恋愛(ショート)倉庫

菫川ヒイロ

文字の大きさ
上 下
363 / 383
何回でも言ってやる

しおりを挟む




 一体これで何度だっただろうか?
 もうそんな事すらも思い出せないくらいにこの展開は経験してきた。
 いつものように俺に許しを請うエリザノの姿にもはや何も感じはしなかった。
 
 
 むしろその滑稽さに今までの自分が馬鹿らしくなって
 だんだん怒りがこみあげて来るぐらいだった。
 
 
 どうしてこんな女に俺には今まで執着していたのだろうか?
 全てが分かってしまった今は彼女の全ての動きが偽物で気持ち悪く、
 どうしようもなく腹立たしい。
 
 
「許して、コルトウ。もうしないわ。だから、ね。お願いよ? 」


 この女の口から自分の名前が出るだけでも気持ち悪い!
 そのドブのような腐った口で、今更、何を言った所で俺の気持ちは変わりは
 しないのだ。
 
 
「駄目だ、お前とはもう婚約破棄だ! 」


「そんな、嘘よ! 貴方はそんな事を言うような人じゃない事を私は知っているわ。
 だからお願い、これが最後よ! 」
 
 
 そんなに媚びた目をしたって俺はもう惑わされたりはしない。
 どうせ、その涙は嘘泣きなんだろ? 本当になんて女なんだ!
 
 
「いいや、駄目だ。もう、その手に乗らない。婚約破棄だ」


「ねえ、コルトウ」


「俺に触るな! 」


 俺はエリザノが伸ばして来た手を払う。
 その汚い手で俺に触れようとしてくるなんて、考えられない!
 
 
「もういい、この話は終わりだ! お前との婚約は破棄だ! 」


「嫌よ! 私は認めないからね! 」


「お前の意思など関係はない! いいか、何回でも言ってやる。婚約破棄だ! 」


 俺はこうしてエリザノと婚約破棄をした。
 
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 自分の部屋に帰って来た俺はタイを緩め、一息つく。
 
 
「ふう。これでやっと終わったよロランド。やはり君の言った通りだったよ」


「そうか、それは良かったね」


 ロランドの返事はそっけない。
 
 
「ロランド、本当に君のおかげなんだ。ありがとう」


「おいおい、そんなにあらたまらないでくれよ。僕はすべき事をしただけ
 なんだからさ」
 
 
 ロランドのこの奥ゆかしさはあの女にも見習って欲しいものだな。
 
 
「ロランド、俺は君にお礼がしたいんだ! でも、俺には……」


「お礼だなんてそんな、いいよ僕は。君の笑顔が見れただけで、それだけで……」




 嗚呼、ロランド。
 
 
 
 
 だから俺はそんな君と一緒に居たいんだ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で…… 10/1追記 ※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。 ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。 また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。 きんもくせい 11/9追記 何一つ完結しておらず中途半端だとのご指摘を頂きましたので、連載表記に戻させていただきます。 紛らわしいことをしてしまい申し訳ありませんでした。 今後も自分のペースではありますが更新を続けていきますので、どうぞ宜しくお願い致します。 きんもくせい

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...