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12アドラスばあやに叱られる

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アドラス付きの侍女マリアは、アドラスの部屋にやってくると、元気よく南側のカーテンをシャッ
と開けた。
途端に差し込むまぶしい朝の光、


「うーん、おはようマリア」

「アドラス様朝ですよ、今朝は良い天気です」

アドラスはベッドから起き上がり目をごしごしこする。
あどらすは寝間着の子供用パジャマの上着の袖をめくり、子供用テーブルに置いてある
洗面器の水を救い上げジャブジャブと顔を洗い、タオルで顔をごしごし吹く。
すかさずマリアが水差しからコップに水を入れアドラスに差し出す。
アドラスはガラガラとうがいをして水おきに吐き出した。
マリアはアドラスの額に手をやり


「お熱はありませんね、結構です」


衣服に着替えさせられたアドラスは、いったん部屋から下がったマリアが食事をはこんでくる
のを待つ間、さて今日は火打石の実験をやるのに最高のお天気日和だと自然と笑いがもれた。

「ふふふふふ」

その姿は紛れもなく悪だくみしている子悪魔ちゃんのようであった。

「必要なもの水の入ったバケツ、そして乾いた草の葉、火打石、一応乾いた小枝。」

「うん?バケツってこの世界にあったか?そういや僕子供用おもちゃのバケツ持ってなかった。
 この世界にはない?だったら水桶だ、そういや前庭に湧水を利用したとうしゃま自慢の噴水が
あったな、小さい噴水だったけど噴水は噴水だととおしゃまふんぞり返ってたな。
よし、あの水を汲もう。
後は枯草を集め・・・・・・・・・・・・・・ふふふふふふ」

アドラスは悪だくみに夢中で、いつの間にかばあやが部屋に入ってきたことも気が付かなかった。
ばあやの部屋はアドラスの隣部屋で、部屋と部屋は間単に行き来できるようドア一つで続き部屋になっ
てるというのにだ。

「あ・ど・ら・す・さ・ま」

ばあやのその声はまさしく悪魔が地獄に来りて笛を吹くの笛の音のように、おどろおどろしくアドラスには
聞こえた。
おそるおそる振り返ったアドラスは、そこに腰に手を当て仁王立ちして怖い顔で自分をにらみ据える
ばあやの姿を発見した。

「ぴゃっつ」

と声を上げて、アドラスは飛び上がった。
ばあやはアドラスのその姿にますます怪しいと確信した。

「アドラス様、さぁばあやに全部おっしゃてください、いったい何を企んでるんですか?」

「たくらむなんて」

結局アドラスの抵抗はむなしくばあやに全部はかされた。
ばあやからたっぷりお叱りを受けたアドラス、子供の火遊びなどとんでもないと怒られたが、
それでもアドラスは拝み倒して、ようやくばあや立会いの下ならと許可をもらったのだ。

部屋で食事をとった後、アドラスは水桶を持ったばあやとともに、スキップして噴水のところま
で行く。
噴水で水を汲みばあやは少し離れたところにまでアドラスを連れていき、少し集めた枯草
に火打石を使って火をつけフーフーと火をおこして見せた。
それに乾いた小さな枯れ葉や、枯れ枝をおき火は小さな焚火に変わった。

「わーしゅごいしゅごい!!」


「アドラス様やってみますか?」

「やっていいの!?」

「大人が一緒にいて許可を得ればいいですよ。」

「わかった!!」

アドラスは枯草に一生懸命火打石で火をつけようとしたが、アドラスのおてては小さくて火打石を
打つのも大変だった。
それでもアドラスはあきらめず30分かかって枯草に火をつけたときは喜びに目が輝いた。
だがただ火打石で火をつけるという行為自体で、アドラスは額から汗が噴き出、腕はプルプルになり、火打石をつかむ手のひらはもう握力がほとんどなくなっていた。アドラスは幼児の自分の体の力のなさと、火打石で火をつけるという行為自体を侮りがたしと思った。

「アドラス様まだです!火が風で消えないように、火種の周りをばあやがやって見せたように手で
覆って、・・・・ふーふーして、はい!
枯葉をかけてその上に枯れ枝を置いて、そうですアドラス様、息を下からフーフー吹きかけて、そうです、

初めてにしては上手ですよ」


アドラスは生まれて初めて火おこしすることに成功した。
30分以上かかってしまったが、何とも言えない達成感が沸き上がった。
火は小さな焚火ほどで燃えている。
だがこれ以上大きくなることにアドラスは怖さを感じて、ばあやの汲んだ桶の水をざばっつ
とかけて火を消した。ばあやは火が消えたことを確認して、自分が起こした小さな焚火はすでに火
が消えかかっていたが、残りの桶の水をかけて完全に火を消して見せた。


「火を使った後は必ず火を消すんです。今日は水を使いましたが、庶民の台所だったら灰を小さなシャベ
ルですくって火にかけて火を消します。」

「わかった、ばあや!!」


前世ではキャンプファイヤーで火をつけたのはチャッカマンだった。
火をつける一つにしても地球文明との大きな差を感じ、
この差何とかならないかなと考えるのだった。
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