異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜

文字の大きさ
上 下
33 / 48
2章 学園編

27話「剥がれ落ちる闇」

しおりを挟む
「あれ?月影は?」

 俺はハーマンドに尋ねるが、ハーマンドも月影が居ないことに今気付いたらしく首を傾げた。

「月影君ならさっき、えらく険しい顔でどっかに行っちゃったよ。」

 教えてくれたのはペンタさんだった。

 険しい顔?何かあったのかな?

 俺が怪訝な表情を浮かべる中、急にグウ。と音が鳴る。

「す、すまぬ。私の腹だ。」

 どうやらハーマンドのお腹が鳴ったようだ。

 そういえば、お腹の空く時間だ。

 丁度俺もお腹が空いていて、月影とハーマンドを誘おうと思っていた所だった。

「謝ることないよ。俺も腹が空いてるし、ご飯でも食べにいこうか。月影には悪いけどな。  あっ、ペンタさんとゴンさんもご一緒にどうです?兄から聞いたのですが、海沿いと言う事もあり魚介が物凄く美味しいらしいですよ。」

 そういって笑顔で誘う俺に対し、申し訳なさそうにするペンタさん。

「気持ちは嬉しいけど、僕達は魚介を食べれる程のお金は持ち合わせてないんだ。買うとしたら旅に持ち運べる干物系を買っとかないと。」

 そうか。ドンパさんに援助してもらっているって聞いていたのに、無神経な事を言ってしまった。

「大丈夫ですよ。お題は僕達で払いますから。」

 俺がそう言うとハーマンドは目をギョッと見開く。

「私もか!?」

 問いに対して即答する。

「ダメなの?」

 あたかも当然のように。真剣な眼差しで。

「い、いや。そんなわけないだろう。」

 俺の勝ちだ。

「いいよ、いいよ!そんな事。僕達は僕達で食べるからさ。行っておいで。」

 俺達がそう言うのを気遣って遠慮するペンタさんとゴンさんだが、それを強引に俺は手を取り引き連れた。

「ちょ、ちょっと。アル君!?」

〇〇〇〇

「わぁ。本当にいいの?」

 料理が食卓の上に並べられ、それを見てペンタさんとゴンさんは目を輝かせる。

「全然。出会ったのも何かの縁だし、どうぞどうぞ。」

「ありがとう。けど、年下の君に奢ってもらうなんて本当、申し訳ないね。こんど御礼は必ずするからね。」

「すまないね。」

「いいですよ。そんなことよりどうぞ。」

 俺は笑顔で食を進めた。

 因みに、並べられた料理なのだが、味噌汁やお刺身、焼き魚などの、日本を思い出すような料理だった。

 それに箸が置かれていた事に衝撃をうけた。

 今までナイフやフォーク、スプーンで生活していた為、余りの久しぶりの感覚に感動した。

 俺は直ぐに箸を取りお刺身を挟むとハーマンドとペンタさん達が「おぉ!」と感動した。

 確かにこっちで箸を見たのは初めてだ。この地域だけの物なのだろうか?皆使い方が分からないといった感じだ。

 だから俺は皆に使い方を教えると、皆は楽しみながら舌鼓をうつのだった。

 因みに、ハーマンドだけは箸が最後まで上手に扱うことが出来なかった。

「何故箸がクロスに!!?くっ! ぬぅぁ!ぬおー!!ツッタ!攣った!」

 「すみませーん!フォークありませんか?」


〇〇〇〇

「あぁー、美味しかったよぉ。こんなまともなご飯を食べたのは久しぶりだよ。」

 「それは良かったです。で、今回ペンタさんとゴンさんに話も聞きたくてお誘いしたんです。」

「何だい?ワシらで教えれる事があれば教えるが。」

 この言葉で4人の空気がガラッと変わる。

「昨日、灰色魔石は灰色の砂で作るって言ってましたが、ずっと引っかかるものがあって、さっき思いだしたんです。魔石の原料は宝石ではないんですね。」

 そうだ。俺が引っかかったのは、魔法石は宝石を利用して作るとベルについ先日教えてもらっていたからだ。

 「確か一般的な作り方は、宝石を魔法陣の上に置いて、その系統に合わせて魔力を注入するって聞いたんたんですが。」

 それに最近の俺は図書館に行く事が多くなり、何かとニアとベルに勉強を教えてもらっているのだ。

「おぉ。その事か。確かに魔法石は大体、鉱山で取れる宝石で作るんだが、ワシ達のもう無き故郷レッタ町ではそれとは違い、先祖が砂さえあれば魔石を生み出す巨大な魔法陣を作りあげたんだよ。それを代々ワシ達が受け継いでいるんだ。」

