァレリナ。そんな風に机を叩いたら、机が傷ついてしまうからやめてほしい。あと、手が痛くなるから、やめたほうがいい。
「話を聞いてるの、マリーヌ」
「聞いてる、聞いてる」
聞いているが、話が右から左に流れるから、内容はちゃんと覚えていないだけ。
「なら、いいわ。兎にも角にも、その乙女ゲームのストーリが昨日から始まってしまったのよ。危機的状況だと思わない!?」
「あぁ、うん。思う、思う」
話が読めない、掴めないが、ここはひとつ頷いておこう。
「特待生として入学してくるヒロイン。親に捨てられ孤児院出身と言う暗い過去を持ちながらも、持ち前の明るさと、優しい性格で、攻略候補達と仲良くなる彼女!!現れるライバル!嫉妬に狂い彼らとの仲を引き裂こうとする悪役令嬢!訪れる幾多の困難を乗り越えて、結ばれる2人!そんなストーリが今始まる!!」
「………ご愛読ありがとうございました。ヴァレリナ・モーント先生の次回作にご期待下さい。」
「終わらせないで!!まだ始まってもないのよ!!」
「ごめん、つい」
お母様が毎月購読している「修羅場!!女の戦い!!」「本当にあった!?嘘みたいな恋愛話!!」と言う本に書いてありそうな内容だったら、つい言ってみたくなったのだ。極たまに、人気がないので、無慈悲にもストーリ序盤で、連載打ち切りになってしまう話もあったりするから。
「それで?ヴァレリナ、そのありきたりな王道ものの物語がどうしたの?出版社にでも持ち込むつもり?やめた方がいいよ、最近の読者は王道とは少し外れた物語を好む傾向にあるから」
「ちがーーう!!」
何故か再び机を叩くヴァレリナ。机に傷がつくから本当にやめてほしい。
それに、なんだ、せっかくアドバイスをしたと言うのに、何故怒られなければならない。
いや、まぁ、確かに?自分が頑張って考えた話を批判されれば、怒りたくもなるが、持ち込んだらもっとボロクソに言われるのがオチだぞ?まぁ、モーント家の権力を使えば、ゴリ押し連載も可能だろうけど
「これは、別に私が考えた話じゃないわ!」
「つまり、盗作。盗作は、犯罪だよ。一応、私、フォーゲル家の人間だから、犯罪を見逃すのはちょっと………」
「だから、ちがーーう!!これは、私が考えた話でもなければ、ましてや盗作した話でもない、これから起こる事実でなのよ!」
これから、起こる事実。つまり、予知のようなものだろうか。
「……………ねぇ、ヴァレリナ。悪いことは言わないから、今すぐそのカルト集団から手を引いた方がいいよ」
予知なんて非科学手になものは存在するわけがない。つまるところは、変な宗教の変な輩に捕まったのだろう。そのうち高いツボやら聖水を買わされそうだ。友人として、止めねば。ネズミ講に手を出されたら、こっちもやばい。
「…………言っておくけど、変な宗教でもないから。」
はぁ、だったらなんだと言うのだ。
「いい、マリーヌ。この世界は、乙女ゲームの世界なの。そして、私は転生者。そう、この世界は、前世の私がハマりにハマっていたゲームの世界だったのよ!!」
「ナ、ナンダッテ!?」
一先ず、いい精神科医でも探すとするか。いや、紹介できるお医者様はすでに紹介尽くしたんだった。そして、お医者様は常に
「ヴァレリナ様はすでに手遅れです」
「あー、これは若い頃に起こりうる病ですね。時期に治りますよ」
の2択だった。治るならいいが、かれこれ10年こうなのだ。治らないだろ!手遅れすぎるだろこれ!という結論に至ったんだった。誠に残念だ。
「驚くわよね、私もその事実に気がついた時驚いたわ」
