保健室 三年生

下野 みかも

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三年生 春の夜、二人

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 また、一人で、しちゃった。
 夜。自分の部屋。ベッドで、掛け布団をしっかり掛けて、絶対バレないように。指で。
 先生の事、思い出して。
 ハスキーで、素敵な声なの。目元は涼やかで、鼻筋が細くて、スッと通ってて、頬は、白くて。唇には、いつも赤い口紅が乗ってる。
「先生」
 思い出すと、また触りたくなる。私の指は、あんなに、細くてきれいじゃないけど。声、聞きたいな……。


 結局、昨夜は、五回した。
 猿かよ。自分でも、そう思う。
 そんな話、誰ともできないから。何回が普通か知らないけど、きっと多いと思う。全部、先生のせい。
 放課後、私は丸椅子に座って、書き仕事をする先生を眺める。保健室の鍵とカーテンは、勝手に閉めた。
 ペンじゃなくて、私を触ってよ。
 指、きれい。
 好き。
 私の視線に気付いて、先生はこちらに微笑む。
「気になってしまいます、見つめられて」
 キャスター付きの椅子のまま、こちらに来る。
 ペンを胸のポケットに挿して、私の手を取る。
 指を絡めて、キスしてくれる。
「ん、んっ……」
 先生。家じゃ、一人じゃ、キス、できなかったよ。したかったのに。ここでたくさん、しておかないと。


 そう思うのに、すっと、唇を離されてしまう。
「もっと」
 切なくて、おねだりする。
「だって、泣いてます。どうしたの」
「えっ?」
 やだ、本当だ。涙が出てる。何だか恥ずかしくて、指でぐしぐし、拭う。
「先生のこと、嫌いになっちゃった?」
「そんなわけ、ないじゃん。好きだから……。一緒にいたくて、出た」
 先生は、私をぎゅっと抱き締める。髪を、やさしく撫でてくれる。
「先生、家に帰るの、いやだよ。家では、ぎゅっとできないし。キスもできない。お話も、できない」
 ばかみたい。涙がぼろぼろ出てくる。学校がある日は、毎日会えるのに。
 先生は、黙って髪を撫でている。ずるい。こういう時、黙らないで。

 
 随分、泣いた気がした。外は、もう暗い。 
「帰りましょう。送っていきます」
「うん」
 校舎裏の駐車場で、車の陰に座り込んで、先生を待つ。職員室に、挨拶してから帰るって。 
 送ってもらうの、初めて。特別扱いかな。
「お待たせしました」
 先生。いつもの白衣を脱いで、黒いトレンチコートを着てる。すごく、素敵。
「どうぞ」
 助手席のドアを開けてくれる。水色のフランス車。おしゃれ。先生、全部、素敵だな。
 車の中、物が全然ない。ティッシュにガムに、エコバッグだらけのママの軽と、全然違う。
 先生も、運転席に乗り込む。鍵をかけてすぐに、私にキスをする。 
「先生、他の先生、来ちゃうかも」
 まだ、出発してないよ。先生達の駐車場でしょ。
「来る方が悪い」
 そんな、ばかな。私たちは、また、キスをする。いつもよりさらに、いけない事をしてる気分……。


 何度も何度もキスをしてから、出発する。
「ナビ、してくださいね」
「うん」
 手を繋いだまま、ドライブ。特別扱いだ。
「お腹、空きました?」
「すいた」
「帰ったら、すぐお夕飯かな。いいですね」
「お母さん、夜勤だから。冷凍のパスタだよ」
「そうですか」
 うち、ママしかいないし。先生に、言ったかな。
「お母様、いつお帰りになるのですか」
「明日のお昼前くらいかな。病棟の看護師なの」
 少しだけ考えて、先生は、
「ねぇ。明日は、土曜日だから。お友達の家に泊まることにしては、どうでしょう」
「えっ。先生のお家に、泊まっていいの?」
 先生は、前を向いたまま、にこっとする。
「お母様に、すぐ連絡できますか」
「メールする。すぐ。大丈夫、もう三年だから。帰ってこいなんて、言わないよ」
 どうしよ。どうしよ。いいのかな。初めて、お泊まり。しかも先生のお家に、なんて。
 ママにメールする。休憩になったら、すぐに見てくれるだろう。
「にこにこして。かわいい子」
 先生が笑って、また繋いだ指を、ぎゅっとしてくれる。だって、こんな、超、超、特別扱い。
「先生、あの、私、着替えとか、取りに行った方がいいかな」
「私のでよかったら、着てください。少し大きいかもしれないけれど」
 先生は、私より結構、背が高い。私も一六一センチあるから、小さい方ではないんだけど。
「うん」
 少女マンガで見る、彼シャツみたいになる、きっと。やばい。
「先生のお家、遠いの?」
「駅の近くなので、ここからだと、あと二十分くらい」
 あと二十分くらいかぁ。ドキドキするし、緊張する。 顔が、にやけてきちゃう。
「期待してますか?」
 えっ! そ、そんなににやけてたかなぁ。
「き、期待なんて、別に……」
 それは……するでしょ。してるに決まってますけど。
 素直に認めるのは恥ずかしいから、私はカーディガンからリップを出して、塗った。


