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菫川ヒイロ

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お前しかいない

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 はっきり言って今回の私は大分、偉かったと思っている。
 あのポンコツ小暮をぶん殴らなかったのだから、
 あの渡辺千里も随分と優しくなったものだ。
 
 
 本当ならあんなのはさっさとボコボコにしてポイしてしまえば
 いいだけの簡単な話だったのに……
 鈴の為にわざわざ待ってあげる事にしたのだ。
 
 
 どんだけポンコツなんだよと思いながらも、
 そのおかげか、栄ちゃんに私の素晴らしさに気づかせたのには
 一ミリぐらいの価値があったのかもしれない。
 
 
 でも丸二日はさすがにやり過ぎだとは思っているが、
 まあちゃんと結果が出たのだから、やっぱり栄ちゃんには才能が
 あるって事なんだと思う。
 
 
「やれば出来るんじゃない! 」


 と私からも栄ちゃんに称賛を送っておいた。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 結果から言えば、栄ちゃんはこちら側の人間という事になるのだろう。
 私にとってこれは喜ぶべき事なんだと思う、思いたい、 
 だって、栄ちゃんが望んていた事なのだから、それが叶ったのなら
 私は喜ぶべきなのに、どうしてだろう、その事実がすごく苦しかった。
 
 
 今回、千里には私の為にいろいろと我慢してもらったけど、
 少し期待していてた面もあったのだ、暴れてくれないかなって。
 でも実際はちゃんと我慢してくれたので揉め事に成らずに済んだ。
 
 
 それはそれでよかったし、
 意外と義理堅い奴なんだと新しい一面を見せてもらったが、
 
 
「鈴にしてみればあっち側の方がいいとは思うよ、
 その方がいいパートナーとしてやって行ける訳だしね。
 挫折した分、こっちの事にも理解があるなんて最高じゃない?
 私達にとって最高の環境を与えてくれるはずよ。
 でも、こっち側に来てしまったら、そんな事はありえないから、
 お互いが妥協できなくなってしまって何処までも平行線。
 確かに高め合う事は出来るかもしれないけど、きっとそこまでで終わってしまう
 のよね。 言ってみれば、夫婦になるかセフレになるかみたいな感じよ」
 
 
 撮影が始まる前に虹子にそんな話を聞かされた私としては、
 滅茶苦茶な内容なのに、馬鹿みたいな話なのに
 やけに現実味があって、苦々しい。
 
 
 私にとって虹子は栄ちゃん以上の存在なのかもしれないと
 意識してしまった事は虹子には一生言うつもりはない。
 
 






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