うんうん、驚く、驚く。いつも可笑しなことを言うから、驚くよ。
「あれは、確か小さい頃、転んで頭を打った時かしら?記憶が戻ったのよ。まさか、転生してるなんて思ってもなかったわ。しかも、前世ハマってたゲームに。」
わたしも、まさかヴァレリナが頭を打って、可笑しくなるとは思わなかった。いや、まぁ、前みたいなわがまま娘よりは、ずっといいけど。
「いやぁー、まさかこんな事あるなんて思わなかったわ。まさか、大好きだった乙女ゲームの世界に転生するなんてねぇ。驚きよ。今思い出しても、ときめくストーリー。そして、素晴らしいスチルと攻略候補達。因みお相手は、さっきも言った通り、殿下を加えた名門名家のご子息たちよ。ハイパーハイスペック王子!レギュルス殿下。ヴルューメ伯爵家の双子の息子、常に女の影がある究極の女ったらしのカルトル様とそんな兄を忌み嫌う真面目すぎる弟ポルックス様。我がモーント家の養子にして私の義弟アルデバラン。ウィンド辺境伯の息子にして、剣技の才能を持つデネボラ様。そして、フォーゲル家の嫡男にして貴方のお兄様のプロキオン様の6人が、ヒロインと恋に落ちるの。でも、そんな彼らとの恋路をあれやこれやの手で邪魔した私は、断罪され、辺境の地へと追放されるの。寒さに震え、流行り病になって死ぬ。そんな末路が私を待ってるのよ!!」
おー、喋る、喋る。いつまで喋るのだろうかと思っていたらなんだか今一瞬聞きづてならないようなことを聞いた気がする。たとえ嘘だとしても、そう言うことは聞きたくない
「ねぇ、ヴァレリナ、今なんて言った?嘘でも、そう言う事聞きたくないんだけど。」
「うぅ、流石友人。私の行く末を心配してくれるのね。でも、これは決められた運命、あらがれない宿命いなのよ」
「違う、そうじゃない。なんで、そこでお兄様の名前が出てくるの?」
「え……」
「全く、いくらヴァレリナでも、言っていい事と悪いことがあるよ」
私より2つ年上のお兄様は、現在大学にて、法律学を専攻しているフォーゲル家の嫡男。4大名家の子息達の中でも、年長者であるお兄様は、昔からみんなの憧れ。優しくて、頼りになって、頭も良くて、加えて顔もいい彼は、フォーゲル家の自慢だ。
それなのに、お兄様が、どこぞの庶民と恋に落ちるなんて馬鹿げてる。いや、別にその庶民の事を悪く言っているわけじゃない。庶民が、お兄様に恋するのは別にいい。なんせお兄様は、完璧、身内の欲目抜きにしても、完璧。恋に落ちない方がおかしい。でも、お兄様が、その子を相手にするわけない。なんてたって、お兄様は……いや、お兄様に限った話ではないが、今、ヴァレリナが、話したうちの殆どの人間がヴァレリナに恋してる。恋慕を彼女に抱いているのだ。
苦節数年と言う長い期間、彼らは彼女を一途に想い続けている。のにもかかわらず、ぽっとでの誰かに、1人ならいざ知らず、全員が全員恋するはずがないだろう。仮にそんなことが起こったら、何かしらの呪いだと疑う。そんな非科学的なものは信じてないけど、それほどまでに、あり得ない話というわけだ。
奴らの執着をバカにしてはならない。特にお兄様は、やばい。あまりお兄様の事を悪くいいたくないが、お兄様のヴァレリナに対する執着は中でも度を越しているから、本当に、本当にやめた方がいい。何をとは言わないが、実の妹が言っているんだ。やめとけ。
そんな事を思いながら、ヴァレリナを見れば何故か彼女はとてつもなく落ち込んでいた。心なしかどんよりとしたエフェクトまで見える。
うん、すごい落ち込んでいる、ものすごい落ち込んでいる。
