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三年生 寒い雨 なりたいもの
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寒い日は、好きじゃない。 なかなか、元気が出ないから。
今日は朝からとっても寒くて、先生と私は、二人でずっとくっ付いてる。 手を繋いで隣に座ったり、膝枕したり、されたり。 お昼は、冷凍の小さいクロワッサンをいっぱい焼いて、パン屋さんごっこをした。
「先生。 今日も、お泊まりしたいな……いい?」
もう、夕方。 冬の雨の日は寒くて、外は、ずっと暗い。
一人に、したくないな。
たくさんお喋りして、先生は、ぐったりしてる。
アイピローを乗っけてソファに横たわる先生に、聞いてみる。 先生の手に、私の手を重ねながら。
「二泊もしたら、心配なさるでしょう。 今日は、帰った方がいいわ」
きれいな唇だけ動かして、先生はそのままの姿勢で、答える。 私も明るく、言い返す。
「えへへ。 実は、ママにはもう聞いてあるのです。 試験は終わったんだから、いっぱいデートしてこい、はーと、はーと、はーと、キラキラって返信もきています」
アイピローを外して、先生は私を見る。
「ふふ。 素敵なお母様。 でも今日は疲れてしまったから、お夕飯、作れない」
「平気。 私、ありもので、作っちゃうもん。 冷蔵庫、開けていい?」
家庭科の先生、なりたいんだよ。 この半年で、料理はけっこう上達した。 先生が、私に目標をくれたから。
「美味しい……」
「えへへ。 簡単だけど。 まいたけのリゾット、私、好きなの。 今日、寒いしね。 先生ん家にもきのこがたくさんあって、良かった」
よく、ふーふーして、食べてね。 先生の家の冷凍庫にも、うちみたいに、きのこ、色んな種類が冷凍してあった。 うちみたいに、ぐっちゃぐちゃじゃなくて、冷凍したものみんなに、日付が入ってたけど……。
鉄の重たいかっこいいお鍋で、リゾットを作った。 鍋や調味料がいいから、うちで作るよりも美味しく出来た気がする(あと、愛かな……なんちて)。
「きのこは、冷凍した方がいいんだって。 なんだっけな…… テレビで見た。 壁が壊れて…… 酸素が…… えと……」
「酵素でしょ。 壁は、細胞膜のことかしらね」
そ、そうだもん。 私が言おうとしてたやつ。 唇、とんがってしまう。
「夕陽、ありがとう」
先生は、ご飯を見ながら言う。 ちっちゃな声で。
「あなたみたいにいい子、いないわ」
今度は私の目を見て、隣に座る私の手を、きゅっと握る。 元気は、あんまりない。
「いい子だから、ご褒美もらったんだもん。 えへへ」
自分のお尻を、指差す。 先生はちょっとだけ、笑う。
「私…… 先生と、ずうっと一緒だから。 大人になったら、結婚しよ。 私がちゃんと働いて、先生が、もう、してあげてもいいかなって思ったら。 そしたら、結婚しよ」
「ふふ…… すてきね」
先生はスプーンを持つ手を止めて、私を見つめる。 私は続ける。
「すてきだよ。 あのね、調べたんだけど、女の人とか男の人どうしのやつ、あるでしょ。 結婚みたいな、役場に出すやつ」
「パートナーシップ制度?」
「そう、それ。 あれってね、市の決まりで、二十歳にならないとだめなんだって。 あとね、えと、やっぱり学生のうちは、子どもだから。 だから卒業したら、結婚しよ。 夕陽と」
私の両手と先生の両手、ぎゅっとする。 強く、ぎゅっと握る。
「もしかしたらその頃には、そういう制度じゃなくて、ほんとの結婚ができるようになってるかもしんないし」
今はまだ……できないみたいだけど。
「それにね……もし、大学……受からなくても。 それはそれで、頑張るから。 やる気、なくさないから。 だって、私がなりたいもの、仕事じゃないから」
「どういう意味?」
「私がなりたいのは、学校の先生とか、看護師とか、そういうことじゃなくて……。 おりえちゃんと、ずっと一緒にいる人になりたい」
先生は、目をまん丸くして、それから、笑ってるような泣いてるような顔になって、そしてまた、泣いた。
「ばか。 そんな事言うの、ずるいわよ……」
なんで? 私は、唇をとがらかす。
「ばかじゃないもん。 すっごく、考えたもん」
先生は、私とおでこ同士、こつんとする。
「大好き……」
小さく、呟く。 私だって、大好きだよ。
「ね。 やっぱり、今日も泊まって。 明日は、ゆっくり帰って。 送って行くから」
「やったあ。 そしたら、今夜も、いっぱいくっ付きたいな……。 ほら、寒いし……」
もじもじしちゃうな。 何回も何回もしてても、こういうこと言う時は、一応、恥ずかしい。
