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何回でも言ってやる
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しおりを挟む一体これで何度だっただろうか?
もうそんな事すらも思い出せないくらいにこの展開は経験してきた。
いつものように俺に許しを請うエリザノの姿にもはや何も感じはしなかった。
むしろその滑稽さに今までの自分が馬鹿らしくなって
だんだん怒りがこみあげて来るぐらいだった。
どうしてこんな女に俺には今まで執着していたのだろうか?
全てが分かってしまった今は彼女の全ての動きが偽物で気持ち悪く、
どうしようもなく腹立たしい。
「許して、コルトウ。もうしないわ。だから、ね。お願いよ? 」
この女の口から自分の名前が出るだけでも気持ち悪い!
そのドブのような腐った口で、今更、何を言った所で俺の気持ちは変わりは
しないのだ。
「駄目だ、お前とはもう婚約破棄だ! 」
「そんな、嘘よ! 貴方はそんな事を言うような人じゃない事を私は知っているわ。
だからお願い、これが最後よ! 」
そんなに媚びた目をしたって俺はもう惑わされたりはしない。
どうせ、その涙は嘘泣きなんだろ? 本当になんて女なんだ!
「いいや、駄目だ。もう、その手に乗らない。婚約破棄だ」
「ねえ、コルトウ」
「俺に触るな! 」
俺はエリザノが伸ばして来た手を払う。
その汚い手で俺に触れようとしてくるなんて、考えられない!
「もういい、この話は終わりだ! お前との婚約は破棄だ! 」
「嫌よ! 私は認めないからね! 」
「お前の意思など関係はない! いいか、何回でも言ってやる。婚約破棄だ! 」
俺はこうしてエリザノと婚約破棄をした。
*****
自分の部屋に帰って来た俺はタイを緩め、一息つく。
「ふう。これでやっと終わったよロランド。やはり君の言った通りだったよ」
「そうか、それは良かったね」
ロランドの返事はそっけない。
「ロランド、本当に君のおかげなんだ。ありがとう」
「おいおい、そんなにあらたまらないでくれよ。僕はすべき事をしただけ
なんだからさ」
ロランドのこの奥ゆかしさはあの女にも見習って欲しいものだな。
「ロランド、俺は君にお礼がしたいんだ! でも、俺には……」
「お礼だなんてそんな、いいよ僕は。君の笑顔が見れただけで、それだけで……」
嗚呼、ロランド。
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