「どうせ私は、悪役令嬢。みんなに、友達にさえ嫌われ、追放エンド。さよなら、私の人生」
相変わらず、何を言っているか理解不明であるが、ここまで落ち込ませてしまったのは、私のせいだろう。
「………ヴァレリナ。何を言っているのかわからないけど、ヴァレリナは、嫌われてなんかいないよ」
むしろ好かれている。みんなの憧れである。
「嘘よ。嘘に決まってるわ」
そう言って机に伏せるヴァレリナ。なんだかズドーンといった効果音が今にも聞こえてきそうだ。うーん、めんどくさいことに、思った以上にヴァレリナは落ち込んでいるようだ。慰めよう。
「嘘じゃないよ、ヴァレリナ。それに、私は貴方のこと大好きよ」
「うぅ、本当に?」
伏せた顔を上げ、上目遣い、涙目でこちらを見てくるヴァレリナ。流石、大陸1の美女。泣いてる姿も様になる。
「本当、本当。仮に世の中の全ての人間が、ヴァレリナのこと嫌いになっても。私は好きだし、友達だよ。だから、そんなに落ち込まないで、泣かないで、笑顔でいてね。私は、ヴァレリナの笑った顔が好きだから」
そう言って、ヴァレリナの頭をそっと撫でてやれば、嬉しそうに笑う彼女。
「うぅー、マリーヌ大好きー」
むぎゅーっと、抱きつかれグリグリと頭を押さえつけられる。
「………ヴァレリナ、暑苦しいからやめて」
「辛辣!!!」
ベジッと彼女の頭を叩いて、引き剥がしたのは何も、恥ずかしかったからではない。あぁ、ちがう。
「……………」
遠くでこちらの様子を伺っているお兄様の視線が、恐ろしかったからだ。何あの目、怖。実の妹に対する視線じゃないよ!!
「そして、そんな彼らが攻略対象となったゲームがこの世界なのよ!!!」
呼ばれて来てみれば、いきなりなんなのだろうか。バンッとテーブルを叩き、興奮しながら話すヴァレリナ。そんな風に机を叩いたら、机が傷ついてしまうからやめてほしい。あと、手が痛くなるから、やめたほうがいい。
「話を聞いてるの、マリーヌ」
「聞いてる、聞いてる」
聞いているが、話が右から左に流れるから、内容はちゃんと覚えていないだけ。
「なら、いいわ。兎にも角にも、その乙女ゲームのストーリが昨日から始まってしまったのよ。危機的状況だと思わない!?」
「あぁ、うん。思う、思う」
話が読めない、掴めないが、ここはひとつ頷いておこう。
「特待生として入学してくるヒロイン。親に捨てられ孤児院出身と言う暗い過去を持ちながらも、持ち前の明るさと、優しい性格で、攻略候補達と仲良くなる彼女!!現れるライバル!嫉妬に狂い彼らとの仲を引き裂こうとする悪役令嬢!訪れる幾多の困難を乗り越えて、結ばれる2人!そんなストーリが今始まる!!」
「………ご愛読ありがとうございました。ヴァレリナ・モーント先生の次回作にご期待下さい。」
「終わらせないで!!まだ始まってもないのよ!!」
「ごめん、つい」
お母様が毎月購読している「修羅場!!女の戦い!!」「本当にあった!?嘘みたいな恋愛話!!」と言う本に書いてありそうな内容だったら、つい言ってみたくなったのだ。極たまに、人気がないので、無慈悲にもストーリ序盤で、連載打ち切りになってしまう話もあったりするから。
「それで?ヴァレリナ、そのありきたりな王道ものの物語がどうしたの?出版社にでも持ち込むつもり?やめた方がいいよ、最近の読者は王道とは少し外れた物語を好む傾向にあるから」
「ちがーーう!!」
何故か再び机を叩くヴァレリナ。机に傷がつくから本当にやめてほしい。
それに、なんだ、せっかくアドバイスをしたと言うのに、何故怒られなければならない。
