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しおりを挟む高く舞い上がったブーケをみんなが見上げている中で、
私はどうして自分がこの場にいるのかがまだ理解出来ずにいた。
*****
それは突然の連絡だった。
美沙子が結婚するという私達の年齢ではよくある話ではあったが
どうして自分の元にその連絡が来たのかはよく分からない。
はっきり言って私は美沙子が嫌いだったし、
彼女もきっと私の事を疎ましく思っていた事だろう。
それなのに何故?
結局、私は彼女に結婚式に出席する事にした。
自分でもどうしてそんな事をしてしまったのか、理解しがたい行動ではあるが
きっと知りたかったからなのだろう、美沙子が私を呼んだ理由を。
*****
「美沙子とは同じバレー部だったんですが…… 」
友人代表として由香里がスピーチしているのを聞きながら
私は昔の事を思い出していた。
あの、高校時代の事を……
私がバレー部に入ったのは好きだったからというのもあるが、
中学時代からやっていて、自分で言うのも何だが
そこそこバレーがうまかったからだった。
だから高校に入ってもバレーを続ける事にした私。
さすがに入ったばかりの時はいろいろと技術やら体力やらが足りずに
先輩たちの凄さを思い知ったが、それでも練習は楽しかった。
だから初めは気づかなかったのだ、自分が試合に出れない理由が。
初めは当然、自分の実力不足だとばかり思っていたし、実際そうだったんだろう。
でも流石に三年になっても出れないなんて事があるなんて思わなかった。
確かにメンバーには選ばれるのだが、試合には出場させてもらえない。
明らかに自分よりも劣る人達がコートの中でバレーをしている姿を私はただ
ぼんやりと見て過ごすというのが私の高校時代の思い出だった。
どうして自分が試合に出れない理由、それが美沙子だと分かった時は驚いた。
彼女はみんなから好かれている人気者で、私もその一人だったから。
だから美沙子が試合に出るメンバーを決めているなんて思いもしなかったのだ。
私はそれがどうしても信じられなかったが、彼女が
「あいつなんか嫌いなのよね。ちょっと他人よりできるからって調子乗ってる
のよね。中学の時エースアタッカーだったとか、そんな話されても知らない
ってのよ。試合中のあいつの顔みた? 笑っちゃった、必死なんだもん。
出れる訳ないのに必死にアップしてさ、出す訳ないじゃん私が」
そう陰口を叩いているの聞いてやっと理解したのだ。
*****
私の三年間を無駄にした女の結婚式に出ている私。
空高く舞うブーケがボールに見えた時、私はどうして自分がここに来たのかが
分かった気がした。
一体何度練習しただろうか?
左、右、左
両手で大きく後に振り、両足で地面を強く蹴って飛ぶ。
そうして私は飛んできたブーケを思いっきりスパイクして
美沙子の顔面に打ち返してた。
久々に感じるこの手の懐かしい痛みに
なくしていたものをやっと取り戻せたような気がして私は笑った。
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