 先生は前を向いて運転しながら、聞く。
「ねぇ、昨夜は、一人で何回したんですか」
「えっ」
 何て?
「ゆうべは、ひとりで、何回、したの?」
 先生は一言一言、はっきり、言い直す。心臓が、止まりそうになる。俯く。
「し……してない」
「嘘吐き」
 なんで、急にそんな事。ウソツキ、なんて。
「先生、こわいよ」
「私、嘘吐きは嫌いです」
「そんな事、言わないでよ」
 何で。さっきまで、浮かれてたのに。何でそんな、意地悪言うの。下唇を噛んで、何かを我慢する。
「何回したんですか。教えて」
「い……一回しか、してないよ」
「嘘ね」
 何で。何でわかるの。繋いでる手、指先が、冷たくなってきた。
「ほんとは……五回。眠れなくて、しちゃったの。ごめんなさい」
 なんか、涙出てきた。恥ずかしい。消えたい。
 先生は、繋いでる指を外す。
「まあ。五回も。私の事、考えました?」
 先生の事しか、考えてない。先生の唇、先生の舌、先生の指を。思い出して、したの。
 何回も、首を縦に振る。言葉が出せなくて。何か喋ったら、泣きそうだから。
「一人でできる、お利口さん。今、ここで、してみせて」
「今……? 無理だよ……」
 先生、むちゃくちゃだよ。
「出来るでしょ。お猿さんみたいに、一晩に五回もしたのだから」
「なんでそんな……意地悪言うの」
 私の問いかけには、答えてくれない。
 さっきまで、ルンルン気分だったのに。地獄になっちゃった。涙が落ちる。
「先生、何か……ひざ掛けとか、貸してください」


 コンビニで、先生はコーヒーを買う。そして、黒いコートを脱いで、私の膝に掛ける。少しだけ、シートを倒す。
「遠回りしましょうね。お利口さんが、いけるまで」
 ひどい。恥ずかしくて、顔を上げられない。
 ドアの鍵を掛けて、先生は、私の顎をつかんで、キスをする。
「先生、駐車場では、だめ……」
「どうして? キス、嫌いになりましたか」
「見えちゃうよ。私、制服だし……」
「大変。私、きっと逮捕されますね」
「そんなの、やだよ……」
 もう、訳がわからない。先生は、私をどうしたいの。
「さぁ、出発しましょう」


「ねぇ、お利口さん。私の指、美味しいですか」
 先生が私の口に、人差し指と、中指を入れてくるから。私はそれを一生懸命、舐める。
「かわいい。犬みたい」
 先生、たのしそう。私はちっとも、たのしくない。
 たのしくないけど、濡れている。
 先生のコートに隠れてるけど、スカートの中に手を突っ込んでる。何回も何回も、あれを擦ってる。下着は、ぐしょぐしょだ。
 先生。意地悪な、先生。何でこんな事するの。私の事、きらいなの。
 私は、先生の事、先生だけを、大好きなのに……。
「あ」
 もう、指、動かせない。気持ちいいのが、きちゃったから。
 先生も、私の口から、指を抜く。その濡れた指を、自分の口に持っていく。
「美味しい。お利口さんの、味がします」


 先生のお家は、駅前の大きなマンションだった。
 ママと、宝くじが当たったら、住みたいねって言ったところ。
 セーラーの襟が見えないように先生のコートを羽織って、エントランスへ。
「大きい……」
「みんなの玄関ですからね」
 暗証番号を入力して、中に入る。
「後で、番号、教えてあげます」