いや、まぁ、確かに?自分が頑張って考えた話を批判されれば、怒りたくもなるが、持ち込んだらもっとボロクソに言われるのがオチだぞ?まぁ、モーント家の権力を使えば、ゴリ押し連載も可能だろうけど
「これは、別に私が考えた話じゃないわ!」
「つまり、盗作。盗作は、犯罪だよ。一応、私、フォーゲル家の人間だから、犯罪を見逃すのはちょっと………」
「だから、ちがーーう!!これは、私が考えた話でもなければ、ましてや盗作した話でもない、これから起こる事実でなのよ!」
これから、起こる事実。つまり、予知のようなものだろうか。
「……………ねぇ、ヴァレリナ。悪いことは言わないから、今すぐそのカルト集団から手を引いた方がいいよ」
予知なんて非科学手になものは存在するわけがない。つまるところは、変な宗教の変な輩に捕まったのだろう。そのうち高いツボやら聖水を買わされそうだ。友人として、止めねば。ネズミ講に手を出されたら、こっちもやばい。
「…………言っておくけど、変な宗教でもないから。」
はぁ、だったらなんだと言うのだ。
「いい、マリーヌ。この世界は、乙女ゲームの世界なの。そして、私は転生者。そう、この世界は、前世の私がハマりにハマっていたゲームの世界だったのよ!!」
「ナ、ナンダッテ!?」
一先ず、いい精神科医でも探すとするか。いや、紹介できるお医者様はすでに紹介尽くしたんだった。そして、お医者様は常に
「ヴァレリナ様はすでに手遅れです」
「あー、これは若い頃に起こりうる病ですね。時期に治りますよ」
の2択だった。治るならいいが、かれこれ10年こうなのだ。治らないだろ!手遅れすぎるだろこれ!という結論に至ったんだった。誠に残念だ。
「驚くわよね、私もその事実に気がついた時驚いたわ」
うんうん、驚く、驚く。いつも可笑しなことを言うから、驚くよ。
「あれは、確か小さい頃、転んで頭を打った時かしら?記憶が戻ったのよ。まさか、転生してるなんて思ってもなかったわ。しかも、前世ハマってたゲームに。」
わたしも、まさかヴァレリナが頭を打って、可笑しくなるとは思わなかった。いや、まぁ、前みたいなわがまま娘よりは、ずっといいけど。
「いやぁー、まさかこんな事あるなんて思わなかったわ。まさか、大好きだった乙女ゲームの世界に転生するなんてねぇ。驚きよ。今思い出しても、ときめくストーリー。そして、素晴らしいスチルと攻略候補達。因みお相手は、さっきも言った通り、殿下を加えた名門名家のご子息たちよ。ハイパーハイスペック王子!レギュルス殿下。ヴルューメ伯爵家の双子の息子、常に女の影がある究極の女ったらしのカルトル様とそんな兄を忌み嫌う真面目すぎる弟ポルックス様。我がモーント家の養子にして私の義弟アルデバラン。ウィンド辺境伯の息子にして、剣技の才能を持つデネボラ様。そして、フォーゲル家の嫡男にして貴方のお兄様のプロキオン様の6人が、ヒロインと恋に落ちるの。でも、そんな彼らとの恋路をあれやこれやの手で邪魔した私は、断罪され、辺境の地へと追放されるの。寒さに震え、流行り病になって死ぬ。そんな末路が私を待ってるのよ!!」
おー、喋る、喋る。いつまで喋るのだろうかと思っていたらなんだか今一瞬聞きづてならないようなことを聞いた気がする。たとえ嘘だとしても、そう言うことは聞きたくない
「ねぇ、ヴァレリナ、今なんて言った?嘘でも、そう言う事聞きたくないんだけど。」
「うぅ、流石友人。私の行く末を心配してくれるのね。でも、これは決められた運命、あらがれない宿命いなのよ」
