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しおりを挟む私からすればこの女は倒すべき敵である。
だから警戒をしなくてはならない相手だから睨んでいたのに母親に止められた。
「止めなさい、見苦しい」
とは言え私はまだ諦めた訳ではない。
まだ私がお兄ちゃんと結婚出来ない訳ではないのだ、どうにかすればきっとまだ
結婚出来るのだ。だからそのチャンスを逃してはならないが、どうにも結婚式と
いうものはつまらなくて退屈だった。
「食べれるかい? 」
「ええ、大丈夫よ」
二人の会話を聞きながら、自分がお姉ちゃんなんだという事を思い出した。
そうだ、私はお姉ちゃんになるのだから頑張らなくてはならない。そう思い直し
て私は姿勢を正した。
新婦の××さんはこれが初恋で
まさか本当に結婚するなんて
おめでとうございます。
それでは私達から歌のプレゼントを
お父さん、お母さん
ちょっと待った!!!!!!
「あら、これはこれは。ナキ、起きなさい。これは見ておいた方がいいわ」
私は強制的に母親に起こされて、何事かと思ったら何だか知らない内に騒がしく
なっていた。
「ほら、私が言った通りだったでしょ? 」
何故かお兄ちゃんは走り去り、取り残された女が泣き喚いていた。
私は大人がこんなにも泣いているのを姿を初めて見てただただ気持ち悪いと思っ
てしまった。そして自分がこんな風になるなんてまっぴらごめんだと思ったのは
あまりにも不様でみすぼらしかったから。
そして弟にも教えてあげようと思ったのだ『初恋は叶わない』という事を。
*****
「ねえ、アンタどうやら死んだらしいわよ」
棺の中に入っている弟に教えてあげたが何も答えてくれなかった。
どうやら本当に死んでいるようだった。まあ見れば分かる事ではあったけれど
一応確認の為だ。もしかしたら生き返るかもしれないなんて淡い期待をしてみた
というだけの事だった。
どうやら集団リンチにあったらしい。
馬鹿みたいにヤンキーなんかに関わるからこういう事になる、群れないと何も
出来ないような欠陥品と弟とじゃあどちらが世界にとって必要な存在なのかなん
て分かりきっているというのに世界は弟を選ばなかった。
馬鹿げている。
謝罪なんてされたって喜ぶのは頭のおかしい法律家だけだというのに。バレバレ
なのだ、ただ自分が助かりたいというだけのことで本当に詫びる気持ちなんてな
いという事は、それでも詫びたという事で減軽されるらしい。ウケるよね。
こっちは別に謝られたい訳ではなく、弟を生き返らせて欲しいだけなのだ。
だから治療費をよこせと思う。弟を生き返らせるための治療費を払う、それが
まずお前達がするべき事で罪を購うってそういう事じゃないのか?
そんな事を考えていたら、なんだか受付の方が騒がしくなっていた。
弟の葬式で騒ぐとか一体どんな神経をしているのかと苛立っていた私が目にした
のは見覚えのある顔だった。弟と一緒に居るのを何度か見た事がある。
「全部、アンタの所為よ! ヨギがこんな事になったのはアンタの所為なのによく
もいけしゃあしゃあとやってこれたものねテーナ! 」
「何よ! 全ての元凶はアンタでしょうが! 私からヨギを奪っておいてよくそん
な事が言えるわね! 私の初恋だったのに、それをアンタが滅茶苦茶にしたんじゃ
ないシーラ! 」
「はあ? 私だって初恋だったわ! でもアンタの所為で終わったのよ! 」
嗚呼そういう事だったのかと、私は漸く納得出来た。
答えは簡単な事だったのだ。だから弟はこんな事になってしまったのだ。
結局はそう言う事だったのだ。
この子達は知らないからこんなにも醜態をさらして、弟の葬式の場で不様に泣き
喚いていているのである。だから教えてあげなければならない、それはあの子の
姉として私がすべき事なのだろうきっと。
「初恋は叶わない」って教えてあげないといけない。
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