 エレベーターで、上から二番目の階へ。
「すごい。すっごく高い」
「一番上の階は、もっと高いですよ」
「そりゃ、そうだけど」
 市内でも、この高さの建物って、そうはない。
「ベランダでいやらしい事しても、誰にも見られません」
 先生、まだここ、共用スペースだよ……。そういう事言ったら、ダメ。
 今日、何となく気付いた。先生はちょっと、常識がない。


 明らかに他より広い、角部屋。
 先生のお城は、そこだった。
 鍵を開ける。センサーで、電気が点く。
 玄関には、先生のハイヒール。少しずつ形が違っているけど、どれも黒で、つやつやだ。爪先が、かっこよく尖ってる。
 私はローファーを脱いで、先生のハイヒールの隣に揃えて、置く。
「手洗い、うがいです」
「はい」
 洗面所も、広い。きれい。いい匂い。おしゃれなお店の、アロマみたいな匂いがする。
 見たことない、英語の茶色いボトルのハンドソープで手を洗う。すっごく、いい香り。先生も、いつもいい香り。私も、大人になったらこういうの、使いたいな。


 コートを先生に返して、私は、制服のまま、ソファに座る。ヨーロッパの貴族みたいな、光沢のある布の、猫足の、なんかすごい、ソファ。
「映画のセットみたい」
「かわいいでしょう」
 かわいいっていうか、なんか、すごい。保健室の先生って、そんなにお金持ちなの?
 先生も、私の隣に腰掛ける。
「車の中では、意地悪して、ごめんなさい。あなたが、あんまり……かわいいから。苛めたくなってしまって」
「ぜんぜん、へいき……」
 では、ない。結構、つらかった。唇が、とんがる。
 そこに、先生の唇が、重なる。私たちは、誰にも遠慮せず、舌を絡ませ合う。先生の首に、腕を回す。先生の腕は、私の腰に。静かな部屋の中で、キスの音と、私の喉から出る声が、響く。


 何分、キスしたか分からない。車の中でもしてたから、下着はもう、スカートに染みちゃうんじゃないかというほど汚れてる。
「先生、もう、さわって」
 唇を離して、お願いする。
「どんなふうに?」
 意地悪。
「指、先生の指を、中にいれて…」
 指が入ってくる。
「んっ」
 先生の、細くて、長い指。自分でするより奥に届く、魔法の指。
「あっ、あぁ」
 ほんとに、発情期の猫みたい。変な声が出る。先生に出会うまで、自分からこんな声が出るなんて知らなかった。
「うちはね。防音、しっかりしているんです」
 耳元で、そんなこと。
「あなたのかわいい鳴き声、たくさん聞かせて」
 私は、こくこく頷く。
 先生は、指でやさしく、意地悪をする。縦に動かしたり、掻き回してみたり。
「ん、あっ、ああっ、せんせい……」
「素直ないい子。大好き」
「せんせい、わたしも……わたしも、だいすき」
 背中から抱かれて、じゅぶ、と、耳に舌を挿れられる。音、いやらしい。
「せんせ、みみ、えっちだよ……」
「嬉しいでしょ。えっちなの、好きでしょう」
「すき、えっちなの、すき」
 脳みそが、しびれる。気持ちいい。もっとして。ずっと、して。
「せんせい、わたし、もう」
 先生は指を抜いて、固くなった私のあれに触れる。 ぬるぬるの指先で、強く擦ってくれる。
「あっ、ああっ、いい」
 腿で、先生の手を挟んでしまう。右脚だけ、ぴんと伸びる。 
 そのまま、動けなくなる。頭もぼーっとして、何も、考えたくない。先生の事しか。


 目を覚ますと、まだ真っ暗で、夜だ。
「ねてた……」
「寝てましたよ」
「うわっ」
 先生は、起きてた。猫足のソファで、私を膝枕してくれてたんだ。
「今、何時?」
「二十三時。もう眠い?」
「寝たから、眠くない!」
「元気なこと」
 先生が、ふふっと笑う。先生が笑うと、うれしいな。
「先生、いい匂い」
「先に、シャワーしてしまいました。お湯、張ってあるから。お風呂、使って下さい」