「違う、そうじゃない。なんで、そこでお兄様の名前が出てくるの?」
「え……」
「全く、いくらヴァレリナでも、言っていい事と悪いことがあるよ」
私より2つ年上のお兄様は、現在大学にて、法律学を専攻しているフォーゲル家の嫡男。4大名家の子息達の中でも、年長者であるお兄様は、昔からみんなの憧れ。優しくて、頼りになって、頭も良くて、加えて顔もいい彼は、フォーゲル家の自慢だ。
それなのに、お兄様が、どこぞの庶民と恋に落ちるなんて馬鹿げてる。いや、別にその庶民の事を悪く言っているわけじゃない。庶民が、お兄様に恋するのは別にいい。なんせお兄様は、完璧、身内の欲目抜きにしても、完璧。恋に落ちない方がおかしい。でも、お兄様が、その子を相手にするわけない。なんてたって、お兄様は……いや、お兄様に限った話ではないが、今、ヴァレリナが、話したうちの殆どの人間がヴァレリナに恋してる。恋慕を彼女に抱いているのだ。
苦節数年と言う長い期間、彼らは彼女を一途に想い続けている。のにもかかわらず、ぽっとでの誰かに、1人ならいざ知らず、全員が全員恋するはずがないだろう。仮にそんなことが起こったら、何かしらの呪いだと疑う。そんな非科学的なものは信じてないけど、それほどまでに、あり得ない話というわけだ。
奴らの執着をバカにしてはならない。特にお兄様は、やばい。あまりお兄様の事を悪くいいたくないが、お兄様のヴァレリナに対する執着は中でも度を越しているから、本当に、本当にやめた方がいい。何をとは言わないが、実の妹が言っているんだ。やめとけ。
そんな事を思いながら、ヴァレリナを見れば何故か彼女はとてつもなく落ち込んでいた。心なしかどんよりとしたエフェクトまで見える。
うん、すごい落ち込んでいる、ものすごい落ち込んでいる。
「どうせ私は、悪役令嬢。みんなに、友達にさえ嫌われ、追放エンド。さよなら、私の人生」
相変わらず、何を言っているか理解不明であるが、ここまで落ち込ませてしまったのは、私のせいだろう。
「………ヴァレリナ。何を言っているのかわからないけど、ヴァレリナは、嫌われてなんかいないよ」
むしろ好かれている。みんなの憧れである。
「嘘よ。嘘に決まってるわ」
そう言って机に伏せるヴァレリナ。なんだかズドーンといった効果音が今にも聞こえてきそうだ。うーん、めんどくさいことに、思った以上にヴァレリナは落ち込んでいるようだ。慰めよう。
「嘘じゃないよ、ヴァレリナ。それに、私は貴方のこと大好きよ」
「うぅ、本当に?」
伏せた顔を上げ、上目遣い、涙目でこちらを見てくるヴァレリナ。流石、大陸1の美女。泣いてる姿も様になる。
「本当、本当。仮に世の中の全ての人間が、ヴァレリナのこと嫌いになっても。私は好きだし、友達だよ。だから、そんなに落ち込まないで、泣かないで、笑顔でいてね。私は、ヴァレリナの笑った顔が好きだから」
そう言って、ヴァレリナの頭をそっと撫でてやれば、嬉しそうに笑う彼女。
「うぅー、マリーヌ大好きー」
むぎゅーっと、抱きつかれグリグリと頭を押さえつけられる。
「………ヴァレリナ、暑苦しいからやめて」
「辛辣!!!」
ベジッと彼女の頭を叩いて、引き剥がしたのは何も、恥ずかしかったからではない。あぁ、ちがう。
「……………」
遠くでこちらの様子を伺っているお兄様の視線が、恐ろしかったからだ。何あの目、怖。実の妹に対する視線じゃないよ!!
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