先生はにこにこして、私の髪を撫でながら、言う。
「そうね。 寒いから今日も、一緒に長風呂しちゃいましょ。 そしたら裸で抱き合って、暖め合いながら、寝ましょうね」
今日は朝からとっても寒くて、先生と私は、二人でずっとくっ付いてる。 手を繋いで隣に座ったり、膝枕したり、されたり。 お昼は、冷凍の小さいクロワッサンをいっぱい焼いて、パン屋さんごっこをした。
「先生。 今日も、お泊まりしたいな……いい?」
もう、夕方。 冬の雨の日は寒くて、外は、ずっと暗い。
一人に、したくないな。
たくさんお喋りして、先生は、ぐったりしてる。
アイピローを乗っけてソファに横たわる先生に、聞いてみる。 先生の手に、私の手を重ねながら。
「二泊もしたら、心配なさるでしょう。 今日は、帰った方がいいわ」
きれいな唇だけ動かして、先生はそのままの姿勢で、答える。 私も明るく、言い返す。
「えへへ。 実は、ママにはもう聞いてあるのです。 試験は終わったんだから、いっぱいデートしてこい、はーと、はーと、はーと、キラキラって返信もきています」
アイピローを外して、先生は私を見る。
「ふふ。 素敵なお母様。 でも今日は疲れてしまったから、お夕飯、作れない」
「平気。 私、ありもので、作っちゃうもん。 冷蔵庫、開けていい?」
家庭科の先生、なりたいんだよ。 この半年で、料理はけっこう上達した。 先生が、私に目標をくれたから。
「美味しい……」
「えへへ。 簡単だけど。 まいたけのリゾット、私、好きなの。 今日、寒いしね。 先生ん家にもきのこがたくさんあって、良かった」
よく、ふーふーして、食べてね。 先生の家の冷凍庫にも、うちみたいに、きのこ、色んな種類が冷凍してあった。 うちみたいに、ぐっちゃぐちゃじゃなくて、冷凍したものみんなに、日付が入ってたけど……。
鉄の重たいかっこいいお鍋で、リゾットを作った。 鍋や調味料がいいから、うちで作るよりも美味しく出来た気がする(あと、愛かな……なんちて)。
「きのこは、冷凍した方がいいんだって。 なんだっけな…… テレビで見た。 壁が壊れて…… 酸素が…… えと……」
「酵素でしょ。 壁は、細胞膜のことかしらね」
そ、そうだもん。 私が言おうとしてたやつ。 唇、とんがってしまう。
「夕陽、ありがとう」
先生は、ご飯を見ながら言う。 ちっちゃな声で。
「あなたみたいにいい子、いないわ」
今度は私の目を見て、隣に座る私の手を、きゅっと握る。 元気は、あんまりない。
「いい子だから、ご褒美もらったんだもん。 えへへ」
自分のお尻を、指差す。 先生はちょっとだけ、笑う。
「私…… 先生と、ずうっと一緒だから。 大人になったら、結婚しよ。 私がちゃんと働いて、先生が、もう、してあげてもいいかなって思ったら。 そしたら、結婚しよ」
「ふふ…… すてきね」
先生はスプーンを持つ手を止めて、私を見つめる。 私は続ける。
「すてきだよ。 あのね、調べたんだけど、女の人とか男の人どうしのやつ、あるでしょ。 結婚みたいな、役場に出すやつ」
「パートナーシップ制度?」
「そう、それ。 あれってね、市の決まりで、二十歳にならないとだめなんだって。 あとね、えと、やっぱり学生のうちは、子どもだから。 だから卒業したら、結婚しよ。 夕陽と」
私の両手と先生の両手、ぎゅっとする。 強く、ぎゅっと握る。
「もしかしたらその頃には、そういう制度じゃなくて、ほんとの結婚ができるようになってるかもしんないし」
今はまだ……できないみたいだけど。
「それにね……もし、大学……受からなくても。 それはそれで、頑張るから。 やる気、なくさないから。 だって、私がなりたいもの、仕事じゃないから」
「どういう意味?」
「私がなりたいのは、学校の先生とか、看護師とか、そういうことじゃなくて……。 おりえちゃんと、ずっと一緒にいる人になりたい」
先生は、目をまん丸くして、それから、笑ってるような泣いてるような顔になって、そしてまた、泣いた。
「ばか。 そんな事言うの、ずるいわよ……」
なんで? 私は、唇をとがらかす。
「ばかじゃないもん。 すっごく、考えたもん」
先生は、私とおでこ同士、こつんとする。
「大好き……」
小さく、呟く。 私だって、大好きだよ。
「ね。 やっぱり、今日も泊まって。 明日は、ゆっくり帰って。 送って行くから」
「やったあ。 そしたら、今夜も、いっぱいくっ付きたいな……。 ほら、寒いし……」
もじもじしちゃうな。 何回も何回もしてても、こういうこと言う時は、一応、恥ずかしい。
先生はにこにこして、私の髪を撫でながら、言う。
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