 お風呂も、広かった。そして、いい匂いだった。多分その辺では売ってない、外国のシャンプーとトリートメント、それにボディソープ。全部、いい香り。高級ホテルみたい(行ったことないけど)。
 髪を洗って、体を念入りに、洗う。
「うわ…」
 あそこ、めちゃめちゃ、ぬるぬるしてる。そりゃそうだ。あんなに、して、そして、してもらったんだから。
 指、すぐ入っちゃうな。入れてみる。人差し指を、中で動かしてみる。先生みたいに、長くない指。それでも、余韻で気持ちいい。
 少しだけ。もう少しだけ、動かす。声を出さないように。
「お風呂でオナニー、してるでしょ」
「ぎゃっ!」
 すりガラスの向こうに、いる! 扉が開く。
「絶対、してると思った。かわいいお猿さん」
 笑ってる。
 さっきは、素直ないい子って言われたのに……。また、猿に退化してしまった。
「洗ってただけだもん。どうせまたするから、きれいにしてたんです」
「それは失礼。中は石鹸、つけない方がいいですよ」


 お風呂から出ると、ふわふわのタオルと、黒い下着が用意してあった。
「初めて見た」
 映画とかでしか見た事ない、女優が着るやつじゃん。 キャミソールの、長いやつ。スリップっていうの? 膝上、10センチくらいの。つやつやで、胸元と裾に、レースが付いている。えっちだ。
「……ぱんつ、ない」
 多分、わざとだ。


「かわいい」
 リビングに戻ると、先生が、お酒を飲んでいる。
「色が付いた飲み物、好きじゃないんじゃないの」
「アルコールは、別です」
 そういえば、コンビニのコーヒーも、飲んでなかった。
 先生、頬っぺたと目元が少し赤くなって、すっごくきれい。先生も、私と同じような黒いスリップに、同じつやつや素材の、短いキュロットみたいなやつを穿いている。
「座らないんですか。隣」
「だって……」
 ぱんつ、なかったよ。ソファには座れない。
「ああ。穿いたって、どうせ汚してしまうでしょ」
 先生は私を手招きして、膝の上に乗せる。耳たぶを、噛みながら言う。
「よく似合ってます。きれいよ」
 きれいは、先生。私はどきどきしてしまう。
 先生の長い指は、私の身体をまさぐる。下着の中にも入ってきて、薄い、胸を触る。
「あっ」
 いやだ。そこは、恥ずかしいの。ぺたんこだから。私は、先生の指を移動させようとする。
「だめ? くすぐったい?」
「ううん……。そこ、気持ちよくないから。触ってくれるなら、下がいい」
「そう。じゃあ、今夜はここがよくなるように、頑張りましょう」
 ええー。がんばるの、嫌い。でも、先生が言うなら。
「頑張ります」
「ふふ。その意気です」


