81 / 89
77王都パルミス
しおりを挟む
王都パルミスはこの国バリアス王国の王都であり、人口60万を有し経済政治の中心点だった。
ヘンリーはじりょうの特産品の一つであるミュラーカボチャをより広範囲に売り込もうと王都にやってきたのである。すでに王都の中央卸売市場の仲買人とは商談を進め、とても良い感触で商談の第一段階は終わった。
ミュラーカボチャは他の種のカボチャより甘くてほっこりしていて煮物に最適だった。
仲買人も煮物やてんぷらにされたその味に大満足してくれ、あとはこのカボチャをどれだけおろせるかという話であったが、その話も成功に終わるだろう。
前祝いの一杯をしようと、貴族富裕商人御用達の紳士クラブに来たところである。
「いらっしゃいませ」
カウンターのウエイターが久しぶりに来たヘンリーに挨拶した。
「何になさいますか?」
「そうだな、ウイスキーをくれ、水割りでな」
「はい」
広々とした店内には6人くらいの客がいた。カウンターに向かって酒を飲むもの、あるいは上等なソファに腰をおろし、友人たちと談笑して酒を飲むものなどそれぞれだ。
その客たちの間に、この紳士クラブのママと女の子たちが客達と談笑していた。
むろんママはもちろんどの娘も容姿端麗なうえに政治から経済、あるいはスポーツや趣味にいたるまで客達と対等に話せる一流の接客係だった。
この店にはかつて国王陛下も王太子殿下もお忍びで訪れたことがあるという一流の店であることをじふしている店だった。
この店の客であるということは客にとってもステータスの象徴のひとつだったのだ。だが今日は客が少ないような気がする。
「今日は少し客が少なくないか?」
「はい、こんな時世ですから・・・・・子爵様がこの店に来て下さったのは3か月ぶりですか?」
「ああ、もうそうなるか、早いものだな。そういえば国王陛下は病にかかって床に伏してからまだご体調が悪いのか?ご回復された話は聞かないか?」
「それがですね」
ウエィターはそっとヘンリーの耳に顔を近づけて囁いた。
「だいぶ悪いらしいです」
「なっ!?その話は本当か?」
「本当です。俺の従妹は王宮の侍女をしていましてね、それも陛下付きの侍女をしているんです。」
「なっ・・・・・・・・・」
「それだけじゃなく王太子殿下も病にたおれて久しく…この国大丈夫でしょうかね、」
「・・・・・・・・・・・」
「明日にでもサンザ―帝国は攻めてこないでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・」
我ながらのんびりしすぎてたかもしれんと、冷たい汗がヘンリーの背中を流れた、その時だ。
「よぉ、ヘンリー!」
突然声をかけてきて肩に抱き着いてきたのは、王立学院時代の中の良かった古い友人フランシス・ロウリア伯爵だった。ほっとしたのもつかぬま、彼が耳元で囁いたのだ。
『かぼちゃの売り込みどころじゃないぞ、お前の息子危ないぞ』
「えっ」
「ひさしぶりだなぁ、こっちきて飲めよ。」
酒臭いフランシスは千鳥足でグイグイヘンリーを引っ張って、店の一番奥にある部屋のドアを開け、ソファにどかりと腰を下ろし対面のソファをすすめた。
何か文句言おうとしたヘンリーは、酒を口近くにもち、こちらを見据えるフランシスの目が全然酔ってないことに気付きはっとした。
ここは大型の観葉植物が二つ置かれて自分たちの姿がドアから見えないような作りになっていた。どうやらここで一人で飲んでたらしい。この私にきづいたのは店の娘に先に自分が来たらと頼んでいたのかもしれない。
「ヘンリーお前の息子アドラスが危ない、サンザー帝国皇帝と皇帝一族に狙われている!
理由はバリアス王家の血と首狩り、キンバリー侯爵の甥っ子であるということ、そして希少な上級光魔法の使い手という点だ。すぐに息子を他国に隠すんだ!
このままではサンザ―帝国の体のいい人質にされるぞ!
お前はしらないかもしれないが、今現在サンザー帝国には上級光魔法使いは一人もいないんだ。
何年か前まではいたんだがな、どうやら年で亡くなったらしい。だから今現在いない。
その穴埋めの意味もあり、お前の息子は格好の人質対象に選ばれたんだ。
捕まったが最後、宮殿か教会の奥深くに閉じ込められ、死ぬまで力をしぼりとられる毎日を送ることになるぞ!
息子一人では不安だろう、護衛をつけて他国に避難させ隠すんだ!時間はないぞ!
