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51.邪神の事情④
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『僕の正体に気付かれていたとしてもどうにでもなったさ。そうしたらレフィーと家族を即座に気絶させるつもりだった。意識を刈り取って魂を支配し、強制的に本誓約を受けさせていたよ』
(どの道、拒否権はなかったってことね……)
アマーリエは苦々しい思いで唇を噛む。フレイムが舌打ちした。
「そうだったな。お前はいざとなれば、最強クラスの神威で矛盾も真理も理屈もねじ伏せて力技で全てを思い通りにできる。だったら確実性や一貫性なんざ考えず、行き当たりばったりのフィーリングで好きに動くわな」
『そうだよ。僕が世界に合わせるのではない。世界が僕に合わせて僕のために回るのだよ』
ラミルファが小馬鹿にした顔で言う。自分の力に圧倒的な自信を持っている証だ。
『そもそも、いざという事態など訪れなかった。レフィーと父親は僕を怪しまず、寵を得られたことに感激するだけだったのだから。サード邸で母親にも会ったが、全く僕を疑っていなかった。唯一疑問を持っていた汚い姉も、悪神だとは予想していなかったようだし』
「愛し子の家が見たいとか吐かしてわざわざサード邸に来たのは、家族の反応を間近で確認するためか」
『ああ。無邪気に僕を運命神だと信じていて、滑稽だったよ。……本当はあの時に過去視ができれば良かったのだが。僕のことをどこまで分かっているか確かめるために、レフィーたちの心も読もうと思っていた。神威を極力使わないようにというのは天界での話で、地上は範囲に含まれていないから』
ラミルファの双眸が聖威師たちに向けられた。
『だが、星降の儀で少しばかり聖威師を揶揄ったから、主神たちが警戒した。抗議の神威を一斉に僕にぶつけて来たせいで、少々力が乱れてしまっていてね。第一目的であるレフィーとの本誓約はできたが、過去や心までは視通せなかった』
「自業自得だろ」
フレイムがじっとりとした眼差しで切り捨てた。
『ふふ、冷たいなぁ。僕の神威を強めて強引に力を安定させることはできたが、あの時は本誓約が成ったことで機嫌が良かった。だから、無理に今すぐ過去視や読心をしなくてもいいかと思ったのだよ。愛し子に会うという名目でまた後日降臨して、その時に視ればいいのだから』
「その後日ってのが今日なわけか」
『そうだよ。本誓約ができたことはめでたい。だが、レフィーと家族たちが、レフィーの姉を異様に無能扱いしていることへの疑問は解決していない』
そもそも、ラミルファが最初に違和感を抱いたのはその点だった。
『僕のことを欠片も怪しまず、普通の神だと信じ切っていることも、不自然といえば不自然だった。単に彼らが馬鹿なだけかもしれないが……もしも僕の神託を実行していなかったのが理由なら、何故実行しなかったのか確認するつもりだった。神の託宣に逆らったわけだから』
そこまで話し、少年の姿をした神はやれやれと肩を竦めた。ほっそりした指でフレイムを示す。
『そう思っていたのに、その前にいきなり君が乱入して来た。それで僕の正体がバレて、今こうなっているわけだ。色々と台無しじゃないか、君のせいだ』
「俺が悪いのかよ! バカ妹の周りを視てたんならアマーリエの側に俺がいたことも知ってただろ!?」
『ああ。だが、僕の生き餌を狙っているわけではないようだと分かってからは、あまり気にしていなかった。君は君で何か役目を持って動いているようだったし、僕の邪魔をしないなら良いかと思って無視していたのだが……その結果が今の状況だ』
これに関しては失敗したかな、と言った邪神は、不意に凶悪な嗤笑を浮かべた。
