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第3章 エイレン城への道
ケレシー②
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サフィラスは疲れたようにため息をついた。
「ねぇ…サフィラスが幽閉されるって話だけど、どうにか出来ないの?」
「…それは、無理だ」
「どうして?だって、むちゃくちゃだよ…魔法が使えるからってだけで人を捕まえて…。それって差別だし、…人殺しだよ」
本当にこの国がそんなことを裏でやっているのかと思うと、恐ろしいとしか言いようがない。
「前に話したように、私や多くの魔法士は戦争の道具だった…。もちろん、やりたくてやったわけではないけれど、戦争だから、何の罪もない沢山の人を殺めた。とくに、魔法士を沢山育てた私は、誰よりも罪が重いと言える。だから戦犯扱いなのだ。国王からすでに刑の執行も言い渡されている。今更、逃げられるわけではない。…それに、逃げようとも思わない…どんな理由であれ、たくさんの人の人生をうばってしまったことに変わりはないんだ」
サフィラスの声はこんな暗闇の中でもニゲルの心に深くしみ込んだ。
「でもっ…一番悪いのはそれをやれって命令した人じゃないか!この国の王様が悪いんじゃないか!なんで自分の事は棚に上げて魔法士やサフィラスが悪いって決めつけるんだよ!おかしい!」
「仕方ない。今の王はあまりに若すぎて力がない。陰でアオガンたちがあやつっているのだ。私には、どうすることも出来ないのだよ」
アオガンはいったい何を考えているのだろう。うらみがあるとはいえ、魔法士を手あたり次第殺して何をしたいのか。
「ねえ、魔法士を消していって、アオガンは最後にはどうしたいんだろう…?」
他の国と戦争をして、お互いに殺しあって、そして、自分の国でもまだ殺し合いをしている。
そんなに争いばかりして行きつくところは、絶対不幸だ。みんなが戦争で怪我したり死んだり、食べるものがなくて飢えたり、そこまでして、そんな沢山のぎせいや苦しみと引き換えにしてまで手に入れたい物や、だれかからうばいたい物とはなんなのだろう。
そこまですることに何の意味があるのだろう。
どうして仲良くできないのだろう。
自分と違うからといって、排除するんじゃなく、その中でけんかはすることはあってもみんな仲良くできたら、きっと殺し合いや大きなあらそいなんかしなくなるのに。
「…さあ…どうしたいんだろうな…。私にも分からないよ。ただおだやかに笑いあって暮らせればいいものを、欲張りな人たちは自分にないものを持ってる人をねたんだり、人から何かを…欲しいものをうばわないと満足できないんだろうね」
「……満足…」
「そう。そうしてきりのない欲がいっぱいに満たされれば、国は豊かになって安泰、平和が来るとおもっているのさ」
「……そんなもの…だれが喜ぶんだ…」
この国に平和がもしも来ても、たくさんの人の、たくさんの魔法士のぎせいの上にその平和があると言うなら、それは本当の平和なんかじゃない。
そんな悲しみや苦しみの上にしか平和が作れないというなら、ニゲルはそんなものはいらないと思った。
「ねぇ…サフィラスが幽閉されるって話だけど、どうにか出来ないの?」
「…それは、無理だ」
「どうして?だって、むちゃくちゃだよ…魔法が使えるからってだけで人を捕まえて…。それって差別だし、…人殺しだよ」
本当にこの国がそんなことを裏でやっているのかと思うと、恐ろしいとしか言いようがない。
「前に話したように、私や多くの魔法士は戦争の道具だった…。もちろん、やりたくてやったわけではないけれど、戦争だから、何の罪もない沢山の人を殺めた。とくに、魔法士を沢山育てた私は、誰よりも罪が重いと言える。だから戦犯扱いなのだ。国王からすでに刑の執行も言い渡されている。今更、逃げられるわけではない。…それに、逃げようとも思わない…どんな理由であれ、たくさんの人の人生をうばってしまったことに変わりはないんだ」
サフィラスの声はこんな暗闇の中でもニゲルの心に深くしみ込んだ。
「でもっ…一番悪いのはそれをやれって命令した人じゃないか!この国の王様が悪いんじゃないか!なんで自分の事は棚に上げて魔法士やサフィラスが悪いって決めつけるんだよ!おかしい!」
「仕方ない。今の王はあまりに若すぎて力がない。陰でアオガンたちがあやつっているのだ。私には、どうすることも出来ないのだよ」
アオガンはいったい何を考えているのだろう。うらみがあるとはいえ、魔法士を手あたり次第殺して何をしたいのか。
「ねえ、魔法士を消していって、アオガンは最後にはどうしたいんだろう…?」
他の国と戦争をして、お互いに殺しあって、そして、自分の国でもまだ殺し合いをしている。
そんなに争いばかりして行きつくところは、絶対不幸だ。みんなが戦争で怪我したり死んだり、食べるものがなくて飢えたり、そこまでして、そんな沢山のぎせいや苦しみと引き換えにしてまで手に入れたい物や、だれかからうばいたい物とはなんなのだろう。
そこまですることに何の意味があるのだろう。
どうして仲良くできないのだろう。
自分と違うからといって、排除するんじゃなく、その中でけんかはすることはあってもみんな仲良くできたら、きっと殺し合いや大きなあらそいなんかしなくなるのに。
「…さあ…どうしたいんだろうな…。私にも分からないよ。ただおだやかに笑いあって暮らせればいいものを、欲張りな人たちは自分にないものを持ってる人をねたんだり、人から何かを…欲しいものをうばわないと満足できないんだろうね」
「……満足…」
「そう。そうしてきりのない欲がいっぱいに満たされれば、国は豊かになって安泰、平和が来るとおもっているのさ」
「……そんなもの…だれが喜ぶんだ…」
この国に平和がもしも来ても、たくさんの人の、たくさんの魔法士のぎせいの上にその平和があると言うなら、それは本当の平和なんかじゃない。
そんな悲しみや苦しみの上にしか平和が作れないというなら、ニゲルはそんなものはいらないと思った。
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