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2章 学園編

14話「召喚!ネコとネズミ」

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「わぁ、いいなぁ。」

 ニアが風精霊のエメラに目を輝かせる。

 確かに、目がクリクリしていて可愛い。
 だが男なのか、女なのか、どっちか分からん。

 両性類?

 ハーマンドに聞こうかと思ったけど、次はヴィオラが召喚する様で、其方に意識が逸れた。


「じゃ‥私。‥ん」

 ヴィオラが魔方陣に魔力を流し込むと、ハーマンドと同じく煙が立ち上がると、これまた手の平サイズの、白くて丸いモケモケした生き物が出てきた。
 そのモケモケはフヨフヨと浮いていて、すごく眠たそうだ。

「‥ん。分かった。
 名前は‥」

 どうやら念話で喋っている様だ。
 どんな名前にするんだろう?



 ヴィオラがそう言うとそのモケモケはいい名前だと言わんばかりに踏ん反り返り鳴き声を発す。

「キュッ」

 嘘ぉん!!!? それでいいのかよぉ!!?

「わぁ!ヴィオラのも、すっごく可愛いねぇ!ねぇ!ベル。」

 ニアに引っ張られ、ベルは目を藻に向ける。

「キュ~Zz‥。」

藻は深い眠りについた。
それを見たベルはボソっと一言。

「可愛い」

「でしょ、でしょ~!?可愛いよねぇ。」

「はっ!! ちょ、ちょっとだけよ!ちょっとだけ!! ま、まぁそうね。まぁまぁ可愛い方なんじゃない。」

 ニアの一言で不意に我に帰ったのか、慌てて、また顔をフイっと背けた。

 素直になればいいのに。

「ジャイパール先生。これは何の精霊ですか?」

「そいつは光の精霊じゃの。 ちなみにじゃが、契約したのが精霊であれば、同じ系統の精霊でも種によって効果が違うから、どんな能力を持っておるかは分からん。 故、調べて行く必要がある。 
 また、契約したのが魔物であれば、その眷属ならいくらでも召喚できるのじゃ。
 後、覚えておくと良いのが、精霊も魔物も一匹につき、一人の契約者しか持てないという事も覚えておくように。 じゃから一度契約した精霊や魔物は一生涯、主らのパートナーとなるのじゃよ。」

 ふむ。一生涯のパートナーか。
 是非とも俺にも欲しいものだ。

 そんな話をしていると、ハーマンドとヴィオラの精霊が俺らの前からパッ、といなくなった。

 ハーマンドとヴィオラは、焦りだすが直ぐに、ジャイパール先生が教えてくれる。

「ほっほ。まだ召喚が慣れてない故、継続して召喚することはまだ難しいじゃろうて。  安心せい。召喚獣はこの世界ではない所におる存在じゃ、其処へ戻っただけじやよ。 」

「そうか。安心しました。けど召喚といのは、魔力がかなり消耗しますね。」

「ん‥。召喚中も、流れっ放し。」

「うむ。召喚獣は、繊細な魔力の管で繋がっておると考えるのじゃ。 じゃから始めは、思った以上に魔力が流れでてしまい管が乱れ、切れて仕舞うのじゃよ。
 慣れれば少量の魔力で維持する事が可能になるはずじゃ。」

