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第1章ー秋ー
あなたとの出会い
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9月、少し肌寒い季節になり、日下部奏多はいつもの珈琲屋に向かった。
「いらっしゃいませ、こんにちは奏多君今日もいつものかい?」
「はい、いつものコーヒーお願いします」
そう言って奏多はカウンター席に座った。コーヒーを飲み、ふと外を見ようと窓のほうに視線を向けるとそこには椿先生の姿があった。
え?!椿先生どうしてこんな所に!これはチャンスだ!声を掛けろ自分!勇気を出せ!
そして勢いよくたった瞬間、手に持っていたコーヒーをこぼしてしまった。
「うわぁ?!」
パニックになり店員さんに謝りながら急いで床にこぼれたコーヒーを拭いていると後ろから声をかけられた。
「大丈夫?」
振り向くとそこにはハンカチを差し出す洋平の姿があった。
「あ、ありがとうございます」
「服にもかかってるよ」
言われて自分の服を見てみると、胸の辺りにコーヒーがかっていると気付いた。
「あ、あの、このハンカチ洗って返すので…」
「ハンカチは返さなくていいよ。君にあげる。じゃあね」
そう言って洋平はお店をでて駅の方へ歩いていった。
彼と出会ったのは、木の葉が徐々に色鮮やかになり始めた9月頃。外にいるには少し肌寒く、奏多は授業のある教室へ向かった。部屋に入ると講師の川凪先生だけではなく、かきあげ前髪で落ち着いた雰囲気が特徴の30代くらいの先生がいた。
「今日から、川凪先生の助手として授業を一緒にしていきます、椿洋平と言います。どうぞ宜しく。」
どこか優しいけどミステリアスな雰囲気に惹かれ、奏多は一瞬で恋に落ちた。
授業中、奏多はずっと洋平に見惚れていた。
かっこいいな、何歳なんだろう?結婚してるのかな?
なんて事を考えているといつの間にか授業が終わっていた。その日から奏多は洋平に少しでも覚えて貰えるように積極的に授業に参加するようになった。
家に帰った奏多は服を脱ぎ、急いでハンカチを洗濯機にかけた。
あー、かっこ悪いな、、やっぱり覚えてくれてないよな……そんなことよりハンカチどうしよう……
そんなことを考えているとピーと洗濯機が鳴った。
数日後、人通りがないベンチで缶コーヒー片手に座っている洋平を見つける。奏多は洋平に近付き声をかけた。
「あの…椿先生」
「どうしたんだい?」
「この間はありがとうございました。これ、新しいハンカチです。どうぞ。」
奏多は緊張で顔が強ばってしまった。
「わざわざ新しいの買ってまでハンカチ返してくれなくても良かったのに。でも、ありがとう。」
洋平はハンカチを受け取った。
「君、名前は?」
「日下部奏多です。」
「俺を知ってるってことは心理学科かな?」
「は、はいそうです!」
「そっか、日下部くんね、覚えた。ハンカチありがとうね、じゃあ」
洋平は微笑んで歩いていった。
奏多は胸の高まりが収まらなかった。
やった!名前覚えてくれた…嬉しい、恥ずかしいけど、嬉しすぎる…
家に帰りご飯とお風呂を済ませてベッドに入った。奏多は洋平の言ってくれた言葉を頭の中で繰り返している内にに眠りについた。
次の日、奏多は駆け足で心理学科の授業に向かった。教室に入ると洋平先生の姿が見えた。呼吸が乱れ心臓がドクンドクンと波打った。
「おはようございます…」
「おはよう、日下部くん。」
「あの、椿先生…」
「ん?どうしたんだい?」
「先生の連絡先教えてください…嫌だったら全然断ってくれていいです!」
