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菫川ヒイロ

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少女abc

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 分かってはいた。
 もう誰も助からないのだろうという事は。
 それでも必死になっているのはみんなの想いがあったからではなく、
 ただ自分のエゴだった。
 
 
 『最後にオジサマに』
 
 
 それだけが私の原動力だったし、その想いさえあれば大丈夫だったのだ私は。
 そんな単純なものこそが一番力になるのだ。最後は結局純粋な想いが何よりも
 強く働くのだろう。
 
 
 この恋とも呼べないような片思い。
 それだけを頼りに私は屋敷に辿りついた。
 
 
「あらあら、こんな所で」


 開いたドアからはいつもは絶対に屋敷から出てこない人物が出て来た。
 屋敷の使用人は私を見る事なんてなくて、視線は別のものに向いている。
 
 
「まったく、面倒な事をしてくれましたね」


 そんな言葉を聞いても私はオジサマの事だけしか頭になかった。
 ただその事だけを考えていられた事は幸せな事だったのだろう。
 私の最後はそんな最後だった。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「おや、めずらしい。という事は失敗したのですか? 」


 映った相手を見て私は尋ねた。


「はい」


「そうですか。では新しい少女の補充をしてください。
 後始末もよろしくお願いします」
 
 
 いつもの様に命令を出す。
 
 
「それなのですが、アヴィのお陰でこの場所が知られたかもしれません」


「では、そこも処分してください」


 私はすぐに判断を下す。
 
 
「かしこまりました、オジ様」


 映像が消えると私はさっそく少女達の資料をシュレッターにかけた。
 もう必要ないものだからだ。私にとって少女達はただの駒でしかなく、決して
 特別な存在なんてものではない。使えなくなってしまえば新しいのを補充すれば
 いいだけのもの。
 
 
 名前も素性も紙切れ一枚で消えてしまうような彼女達は特別な存在なんてもの
 でもなく、何処にでもいるような、そんな個人を特定さえできない存在で、
 誰でもなかった。
 
 
 






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