 私たちは、ベッドに移動する。私、お姫様抱っこをされて。いい匂い、先生のにおいのする、毎日寝てるベッドへ。
「ベッド、でか」
「寝るの、好きなので」
 そういう問題かな……。私だって、寝るの好きだよ、普通のシングルベッドだけど。
 明かりを、常夜灯だけにする。どきどきする。私はベッドの真ん中に座らされて、向かい合って、指を絡めて、先生に、キスされる。
 ちゅ、ちゅっ、と、頭の中で音が響く。もう気持ちいい。いい匂い、心地良いベッド、それに、大好きな先生。夢みたい。
「先生、好き」
「ありがとう」
 ずっと、指を絡めていたい。でも、それじゃ、他のところ、触ってもらえないから。
「横になりましょう」
 先生が、横たわる。すごいスタイル。手も脚も長くて、頭が小さい。腰が細い。
「先生…すてき」
「あなたの方が、すてきです」
 そんなわけない。だけど、嬉しい。私も寝転がって、先生に抱きつく。いい香り。いつもの香りが、先生の身体の匂いと混じって、もっといい香りに感じる。
「よいしょ」
 くるっと、回転させられる。私は先生に背中を向ける形になる。
「さぁ、頑張りましょうね」
 そういうこと? 先生は、下着の下、私の胸に触れる。
「うっ……く、くすぐったい、えへへ」
「ちっとも、気持ち良くない?」
「くすぐったさしか、ない」
 これ、だめだよ。くすぐったくて、笑っちゃうもん。私、小さいし、才能ない。
「じゃあ、お手伝いしてもらいましょう。すぐに気持ち良くなる、良いところに」
 そう言って先生は、私のそこを、触る。ベッドでもたくさん、えっちなキスをしたから。とっくに濡れている。
「良い子ですね」
「先生… …すぐ、いっちゃうよ」
「まだ日付も変わっていませんよ。何回でも、いけばいいでしょう」
 そうだった。ここは、学校じゃない。他の子も、他の先生もいないし、チャイムだって鳴らない。大きな声だって、出していい。
 先生は、そこに指を押し付けるように、ゆっくり撫でる。
「あっ、あっ、気持ちいい。先生、指、いれて」
 初めから、指を深く挿し込んでくれる。大好き。 気持ちいい。 
 空いてる左手で、私の左の胸に触れる。先生の手のひらで、心臓の音を、確かめるみたいに。
「これなら、くすぐったくない?」
「へいき……」
 先生の手が動くのが分かるくらい、心臓、どきどきしている。私は上を向いて、先生を見る。先生の顔が近づいて、また、キスをする。
「ん、ん、んぅ……」
 喉が鳴る。先生の指は私の中をかき回し、左手は、いつの間にか固くなった、胸の先をやさしく撫でる。
 唇が、離れる。
「ねぇ、おっぱい、気持ちいいんじゃないですか」
 そう。くすぐったさは、もうない。 
「あそこが……すごく、いいから。 胸は、わかんない」
「そう? 反対側も、してあげましょうね」
 根元まで入ってる指を、抜く。先生の指、私のせいで、濡れて光ってる。
 その指で、今度は右の胸に、触れる。
「あっ、あん」
 にゅるにゅるの指、気持ちいい。発情期の、猫の声になる。
「かわいい。最高」
 右手をまた、あそこに入れて。濡らしてから、胸へ。
「あっ、あっ、先生、胸、だめ」
「だめじゃないでしょ。嘘吐きは、きらいよ」
「ごめんなさい、きもちいの」
 嘘じゃないよ。気持ち良くて、だめなの。
「気持ちいいの? 猫ちゃん」
 私は、何度も頷く。そして、お願いする。
「せんせい、さわって。また、にゅるにゅるにして、むね、さわって」
「お利口さん」
 先生は、また私と向き合って、今度は胸を、ぺろりと舐めた。
 何度も何度も、固くなった先を、長い舌で、舐める。 私はもう、動悸がすごくて、息も、苦しい。
「んっ。あっ。ベロ、えっち……」
 今度は、そこを、やさしく噛む。これ、完全に、好き。
「せんせい、せんせい、気持ちいい。かむの、すき。 ああっ」
「わかりますよ。とっても、気持ち良さそうだもの」
 先生は、いつも冷静。だけどそれさえも、すっごく興奮する。 
 今度は左手の指を、私の中に入れてくれる。簡単に、奥まで飲み込んでしまう。
「いい。もう、いきたいよ」
「もう、いってるでしょう。いってる、って言いなさい」
「あっ、ああっ、んっ」
 先生、言う事聞けなくて、ごめんなさい。


 髪を、撫でてくれる。やさしい先生。
 髪を撫でて、私のうなじに、キスを。
「お利口さん。でも、ちゃんと、いってるって、聞かせてほしかった」
「次は、言います……」
 気持ち良くて、ぐったりする。ちゃんとベッドの上でするのって、体力いるんだね。知らなかった。
「先生。気持ちいいの、ありがとう……」
「どういたしまして」
「シーツは、汚しちゃったかも。ごめんなさい」
 先生は、私を座らせて、おでこにキスをする。
「折角だから、洗わないでおきましょうか。記念に」
「だ、だめ! くさくなっちゃうでしょ。明日、洗って」
 大好きな、先生。先生が笑うと、幸せ。意地悪な時も、後から考えたら、幸せなのかも。私は、正面から先生に抱き付く。
「お腹、空いたでしょう」
 忘れてた。えっちな事ばっかりで。
「もう、ぺこぺこの山、越えたかも。そんなに、空いてない」
「そう。じゃあ、明日の朝にたっぷり食べましょう。今夜は、このまま休みましょうか」
 そう言って、先生はまたキスをする。今度はおでこじゃなく、唇に。
「先生、口でキスすると、また……」
「したくなっちゃうの? お猿さんね」
「猿じゃなくて、猫にして。猿は、なんか、いや」
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