「いいけど俺と交換してもいい事ないよ笑…はいこれ」
そう言って洋平はノートの端を破り、連絡先を書いて奏多に渡した。
「ありがとうございます!」
やった!椿先生と連絡先交換してしまった…無くさないようにしっかりと保管しておこう…
「そういえば、今日は川凪先生はいないんですか?」
「あぁ、先生は他の大学に呼ばれててな、だから今日は俺が代わりに授業するんだ。」
「そうなんですね」
そう言って奏多は席に着いた。
今日は椿先生の授業…楽しみだなぁ…
奏多は期待に胸を膨らませて授業が始まるのを待った。
授業終了後、奏多は洋平に声をかけた。
「椿先生、もし良かったらあの珈琲屋行きませんか?」
「ごめんね、今日は友人と会う約束があるんだ」
「そう、ですよね、なんかすいません。それじゃあまた、」
「うん、またね」
奏多は重い足取りで大学を出た。気が付くと、無意識にいつもの珈琲屋に来てしまっていた。
あ、いつもの癖で来てしまった。まぁいっか、今日もコーヒーを飲んでいこう
「いらっしゃいま…奏多君じゃないか、今日もいつものかい?」
「いや、今日は違うのをお願いします」
いつものカウンター席に座った。いつも飲んでいるコーヒーより苦味が強くその苦味が心にじわじわと染み込んでいった。気分転換に本屋によっていたら家に帰ったのが22時を回っていた。
あ、そうだ、椿先生映画好きかな、映画誘ってみようかな…
『こんばんは、奏多です。聞きたいことがあるんですけど、椿先生は映画を観るのは好きですか?』
ドキドキしながら奏多はメールを送った。数時間後に洋平から返信が来た。
『こんばんは、映画観るの好きだよ』
やった!やっぱり誘おう。頑張れ自分!
『もし良かったら今度一緒に映画を観に行きませんか?』
わぁー送ってしまった。大丈夫かな、断られたらどうしよう。でも、何もしないよりはいいか…
結局、文を考えてから送ろうと決めて1時間も躊躇ってしまった。
しかし、そんな不安は洋平のたった一言の返信で一瞬で吹き飛んだ。
『いいよ』
「いらっしゃいませ、こんにちは奏多君今日もいつものかい?」
「はい、いつものコーヒーお願いします」
そう言って奏多はカウンター席に座った。コーヒーを飲み、ふと外を見ようと窓のほうに視線を向けるとそこには椿先生の姿があった。
え?!椿先生どうしてこんな所に!これはチャンスだ!声を掛けろ自分!勇気を出せ!
そして勢いよくたった瞬間、手に持っていたコーヒーをこぼしてしまった。
「うわぁ?!」
パニックになり店員さんに謝りながら急いで床にこぼれたコーヒーを拭いていると後ろから声をかけられた。
「大丈夫?」
振り向くとそこにはハンカチを差し出す洋平の姿があった。
「あ、ありがとうございます」
「服にもかかってるよ」
言われて自分の服を見てみると、胸の辺りにコーヒーがかっていると気付いた。
「あ、あの、このハンカチ洗って返すので…」
「ハンカチは返さなくていいよ。君にあげる。じゃあね」
そう言って洋平はお店をでて駅の方へ歩いていった。
彼と出会ったのは、木の葉が徐々に色鮮やかになり始めた9月頃。外にいるには少し肌寒く、奏多は授業のある教室へ向かった。部屋に入ると講師の川凪先生だけではなく、かきあげ前髪で落ち着いた雰囲気が特徴の30代くらいの先生がいた。
「今日から、川凪先生の助手として授業を一緒にしていきます、椿洋平と言います。どうぞ宜しく。」
どこか優しいけどミステリアスな雰囲気に惹かれ、奏多は一瞬で恋に落ちた。
授業中、奏多はずっと洋平に見惚れていた。
かっこいいな、何歳なんだろう?結婚してるのかな?
