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48邪神騒動(サンザー帝国の謀略)

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アドラスが、ミュラー領の屋敷に連れ戻された翌日から、雨がズーとこの1週間降り続いていた。
アドラスは決して雨が嫌いなわけではない。畑の作物を育てるためには雨は必要不可欠な存在だった、それに激しく振ったり、小雨気味にパラパラ降ったり、時に雨がやんで曇り空を見せるこの雨ならば、田畑に被害はそんなに出ないのではないかと思った。
この1週間、アドラスは父や祖父の命令されたとおり、じっと部屋にいてマナーや学問の勉強をしたり、部屋の中で剣や筋肉トレーニングの練習をしたり、魔力コントロールの練習をしたり、マリアに図書室から大量の本を持ってきてもらったのを、順繰りに読んだりして時間をつぶしていた。
だがそうしていても気になるのはエルベ領のこと、何の知らせもないということは、いまだ何も起こってないということかもしれぬと考えた。

「それにしても空が晴れないなあ」

アドラスがそう呟いているころ、同じくそう呟いている人間がエルベ領にいた。
「ああもういい加減うんざりする、一体いつになったら夜空が晴れるというのだ、満月まであと3日だというのに、ドラゴン召喚の儀には、どうしても月の満月の時に召喚するのが最もふさわしいというのに、」

ここはエルベ領ジュダークの町の宿の一室だった。
二人部屋のその一室にはベッド二つとテーブルに椅子が2脚置かれ、長椅子とローッカーも置かれていた。それにトイレとシャワー室がついていた。
その部屋に5人の魔導師が集合していた。
その中の一番年のいった髭をはやした老人は、サンザー帝国の邪神教の司祭だった。サンザー帝国においては邪神もまた神とあがめられていた。
そして邪神をも信仰するサンザー帝国に、バリアス王国の王も民も生理的忌避感と宗教上の非倫理観を抱いていたのだ。サンザー帝国が多神教であるのに対し、バリアス王国は一神教だった。そういう所も両国は相容れぬものがあったのだ。

「司祭ハンス様、そうはいってもこの天気は、このエルベ領のみならずミュラー領も覆いつくしています。人間は自然には勝てません」

「そうは言うがなヨハン、われらはサンザー帝国の皇帝陛下の命を受けて、このバリアス王国でテロを起こそうとしているのだ、今回邪神様のお力を借りてドラゴン召喚をなし、バリアス王国の辺境に大打撃を与えるのには、どうしても煌々と晴れ渡った満月の力が必要なのだ、ただの召喚の儀なら、満ちた月の力は必要ない。
それにただの召喚なら、5か所を焼き払う必要もない。空に我々魔導士5人で大召喚の召喚図を描くにはそれだけの犠牲が必要だったのだ。」

「幸いのところ我々の計画は漏れておりません、ただの空き屋火事だと思っているのです」

「バリアス王国の田舎領主などに、我々の遠大な計画がわかるわけがありません!司祭ハンス様」
と、彼らは絶対の自信を誇っていた。



エルベ領トーマス・エルベ男爵のもとには、エルベ領の騎士団長に副騎士団長、街の治安維持のための兵長達も集まっていた。

「それで」とエルベ男爵は返答を求めた。
「はっ、この町の宿という宿を調べましたところ、怪しき魔導士の集団を発見いたしました。
宿の主人の申すところ、彼らはすでに2か月以上宿に逗留し、この1週間は宿からろくにでてないということです。」と騎士団長が報告した。
トーマス・エルベ男爵は考え込む様子だった。
「奴らは時期を待ってる、そうだな、オースチン魔導士」

「はい、私自身考え付きもしませんでしたが、ミュラー領のアドラス様の考えはわたくしもあたっていると思います。そして召喚が行われる時期ですが、今度の満月の夜、時間は深夜と思われます。」

「何としてもドラゴン召喚を阻止するのだ!!そんなもの召喚されたら、わがエルベ領は終わってしまう。人的にもどれほどの犠牲者が出るかわからぬ。
それに被害がエルベ領だけで済むかどうかもわからぬ。
最悪王都が襲われることを考えねばならぬ。だとしたら我々の責任は重大だ!!
皆心を一つにしてこの危機を乗り切るのだ!!」

「「「おー!!!」」」




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