「その技術のおかげで町は結構裕福で賑わってたんだよ。あの頃が懐かしいよ。」

 そういって少し寂しそうな表情を浮かべる2人。

 特殊な技術という訳か。そんな矢先に魔物襲撃。そしてドンパさんの勧誘。

 俺は少し考えると直ぐにピンと頭に何かが過ぎる。
 
「そういえば灰色の砂は何処で?」

「あぁ。それなら【帰らずの灰荒野】で取れるよ。」

 繋がった。 

  魔石についても引っかかってはいたが灰色の砂と聞いた時も何処かで聞いた覚えがあったんだ。

 最近クライス兄さんが【帰らずの灰荒野】で一悶着あった出来事を父さんに話していた。その場所は辺り一面灰色の砂だったと。

 恐らくクライス兄さんと戦った黒装束の男が灰色の砂をドンパさんの工場に運んでいたに違いない。

 後は原因不明の流行り病か。

 だけどこれはゴンさんも言っていた通り、灰色魔石を作りだすことが原因と言うのは間違いないだろう。

  後はその証拠となる物が欲しい所だな。

「アル。ソロソロ時間だぞ。」

 俺が考えこんでいるとハーマンドが時間を指し示す。

 気づけば2時間近くなっていた。

「いけない!直ぐに帰らないと。」

 急ぎ席を立ち会計を済ませた。

 勿論、旅に必要な食べ物は別で頼んでいたので最後に受け取り店を出た。


  俺達が元の場所に戻ると、月影がいた。

「おお、皆さんお揃いで。」

 いつもの様にニヘラとした表情で手を振る月影。

「何処いってたんだ?探したけど居なかったから先にご飯たべちゃったよ。」

「あちゃー。そら残念や。僕も食べたかったわぁ。」

 そんな時、バン!!と倉庫の扉が開かれドンパさんが現れる。

「おい!急用ができた。急ぎで帰るぞ。」
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう
ファンタジー
書籍1~8巻好評発売中!  コミカライズ連載中! コミックス1~3巻発売決定! ビッグバロッグ王国・大貴族エストレイヤ家次男の少年アシュト。 魔法適正『植物』という微妙でハズレな魔法属性で将軍一家に相応しくないとされ、両親から見放されてしまう。 そして、優秀な将軍の兄、将来を期待された魔法師の妹と比較され、将来を誓い合った幼馴染は兄の婚約者になってしまい……アシュトはもう家にいることができず、十八歳で未開の大地オーベルシュタインの領主になる。 一人、森で暮らそうとするアシュトの元に、希少な種族たちが次々と集まり、やがて大きな村となり……ハズレ属性と思われた『植物』魔法は、未開の地での生活には欠かせない魔法だった! これは、植物魔法師アシュトが、未開の地オーベルシュタインで仲間たちと共に過ごすスローライフ物語。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

神様がチートをくれたんだが、いやこれは流石にチートすぎんだろ...

自称猫好き
ファンタジー
幼い頃に両親を無くし、ショックで引きこもっていた俺、井上亮太は高校生になり覚悟をきめやり直そう!!そう思った矢先足元に魔法陣が「えっ、、、なにこれ」 意識がなくなり目覚めたら神様が土下座していた「すまんのぉー、少々不具合が起きてのぉ、其方を召喚させてしもたわい」 「大丈夫ですから頭を上げて下さい」 「じゃがのぅ、其方大事な両親も本当は私のせいで死んでしもうてのぉー、本当にすまない事をした。ゆるしてはくれぬだろうがぁ」「そんなのすぎた事です。それに今更どうにもなりませんし、頭を上げて下さい」 「なんて良い子なんじゃ。其方の両親の件も合わせて何か欲しいものとかは、あるかい?」欲しいものとかねぇ~。「いえ大丈夫ですよ。これを期に今からやり直そうと思います。頑張ります!」そして召喚されたらチートのなかのチートな能力が「いや、これはおかしいだろぉよ...」 初めて書きます!作者です。自分は、語学が苦手でところどころ変になってたりするかもしれないですけどそのときは教えてくれたら嬉しいです!アドバイスもどんどん下さい。気分しだいの更新ですが優しく見守ってください。これから頑張ります!

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...