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三年生 ペットとやきもち
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放課後、私の足は保健室に向かう。 帰り支度も終えて、重たい黒い、リュックを背負って。
今週は、金曜の夜に行ってもいい? それとも、土曜日の朝?
先生も、疲れてるかもしれないから。 本当は、金曜の夜からずっと一緒にいたいけど、一緒なのにえっちができないの、余計につらいし…。 だから、一応、聞いておこうと思って。
扉をノックする。 コン、コン、コン。 返事は無くても、開くなら、入っちゃう。
「こんにちは」
えへ…と、笑顔で入る。
あれ。 キャスター付きの小さな丸椅子に、知らない子がうなだれている。 先生はその子の正面に、脚を組んで。
何か、相談事かな。
「あの、ごめんなさい。 また来ます」
小さい声で、言う。
「御用があるなら、そちらのベッドで座って。 少し、待っていてくださいね」
わ。 ちょっとツンツンしてる、先生の声。 これは却って、出て行かない方がいいっぽい。
「あっ…じゃあ、待ちます」
大人しく、衝立のこちら、ベッドに腰掛ける。
意外に、終わらないなぁ。 相談事。 上履きの先、緑だった。 一年生だ。
私だったら、何かを相談してる時、知らない先輩がいたら、嫌だけど。
「いいです。 今日は、帰ります。 でも、また来ますから」
さっきの一年生の、少し大きな声が聞こえる。
「とっても悩んだなら、いつでも。 いますから、ここに」
先生の、涼やかな声も。
一年生は鞄を持って、どすどす音を立てて、帰っていく。 怒ってる?
「夕陽。 鍵、かけて」
さっきの子が座っていた、丸椅子に座る。 椅子、あったかい。
「先生、どうしたの。 さっきの子、大丈夫?」
先生は脚を組んだまま、私が電気ポットから淹れた白湯を飲む。 私も自分用にしてもらったカップで、真似して、飲む。
「どうかしら。 困ってるの」
「先生が? 珍しいね」
また、白湯を啜る。
「私の事、好きになってしまったそうよ。 彼女」
ほんとに、困ったような顔をする。 先生。
「おぁ…。 まぁ、しょうがないね。 先生、きれいだから」
「まあ。 やきもち、焼いてくれないの」
先生、笑ってくれる。 かわいい。 好き。
「あんなに、やきもち焼きだったのに。 一学期にも、来てた子よ。 彼女」
意地悪に、笑いながら言う。 妬かせようとしてるの? 先生。 でも私、もう、知ってるもん。
「先生は、私の事だけ、好きだもん。 先生の事が好きな子がいても、それはしょうがない。 先生、すてきだから。 だけど、先生は私の事が大好きだから、夕陽は気にしない」
「あら。 強くなって。 いい子だわ」
キャスター付きの椅子ごと、先生が私の方へ来る。 かがんで、唇どうしで、ちゅ、とする。 私はそのまま先生に抱きついて、頭をくりくり、擦り付ける。 先生は、私をぎゅっとしてくれる。
「土曜日に相談したいから、私のお家に来たいって。 積極的でしょう」
すご。 最近の一年生は、まったくけしからん。
「先生、私が一番だもんね。 さっきの子に、なんて言って断ってくれたの?」
「だからね、教えてあげたの。 お休みの日は、ペットと遊ぶから、駄目なのよって」
「ペ…ペット?」
先生は、私の頭を撫でながら、続けた。
「そう。 ペットのかわいいお猿の女の子、甘えん坊で、週末はたくさん遊んであげないといけないの。 発情期で、他所で悪さをするかもしれないからって」
う…嘘でしょ。 私のこと?
「そしたら…何て? 一年生は」
「なんだか、怒っちゃったわ。 冗談だと思ったのかしら。 ほんとうなのに」
今週は、金曜の夜に行ってもいい? それとも、土曜日の朝?
先生も、疲れてるかもしれないから。 本当は、金曜の夜からずっと一緒にいたいけど、一緒なのにえっちができないの、余計につらいし…。 だから、一応、聞いておこうと思って。
扉をノックする。 コン、コン、コン。 返事は無くても、開くなら、入っちゃう。
「こんにちは」
えへ…と、笑顔で入る。
あれ。 キャスター付きの小さな丸椅子に、知らない子がうなだれている。 先生はその子の正面に、脚を組んで。
何か、相談事かな。
「あの、ごめんなさい。 また来ます」
小さい声で、言う。
「御用があるなら、そちらのベッドで座って。 少し、待っていてくださいね」
わ。 ちょっとツンツンしてる、先生の声。 これは却って、出て行かない方がいいっぽい。
「あっ…じゃあ、待ちます」
大人しく、衝立のこちら、ベッドに腰掛ける。
意外に、終わらないなぁ。 相談事。 上履きの先、緑だった。 一年生だ。
私だったら、何かを相談してる時、知らない先輩がいたら、嫌だけど。
「いいです。 今日は、帰ります。 でも、また来ますから」
さっきの一年生の、少し大きな声が聞こえる。
「とっても悩んだなら、いつでも。 いますから、ここに」
先生の、涼やかな声も。
一年生は鞄を持って、どすどす音を立てて、帰っていく。 怒ってる?
「夕陽。 鍵、かけて」
さっきの子が座っていた、丸椅子に座る。 椅子、あったかい。
「先生、どうしたの。 さっきの子、大丈夫?」
先生は脚を組んだまま、私が電気ポットから淹れた白湯を飲む。 私も自分用にしてもらったカップで、真似して、飲む。
「どうかしら。 困ってるの」
「先生が? 珍しいね」
また、白湯を啜る。
「私の事、好きになってしまったそうよ。 彼女」
ほんとに、困ったような顔をする。 先生。
「おぁ…。 まぁ、しょうがないね。 先生、きれいだから」
「まあ。 やきもち、焼いてくれないの」
先生、笑ってくれる。 かわいい。 好き。
「あんなに、やきもち焼きだったのに。 一学期にも、来てた子よ。 彼女」
意地悪に、笑いながら言う。 妬かせようとしてるの? 先生。 でも私、もう、知ってるもん。
「先生は、私の事だけ、好きだもん。 先生の事が好きな子がいても、それはしょうがない。 先生、すてきだから。 だけど、先生は私の事が大好きだから、夕陽は気にしない」
「あら。 強くなって。 いい子だわ」
キャスター付きの椅子ごと、先生が私の方へ来る。 かがんで、唇どうしで、ちゅ、とする。 私はそのまま先生に抱きついて、頭をくりくり、擦り付ける。 先生は、私をぎゅっとしてくれる。
「土曜日に相談したいから、私のお家に来たいって。 積極的でしょう」
すご。 最近の一年生は、まったくけしからん。
「先生、私が一番だもんね。 さっきの子に、なんて言って断ってくれたの?」
「だからね、教えてあげたの。 お休みの日は、ペットと遊ぶから、駄目なのよって」
「ペ…ペット?」
先生は、私の頭を撫でながら、続けた。
「そう。 ペットのかわいいお猿の女の子、甘えん坊で、週末はたくさん遊んであげないといけないの。 発情期で、他所で悪さをするかもしれないからって」
う…嘘でしょ。 私のこと?
「そしたら…何て? 一年生は」
「なんだか、怒っちゃったわ。 冗談だと思ったのかしら。 ほんとうなのに」
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