 ふむふむ。魔力は流れっ放しか。
 これって、元々魔力の少ない人には向かない感じなのかもしれないな。

 入学してから今日知った事だけど、召喚学の選択授業は、Bクラスからしか無いのは、そう言った意味合いもあるのかもしれない。

  
「じゃぁ次は、私が行くねえ。」

ニアは、張り切るように魔方陣に魔力を流し込んだ。

そして現れたのは、両足でしっかりと立ち、ウルウルとした宝石のような瞳を持つ茶トラの猫だった。

「僕を呼んだのは、君かにゃ?」

「「「喋った!!」」」

 余りの驚きに、思わず皆んなでハモってしまった。

「わぁ!喋るんだぁ!そうだよ!私が呼んだの。 あっ、私はニアミス。ニアって呼んでね。」

 ニアは大喜びで、自己紹介する。

「ほうほう、だが僕は騎士にゃ。今から主人とにゃる者に、呼び捨てはいけにゃいのにゃ!ニニャ様と呼ぶにゃ。」

「二ニャ様?ニアだよ。」

 俺がつかさず訂正を求めると、猫はもう一度言い直す。

「ニャニャ!?そうにゃのか!?じゃ、じゃぁ、もう一度。に‥や‥二ニャ様!!」

「「「「‥‥‥」」」」

 沈黙が走る。

「もしかして、【あ】が発音できないの?」

「ニャ!?そんにゃ事ないにゃ!」

「じゃぁ言って。あ!」

 俺は真似をする様に【あ】の発音を出してみた。

「そんにゃの簡単にゃ。 ‥ニャ!!」

「「「‥‥」」」

「言えないじゃん!!」

「ニャに~!!僕にそんにゃ弱点がにゃったにゃんて!!」

「今、気づいたのかよ!因みにだけど【な】も言えてないから!」

 ガーンと落ち込む猫は、地面に膝をつけ、前足で地を叩く。
 そんな猫をニアが抱き上げる。

「そんなに落ち込まないで。充分可愛いんだから、問題ないよ。」

 ニアはニコっと笑い、猫を励ますと猫はウルウルとした瞳から涙を垂らす。

「にゃ、にゃんて、いい人にゃんだ!
 僕は一生涯、貴女ニャニャタにお使えしますにゃ。
 にゃを下さい。」

 ニアは、猫をまた地に下ろすと、暫く考えて、名を決めた。

「ブー吉。」

「にゃ?今‥にゃんと?」

「ブー吉。 嫌?」

 ニアは潤んだ瞳で猫を見つめる。
 猫は引きつった笑顔で、断ることなく頷いた。

 なんとも言えないネーミングセンスだこと。

 喋る魔物は珍しいそうで、召喚獣の世界でも位の高い存在なのだそうだ。

 そして次に移り、お次はベルだ。

 ベルは緊張しているのか、ゴクリと唾を飲み込むと、魔方陣に手を当てた。

 そして、でてきたのは、全身グレーで丸い耳、黒縁メガネに鋭い前歯。

「俺様を呼んだのは君かね?」

 そう、でてきたのは眉毛の濃いネズミだった。

 ベルはガーン!とばかりのリアクションで、ガックシと膝をついたと同時に、ニアのブー吉が奇声を発する。

「にやーー!!?」

 その声にネズミは反応し、ブー吉を見るなりネズミも奇声をあげる。

「ちゅぉーーー!!何故貴様がここにいる!?」

「お前こそにゃんで、でてきたにゃ!!」

「何?知り合いなの?」

 ニアが尋ねる。

「知り合いにゃいにゃにも、此奴は僕の天敵で、とても嫌にゃ奴にゃ!!」

「ふん!貴様がそう思っているだけだろう! そんな事より、おい!お前。
 俺様と契約したいのだろう?なら土下座しろ。そしたら契約してやってもかまわんぞ。」

「ほ~ら。嫌にゃ奴‥」ドカッ!!「えっ?」

 ブー吉が喋っているとネズミの方から物音がし、改めてネズミを見ると、何とベルがネズミを踏みつけている。

 「あんた。誰に何を言ってるの?」

「な、お、おおい!俺様はネズミの王‥」ドカッ!!「お、おい!」ゲシ!!「やめ‥」ゲシゲシ!!

 喋ろうとする度に、ネズミを踏みつけるベル。

 皆、余りのエゲツなさに、引きつった笑顔を見せる。

「いい?私の事は、ベルお姉様と呼びなさい。分かった?」

 ミシミシと踏む力を強めるベルに対し、ネズミは痛がりながらもコクコクと必死に頷き、開放されたのだった。

 ネズミはベルの前で片膝をつき、胸に手を当て、ベルを崇めるポーズを取る。

「べ、ベルお姉様。
 この俺、‥いや、私。一生涯、ベルお姉様に、お使えさせて頂きます。 どうかこの私目に名を下さいませ。」

「チョイ太。」

「チョ!‥な、なんか名前が変な気が‥」

「なに?気にくわないの?」

 ベルは凄い目つきでネズミを睨み付けると、ネズミは、静かに目線を下げる。

「い、‥いや何もありません。」

  女性陣3人のネーミングセンスは同等にかなり残念なものであった。


 よし、じゃぁ次は俺の番だ!

  俺は魔方陣に魔力を流し込んだ。


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