知らないアナタ

菫川ヒイロ

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「それで、どうだった? 感想を聞こうじゃないか」


 上司に今日の出来事を報告した私はとりあえず聞いておきたい事があった。
 
 
「あの、フマロイド探偵はいつもああなのですか? 」


「ああ? まあ変わっているといえば変わっている人だよ彼は。基本的に捉えどこ
 ろがない人だからな。本心を見せるなんて事はないが、それでも信用のおける人
 ではあるよ」
 
 
 信用ねえ、正直彼を信用出来るという上司の言葉に私は首を傾げてしまうのだ。
 彼のとる行動は私の予想を超えて来るし、それが理解出来る訳もなく一日中
 振り回されっぱなしだった。だから今日はとても疲れた、早く帰りたい。
 
 
「そうですか」


「まあ、これも経験だ。明日からも頼むよ」


「はい」


 上司にそう言われてしまえば従わざるを得ない。そもそもは自分から言い出した
 事ではあったのだ。警察内でよく話に上がるフマロイド探偵の名前。彼の事件の
 解決率は100%だというのである。そんな人が居るのなら見てみたいし会って
 見たいと思うのは誰だってそうだろ? だから今日は楽しみにしていたのだ。
 
 
 でも実際に会ってみて思ったのは変人である。
 
 
 こんな事なら会わなければよかったと思うぐらい私の中で勝手に膨らんだ
 イメージとはまったく違った人だった。でも現場の人達は何も言わないし、彼の
 好きなようにさせていたのだから、あれがいつも通りの彼の行動なのだろう。
 だとしたらもう私には無理だ。彼と一緒に仕事は出来ない、方向性が違い過ぎる
 のだ。
 
 
「ただいま」


「おかえりなさい、あなた」


 家に帰れば優しい嫁が迎えてくれた。
 だからついつい愚痴を零してしまうのだ。
 
 
「聞いてくれよ、今日さフマロイド探偵に会ったんだ」


「よかったじゃない。あなたずっと会いたがっていたでしょ? 」


「それはそうなんだが、思っていたような人じゃなくてね。ちょっと変わっている
 というか何と言うか、ピエロの格好をして現場に来ていたんだ」
 
 
「ピエロ? なんで? 」


「さあ、それは分からないよ。でも誰もその事について何も聞かないから流石に
 聞けなかったよ。それがいつも通りって事なんだと思う。でもさやりにくいんだ
 よね、あんな格好でいろいろ話をされてもいまいち入って来なくて。ずっと考え
 ていたよ、アンタだろって。無いとは思うけど、アンタが犯人じゃないのかって
 ずっと言いたい気分だったんだ」
 
 
 そう、殺人現場にピエロがいたらそれはもうそいつが犯人だろ?
 犯人が犯人捜しをしているとか訳が分からないじゃないか。
 
 
「そうなんだ、とりあえずごはんにしましょう」


 嫁もどう反応していいのか分からないようで、無理やり会話を終わらせキッチン
 へと行ってしまった。流石に私もその行動を咎める訳もなく、現場から帰る時に
 フマロイド探偵が子供に手を振っている姿が何となく蘇ってきた。
 
 







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