俺はこれでも王家の犬の一族の出だ、直系ではなく分家の出だが、三日前までサンザ―帝国を探っていたんだ、今日国に帰り着いて明日王宮に報告に行くんだがこのことは報告するつもりはない。
今の情勢では味方も信じられないからな。それでお前の息子だが皇帝と皇帝一族に狙われていることが分かったから、お前にこうして話したんだ。
これは極秘情報だ!お前とは学院で仲の良い友人だったし、学院は俺にとって光にあふれた唯一幸せな時代だった。だからおまえに話たんだ。
アドラスを他国にやりかくまうんだ。
いそげ!この国はいつサンザ―帝国がせめてきても不思議ではない情勢だ。
それからカボチャの明日の最後の売り込みは予定通りしておけ。おそらくお前の周りにはすでにサンザ―帝国の監視の目がついているだろう、奴らの目をごまかすためにも予定どおり行動するんだ。
いいな、ヘンリー!!」
<アドラスぅうう!!!!>
ヘンリーはじりょうの特産品の一つであるミュラーカボチャをより広範囲に売り込もうと王都にやってきたのである。すでに王都の中央卸売市場の仲買人とは商談を進め、とても良い感触で商談の第一段階は終わった。
ミュラーカボチャは他の種のカボチャより甘くてほっこりしていて煮物に最適だった。
仲買人も煮物やてんぷらにされたその味に大満足してくれ、あとはこのカボチャをどれだけおろせるかという話であったが、その話も成功に終わるだろう。
前祝いの一杯をしようと、貴族富裕商人御用達の紳士クラブに来たところである。
「いらっしゃいませ」
カウンターのウエイターが久しぶりに来たヘンリーに挨拶した。
「何になさいますか?」
「そうだな、ウイスキーをくれ、水割りでな」
「はい」
広々とした店内には6人くらいの客がいた。カウンターに向かって酒を飲むもの、あるいは上等なソファに腰をおろし、友人たちと談笑して酒を飲むものなどそれぞれだ。
その客たちの間に、この紳士クラブのママと女の子たちが客達と談笑していた。
むろんママはもちろんどの娘も容姿端麗なうえに政治から経済、あるいはスポーツや趣味にいたるまで客達と対等に話せる一流の接客係だった。
この店にはかつて国王陛下も王太子殿下もお忍びで訪れたことがあるという一流の店であることをじふしている店だった。
この店の客であるということは客にとってもステータスの象徴のひとつだったのだ。だが今日は客が少ないような気がする。
「今日は少し客が少なくないか?」
「はい、こんな時世ですから・・・・・子爵様がこの店に来て下さったのは3か月ぶりですか?」
「ああ、もうそうなるか、早いものだな。そういえば国王陛下は病にかかって床に伏してからまだご体調が悪いのか?ご回復された話は聞かないか?」
「それがですね」
ウエィターはそっとヘンリーの耳に顔を近づけて囁いた。
「だいぶ悪いらしいです」
「なっ!?その話は本当か?」
「本当です。俺の従妹は王宮の侍女をしていましてね、それも陛下付きの侍女をしているんです。」
「なっ・・・・・・・・・」
「それだけじゃなく王太子殿下も病にたおれて久しく…この国大丈夫でしょうかね、」
「・・・・・・・・・・・」
「明日にでもサンザ―帝国は攻めてこないでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・」
我ながらのんびりしすぎてたかもしれんと、冷たい汗がヘンリーの背中を流れた、その時だ。
「よぉ、ヘンリー!」
突然声をかけてきて肩に抱き着いてきたのは、王立学院時代の中の良かった古い友人フランシス・ロウリア伯爵だった。ほっとしたのもつかぬま、彼が耳元で囁いたのだ。
『かぼちゃの売り込みどころじゃないぞ、お前の息子危ないぞ』
「えっ」
「ひさしぶりだなぁ、こっちきて飲めよ。」
酒臭いフランシスは千鳥足でグイグイヘンリーを引っ張って、店の一番奥にある部屋のドアを開け、ソファにどかりと腰を下ろし対面のソファをすすめた。
何か文句言おうとしたヘンリーは、酒を口近くにもち、こちらを見据えるフランシスの目が全然酔ってないことに気付きはっとした。
ここは大型の観葉植物が二つ置かれて自分たちの姿がドアから見えないような作りになっていた。どうやらここで一人で飲んでたらしい。この私にきづいたのは店の娘に先に自分が来たらと頼んでいたのかもしれない。
「ヘンリーお前の息子アドラスが危ない、サンザー帝国皇帝と皇帝一族に狙われている!
理由はバリアス王家の血と首狩り、キンバリー侯爵の甥っ子であるということ、そして希少な上級光魔法の使い手という点だ。すぐに息子を他国に隠すんだ!
