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1章〜ロレンと最弱女勇者
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しおりを挟む湖に着いた俺と彼女。
水辺に立ち、額を湖につけてる人に目をつけた。
赤いハチマキをし、柔道着のような服を着ている。
あの人だよな? 何をしてるんだ……
そう思って、俺と彼女は近づくと、彼は湖からザパーンと額を出したと思ったら叫びだした。
「うおおおおおお! 頭を冷やすぜーーーーーーーっ! ゴボゴボゴボゴボ」
こんな人教会に来たな。俺は確信した。
横では彼女が問う。
「あの……あなたがアツい勇者さんですか?」
声をかけずらそうに尋ねると、水につけてた額を上げ、急に話しかけられ、戸惑った様子で、彼女に顔を近づけ凝視する。
「あ、わたしは……枯れ枝より弱い勇者です。」
彼のアツさに一歩下がって、あははと言うような苦笑いを浮かべる。
「枯れ枝だって!? 俺の中の炎を、アツく燃え上がらせるすばらしい燃料になりそうだな! さては俺たち……相性バツグンなんじゃないか!? はっはっはっはっは!!」
暑苦しい人だ……きっと彼女も同じ事を思ってるだろう。
苦笑いを浮かべる彼女。
「あなたの『必殺技』で氷鏡の扉を破ったって本当ですか?」
本題に入る。
「氷鏡の扉だって!? ああ、破ったぜ! バリーンとな。いや、ジュワーだったか! ?」
「やっぱり! この人の必殺技ならあの扉が破れるんだね!」
やっと辿り着いた……これで魔王城の中に入れる。
俺をに輝いた目でみる彼女は嬉しそうだ。
「あの! あなたの『必殺技』でもう一度、氷鏡の扉を破ってもらえませんか!?」
「無理だぁっ!!」
その期待は裏切られた。
「どうして?」
問う。
「どうしてだって!? 俺はもうあの必殺技を使えねぇんだよぉぉぉ!! 『忘れちまった』んだぁぁぁぁ!!」
何を……言っているんだ?
「『忘れちまった』って……必殺技を!?」
と、彼女。
「そうなんだよぉぉぉ! 俺だって使いてぇのに! どうやってももう使えねぇ!! 必殺技の名前は覚えてるのに! 出し方が思い出せねぇ! いったいなんでなんだぁぁ!!」
「これって……どういうことなのかな? 自分の必殺技を『忘れちゃう』なんて……普通ないよね?」
その通りだ。勇者の唯一の武器である『必殺技』を……忘れた? 今まで戦えないと言ってきた勇者達もそう言う事なのか?
悔いているアツい勇者を横目にして、彼女に目を合わせる。
「……ああ。やっぱり勇者様たちにはなにか『事情』があるんだ。」
「……どうしよう。」
……
「あのっ! あなたの必殺技の名前は!?」
そうだ、教会にきた勇者の技なら一通り教わった。もしかしたら思い出せるかも。
「『灼熱斬り』だ。超高温の熱で敵を蒸発してしまう、それはそれですごい技なんだぜ!!」
灼熱斬り……
「あ! 思い出したれ それなら、俺が使える!」
今まで教わった必殺技の中でも、とても困難な技だ。感覚をつかむのに凄い時間がかかった。
「え? 灼熱斬りを使えるって!? もしかしてロレンくん……全部の勇者さんの『必殺技』を覚えてるの?」
「……ああ。強くなりたいと思って毎日練習して使えるようになったんだ。」
あの技が、一番役に立つ場面に出くわすなんて。
「す、すごい! すごすぎるよ、ロレンくん!!」
と、驚いていたのはもう1人いた。
「……お、お前っ! もしかしてあの時教会にいたボウズか!? やっぱり! そうだよな!? あの時のボウズが俺の必殺技を継承してくれていたなんて! うぉぉぉぉぉぉ!! 俺は今、モーレツに感動している!! 俺の技は、お前に託されたぁ! 頼んだぞぉぉぉぉぉーーーー!!!」
あ、暑苦しい……
とっととその場から離れ、俺たちは魔王城に向かう。
「氷鏡の扉……あの『必殺技』を使えば、本当に氷鏡の扉をとかせるのかな? ロレンくん。お願いね!」
「ああ。」
再び氷鏡の扉を前にした。
俺はその場から下がり、女勇者も、さらに数歩下がった。
剣を構える。
久しぶりに使うな、この技。思い出せ、あのときの感覚。
「必殺、灼熱斬りーー!!」
キーーーーーーーーン!
剣を振った。肌を撫でるものすごい熱風とともに、灼熱の炎がその扉を覆い尽くした。
ジュワーーー
入り口を覆ってた氷は、瞬く間に水蒸気となって跡形もなく消えていった。
『炎一閃斬り』より、圧倒的に威力はあった。たが、範囲は圧倒的に小さかった。
だが、高音のお陰か、熱が氷鏡の扉の全体に行き渡り、全てを溶かしてくれた。
「開いた……やったあっ! すごいよロレンくんっ!!」
「……ああ、やったな」
あの時の努力が報われるは、とても清々しい気分だ。
俺たちは喜び合った。
だが、笑みを浮かべた女勇者の表情はすぐに強張った。
「……いよいよだね。魔王城の中に入るよ。ううっ、緊張してきた。」
暗い階段を前にする。
なんだろ……この感じ。この階段を上った先からは大した気は無い。
「魔物の気配はするけど、そこまで強そうな感じはしない……今がチャンスかもしれないな。」
「そうなの? それじゃあ、入ってみよっか。」
警戒したように、ゆっくり階段を上がっていく。
階段を上がりきる寸前、ここからは暗くよく見えないが、かすかにそこには俺たちより若干小さく、体全体を布のようなもので覆い、その影から覗く赤い瞳の魔物が立っていた。
「あ、ホントだ! ロレンくんが言ってたとおり、あんまり強くない魔物がそこに……」
と、言いながら、安心した彼女は登り切り、それについて行った。
明るい視界に変わり、部屋を全貌した。
「嘘……だろ。」
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