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されど初恋
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しおりを挟む一目見た時に全てが決まってしまったていた。
だから目が合った瞬間にそうだとは思ったけれど、それをノーカウントにする事
に決めたのは自分ながらに英断だったと思った。何故ならば「初恋は叶わない」
って知っていたからだ。
叶わないと分かっているのであればこれが初恋でなければいいだけの話である。
だから細心の注意を払っていたし、どうすれば彼女と良好な関係を築いたままで
いられるのかを必死に考えていた。これが運命なのだとしたら抗うべきだとそう
思えるくらいに俺はテーナに運命を感じていたからこその行動である。
彼女との恋を成就させる為にはまず初恋を終わらせなければならない。
そしてそれが何よりも難しい問題であると悟っていたのは、俺が自分の立ち位置
を理解出来ていたからである。別に容姿が優れているという訳でもないし、だか
らと言って口が回るという訳でもないのだから人気者とは程遠い場所にいる自分。
そんな奴に好意を寄せるなんてもの好きがそうそう居る訳もない。
だいたい人を好きになるなんて事自体がそうそうないという根本的な問題にぶち
当たってしまった事に絶望しそうになっていた。このままどうにも出来ないまま
全てが通り過ぎてしまう、そんな未来が見えかけていた頃にそれは訪れた。
俺に好意を寄せているという女がやってきた。
こんなビックウェーブは今後やって来る事はないだろうから、当然乗るしかない
という判断を下したのは必然だったがこれで全てが上手くいくとそう考えていた
その時の自分に俺は文句を言うべきなのだろう。
プールに海に花火とそれなりの行事をこなしてしまったのは意外と楽しめていた
からなのか、本当はすぐにでも別れるはずだったのにそれでもずるずると引き伸
ばしてしまったのは今後の為だという言い訳が自分の中で成り立ってしまったか
らだろう。でもそんな理由づけなんてどうでもいいことだったのだ。
「テーナがアスラ達といたけどお前なにか知ってる? 」
それは俺にとって寝耳に水だった。
そもそもテーナがそんな糞ヤンキーと一緒に居るなんて事があり得るのか?
いいや、あり得ないはずだ。彼女がそんなゴミと一緒に居るなんて事がある訳が
ない。誰かと見間違えたのではないかとその時は聞き流したが、それが本当であ
るという事を知ったのは打ち上げ花火の帰り道だった。
俺が彼女を見間違えるはずもなく、それは確かにテーナだったのである。
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