このままではサンザ―帝国の体のいい人質にされるぞ!
お前はしらないかもしれないが、今現在サンザー帝国には上級光魔法使いは一人もいないんだ。
何年か前まではいたんだがな、どうやら年で亡くなったらしい。だから今現在いない。
その穴埋めの意味もあり、お前の息子は格好の人質対象に選ばれたんだ。
捕まったが最後、宮殿か教会の奥深くに閉じ込められ、死ぬまで力をしぼりとられる毎日を送ることになるぞ!
息子一人では不安だろう、護衛をつけて他国に避難させ隠すんだ!時間はないぞ!
俺はこれでも王家の犬の一族の出だ、直系ではなく分家の出だが、三日前までサンザ―帝国を探っていたんだ、今日国に帰り着いて明日王宮に報告に行くんだがこのことは報告するつもりはない。
今の情勢では味方も信じられないからな。それでお前の息子だが皇帝と皇帝一族に狙われていることが分かったから、お前にこうして話したんだ。
これは極秘情報だ!お前とは学院で仲の良い友人だったし、学院は俺にとって光にあふれた唯一幸せな時代だった。だからおまえに話たんだ。
アドラスを他国にやりかくまうんだ。
いそげ!この国はいつサンザ―帝国がせめてきても不思議ではない情勢だ。
それからカボチャの明日の最後の売り込みは予定通りしておけ。おそらくお前の周りにはすでにサンザ―帝国の監視の目がついているだろう、奴らの目をごまかすためにも予定どおり行動するんだ。
いいな、ヘンリー!!」
<アドラスぅうう!!!!>
59
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
殺陣を極めたおっさん、異世界に行く。村娘を救う。自由に生きて幸せをつかむ
熊吉(モノカキグマ)
ファンタジー
こんなアラフォーになりたい。そんな思いで書き始めた作品です。
以下、あらすじとなります。
────────────────────────────────────────
令和の世に、[サムライ]と呼ばれた男がいた。
立花 源九郎。
[殺陣]のエキストラから主役へと上り詰め、主演作品を立て続けにヒットさせた男。
その名演は、三作目の主演作品の完成によって歴史に刻まれるはずだった。
しかし、流星のようにあらわれた男は、幻のように姿を消した。
撮影中の[事故]によって重傷を負い、役者生命を絶たれたのだ。
男は、[令和のサムライ]から1人の中年男性、田中 賢二へと戻り、交通警備員として細々と暮らしていた。
ささやかながらも、平穏な、小さな幸せも感じられる日々。
だが40歳の誕生日を迎えた日の夜、賢二は、想像もしなかった事態に巻き込まれ、再びその殺陣の技を振るうこととなる。
殺陣を極めたおっさんの異世界漫遊記、始まります!
※作者より
あらすじを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
熊吉(モノカキグマ)と申します。
本作は、カクヨムコン8への参加作品となります!
プロット未完成につき、更新も不定期となりますが、もし気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等、よろしくお願いいたします。
また、作者ツイッター[https://twitter.com/whbtcats]にて、製作状況、おススメの作品、思ったことなど、呟いております。
ぜひ、おいで下さいませ。
どうぞ、熊吉と本作とを、よろしくお願い申し上げます!
※作者他作品紹介・こちらは小説家になろう様、カクヨム様にて公開中です。
[メイド・ルーシェのノルトハーフェン公国中興記]
偶然公爵家のメイドとなった少女が主人公の、近世ヨーロッパ風の世界を舞台とした作品です。
戦乱渦巻く大陸に、少年公爵とメイドが挑みます。
[イリス=オリヴィエ戦記]
大国の思惑に翻弄される祖国の空を守るべく戦う1人のパイロットが、いかに戦争と向き合い、戦い、生きていくか。
濃厚なミリタリー成分と共に書き上げた、100万文字越えの大長編です。
もしよろしければ、お手に取っていただけると嬉しいです!
他人の人生押し付けられたけど自由に生きます
鳥類
ファンタジー
『辛い人生なんて冗談じゃ無いわ! 楽に生きたいの!』
開いた扉の向こうから聞こえた怒声、訳のわからないままに奪われた私のカード、そして押し付けられた黒いカード…。
よくわからないまま試練の多い人生を押し付けられた私が、うすらぼんやり残る前世の記憶とともに、それなりに努力しながら生きていく話。
※注意事項※
幼児虐待表現があります。ご不快に感じる方は開くのをおやめください。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。
武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。
人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】
前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。
そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。
そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。
様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。
村を出て冒険者となったその先は…。
※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。
よろしくお願いいたします。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる