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ヴぁんぱいあ
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しおりを挟む「嫌よ。どうして私が貴方と結婚しないといけないの? 」
そんな私の質問に彼は呆気にとられる。
「どうしてって……それは付き合って君と結婚したいと思ったからだよ」
きっと彼にとってはそれは当然の事だったのだろう。
でも私にはそれが当然では無かった。
「貴方、何か勘違いしていない? 私がいつ貴方と付き合ったというの? 」
「何を言って……俺達は付き合っていたじゃないか! 」
彼にしてみれば私達の関係は付き合っているという事になるのだそうだ。
でも私にしてみればただ搾取する対象でしかなかった。
ギブアンドテイク、ビジネスライクな関係性。
だから彼に対して私が特別な感情を持った事など一度もなかった。
勘違いをするような事があったかな? と私は思い返してみるが、
どれだけ記憶を穿り返した所でそんなものは存在しなかった。
「俺は君の全てを知っているんだぞ! 」
そんな嘘を堂々と言われても肝が据わっているなとしか思えない私だが、
まあアレだろうなと見当はついているのだ。
私がちゅちゅっとしている間、彼は夢の中でとても楽しい夢を見ていたという
だけの事なのだ。だから私には何の思い出もない。
「そう、それはよかったですね。で? だから何なの? それだけで私が貴方と
結婚しないといけない理由になるっていう訳? 」
「そうだけど! 」
強気で攻めて来る彼。
もう後戻りが出来なくなってしまったのだろうが、私にはそんな事は関係ない
事だった。彼のプライドなど知った事ではないし、寧ろ踏みつぶしてあげようと
さえ思った。
「だとしても嫌。貴方と結婚なんてする意味が分からないもの。
ねえ、もういいわよね? これ以上の会話なんて何の意味もないし、時間の無駄
だって事ぐらいもう気が付いているでしょ? じゃあね、私はもう帰るから」
「ちょっと待って」
店から出る私を追いかけて来る彼が犬とかなら可愛かったのかもしれないけど、
実際はそんな単純な生き物でもないから余計に気持ち悪かった。
この世界にこんな生き物は必要ないなと思った私は待たしていた男から日傘を
奪い取り彼の前にかざす。
「爆ぜろ」
そうして爆ぜた肉塊から私を守ってくれた日傘を再び男に持たせて私は歩き出す。
結構気に入っていた日傘だったがこれが最後だろう。一度ついてしまったシミは
取れないのだ。
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