『さて。これが僕の経緯だ。次はそちらの番だよ。レフィーと家族たちは、やはり僕が悪神だと分かっていなかった。そして、僕の神託を実行していなかったのではなく、何と神託そのものを認知していなかったわけだ。……はてさて、これは一体どういうことだろう?』
(どの道、拒否権はなかったってことね……)
アマーリエは苦々しい思いで唇を噛む。フレイムが舌打ちした。
「そうだったな。お前はいざとなれば、最強クラスの神威で矛盾も真理も理屈もねじ伏せて力技で全てを思い通りにできる。だったら確実性や一貫性なんざ考えず、行き当たりばったりのフィーリングで好きに動くわな」
『そうだよ。僕が世界に合わせるのではない。世界が僕に合わせて僕のために回るのだよ』
ラミルファが小馬鹿にした顔で言う。自分の力に圧倒的な自信を持っている証だ。
『そもそも、いざという事態など訪れなかった。レフィーと父親は僕を怪しまず、寵を得られたことに感激するだけだったのだから。サード邸で母親にも会ったが、全く僕を疑っていなかった。唯一疑問を持っていた汚い姉も、悪神だとは予想していなかったようだし』
「愛し子の家が見たいとか吐かしてわざわざサード邸に来たのは、家族の反応を間近で確認するためか」
『ああ。無邪気に僕を運命神だと信じていて、滑稽だったよ。……本当はあの時に過去視ができれば良かったのだが。僕のことをどこまで分かっているか確かめるために、レフィーたちの心も読もうと思っていた。神威を極力使わないようにというのは天界での話で、地上は範囲に含まれていないから』
ラミルファの双眸が聖威師たちに向けられた。
『だが、星降の儀で少しばかり聖威師を揶揄ったから、主神たちが警戒した。抗議の神威を一斉に僕にぶつけて来たせいで、少々力が乱れてしまっていてね。第一目的であるレフィーとの本誓約はできたが、過去や心までは視通せなかった』
「自業自得だろ」
フレイムがじっとりとした眼差しで切り捨てた。
『ふふ、冷たいなぁ。僕の神威を強めて強引に力を安定させることはできたが、あの時は本誓約が成ったことで機嫌が良かった。だから、無理に今すぐ過去視や読心をしなくてもいいかと思ったのだよ。愛し子に会うという名目でまた後日降臨して、その時に視ればいいのだから』
「その後日ってのが今日なわけか」
『そうだよ。本誓約ができたことはめでたい。だが、レフィーと家族たちが、レフィーの姉を異様に無能扱いしていることへの疑問は解決していない』
そもそも、ラミルファが最初に違和感を抱いたのはその点だった。
『僕のことを欠片も怪しまず、普通の神だと信じ切っていることも、不自然といえば不自然だった。単に彼らが馬鹿なだけかもしれないが……もしも僕の神託を実行していなかったのが理由なら、何故実行しなかったのか確認するつもりだった。神の託宣に逆らったわけだから』
そこまで話し、少年の姿をした神はやれやれと肩を竦めた。ほっそりした指でフレイムを示す。
『そう思っていたのに、その前にいきなり君が乱入して来た。それで僕の正体がバレて、今こうなっているわけだ。色々と台無しじゃないか、君のせいだ』
「俺が悪いのかよ! バカ妹の周りを視てたんならアマーリエの側に俺がいたことも知ってただろ!?」
『ああ。だが、僕の生き餌を狙っているわけではないようだと分かってからは、あまり気にしていなかった。君は君で何か役目を持って動いているようだったし、僕の邪魔をしないなら良いかと思って無視していたのだが……その結果が今の状況だ』
これに関しては失敗したかな、と言った邪神は、不意に凶悪な嗤笑を浮かべた。
『さて。これが僕の経緯だ。次はそちらの番だよ。レフィーと家族たちは、やはり僕が悪神だと分かっていなかった。そして、僕の神託を実行していなかったのではなく、何と神託そのものを認知していなかったわけだ。……はてさて、これは一体どういうことだろう?』
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