なんて事を考えているといつの間にか授業が終わっていた。その日から奏多は洋平に少しでも覚えて貰えるように積極的に授業に参加するようになった。
家に帰った奏多は服を脱ぎ、急いでハンカチを洗濯機にかけた。
あー、かっこ悪いな、、やっぱり覚えてくれてないよな……そんなことよりハンカチどうしよう……
そんなことを考えているとピーと洗濯機が鳴った。
数日後、人通りがないベンチで缶コーヒー片手に座っている洋平を見つける。奏多は洋平に近付き声をかけた。
「あの…椿先生」
「どうしたんだい?」
「この間はありがとうございました。これ、新しいハンカチです。どうぞ。」
奏多は緊張で顔が強ばってしまった。
「わざわざ新しいの買ってまでハンカチ返してくれなくても良かったのに。でも、ありがとう。」
洋平はハンカチを受け取った。
「君、名前は?」
「日下部奏多です。」
「俺を知ってるってことは心理学科かな?」
「は、はいそうです!」
「そっか、日下部くんね、覚えた。ハンカチありがとうね、じゃあ」
洋平は微笑んで歩いていった。
奏多は胸の高まりが収まらなかった。
やった!名前覚えてくれた…嬉しい、恥ずかしいけど、嬉しすぎる…
家に帰りご飯とお風呂を済ませてベッドに入った。奏多は洋平の言ってくれた言葉を頭の中で繰り返している内にに眠りについた。
次の日、奏多は駆け足で心理学科の授業に向かった。教室に入ると洋平先生の姿が見えた。呼吸が乱れ心臓がドクンドクンと波打った。
「おはようございます…」
「おはよう、日下部くん。」
「あの、椿先生…」
「ん?どうしたんだい?」
「先生の連絡先教えてください…嫌だったら全然断ってくれていいです!」
「いいけど俺と交換してもいい事ないよ笑…はいこれ」
そう言って洋平はノートの端を破り、連絡先を書いて奏多に渡した。
「ありがとうございます!」
やった!椿先生と連絡先交換してしまった…無くさないようにしっかりと保管しておこう…
「そういえば、今日は川凪先生はいないんですか?」
「あぁ、先生は他の大学に呼ばれててな、だから今日は俺が代わりに授業するんだ。」
「そうなんですね」
そう言って奏多は席に着いた。
今日は椿先生の授業…楽しみだなぁ…
奏多は期待に胸を膨らませて授業が始まるのを待った。
授業終了後、奏多は洋平に声をかけた。
「椿先生、もし良かったらあの珈琲屋行きませんか?」
「ごめんね、今日は友人と会う約束があるんだ」
「そう、ですよね、なんかすいません。それじゃあまた、」
「うん、またね」
奏多は重い足取りで大学を出た。気が付くと、無意識にいつもの珈琲屋に来てしまっていた。
あ、いつもの癖で来てしまった。まぁいっか、今日もコーヒーを飲んでいこう
「いらっしゃいま…奏多君じゃないか、今日もいつものかい?」
「いや、今日は違うのをお願いします」
いつものカウンター席に座った。いつも飲んでいるコーヒーより苦味が強くその苦味が心にじわじわと染み込んでいった。気分転換に本屋によっていたら家に帰ったのが22時を回っていた。
あ、そうだ、椿先生映画好きかな、映画誘ってみようかな…
『こんばんは、奏多です。聞きたいことがあるんですけど、椿先生は映画を観るのは好きですか?』
ドキドキしながら奏多はメールを送った。数時間後に洋平から返信が来た。
『こんばんは、映画観るの好きだよ』
やった!やっぱり誘おう。頑張れ自分!
『もし良かったら今度一緒に映画を観に行きませんか?』
わぁー送ってしまった。大丈夫かな、断られたらどうしよう。でも、何もしないよりはいいか…
結局、文を考えてから送ろうと決めて1時間も躊躇ってしまった。
しかし、そんな不安は洋平のたった一言の返信で一瞬で吹き飛んだ。
『いいよ』
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