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第3章 エイレン城への道
ニス湖畔、アルカット城⑥
しおりを挟むサフィラスとアラン様が食事を食べる姿を見守ってくれてからしばらくすると、熱もさがったのだろうか、ニゲルの身体も軽くなった。
その間、アラン様はとても気さくに話しかけてくれて、ニゲルはといえばすっかり打ち解けてしまった。
やっぱり城主というからには、慕われて人望も厚いのだろう。こんな自分にも優しくしてくれて、うれしさでいっぱいになる。
今も3人で廊下を歩いていると、すれちがう騎士や使用人の皆も、アラン様の事を心から信頼して尊敬している様子が伝わってくる。
「ニゲル。ここが台所だ。今夜は肉料理を出すがしっかり食べられそうか?」
「はい、だいじょうぶです」
今は大ホールを抜けてそのとなりにある台所までやってきたところだ。
広くて、数人の料理人がそれぞれに作業をしていたけど、城主の声にみんなが一斉にこちらをふり向いた。
「アラン様!どうされましたか!」
あわてて一人が前かけで手をふきながら側までとんでくる。
「ああ、すまんな。ニゲルに案内をしていてな!今日は遠慮なく肉を使ってくれ!この子にいいものを食わせてやりたいんだ」
「もちろんでございます!」
城主であるアラン様に肩を叩かれるニゲルににっこりとした笑顔を向け、その背の低い料理人は挨拶をしてくれた。
「私はここの台所の責任者、フィンです。どうぞよろしく」
愛想のいい笑顔に、ニゲルもおじぎをする。
「はじめまして、ニゲルです。今朝の煮込み、美味しかったです。ありがとうございました!」
「そうですか!よかったです。今晩も楽しみにしていてください」
「さあ、次は水際門に行くぞ」
ニゲルの肩を抱いたまま、アラン様はまた歩き始めた。
台所から明るい外に出ると、高い城壁にぐるっと囲まれた広い土地に、色々な建物がある事が分かった。
ななめ右前の方には、小さいけど教会のような建物が見えて、ほぼ真正面には城門、そして城門の左右には塔があってお城の警備をする人たちがうろうろしているのが見える。
向かって左側、建物に沿って水際門の方に歩いていると、ちょっと小高くなったところの上にとりわけ高い建物が立っていて、これまた騎士のような人たちが沢山うろうろしているのが見えた。
みんな体が大きくて、強そうだ…。
「こっちだ」
視線がそっちに張り付いていたニゲルは、アラン様の声で我に返ると、立派な馬のいる厩の横を通り、広くてゆるやかな階段を下りる。
目の前に湖が見えてきた。
「…わぁ。こんな風になってるんだ…」
湖面は陽の光にゆれ、きらきらと輝いて、広い水面はまるで大量の光の粉をまいたかのように見えた。
ないだ風にゆれる小さなさざなみも、どこまで続くのか。
なんと大きい湖なことか。
視界の端から端まで見ても終わりがどこかもわからない。
こんな光景はじめてだ。
「ニゲル。知っていたか?この湖には、水棲獣がいるんだ」
アラン様の指は、まっすぐに湖を指さしていた。
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