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別れ噺
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しおりを挟むロイにとってそれは望んではいなかった事だ。
だってこんな話を彼女にしないといけないなんて悲しすぎるから。
それでもそうせざるを得ないのはそれが決まりだったからだ。
「今日は君に伝えなければいけない事があるんだソニア。
いいかいソニア、よく聞いてくれよ。
僕との婚約を破棄して欲しいんだ。
嗚呼、分かっている。分かっているとも。突然こんな事を言われて君が
驚いてしまうのは仕方がない事さ。
でも、でもねソニア。僕は運命の相手と出会ってしまったんだ。
だから、僕はもう君とは一緒には居られない……
もちろん、もちろん君の気持ちも分かってはいるんだよ。
それでも、それでもなんだよソニア。
君との付き合いもそれなりに長いし、お互いの事はそれなりに分かっている
とは思うんだ。
当然、君だって僕の事を分かってくれている事は僕も分かっているよソニア。
君がいつも僕の事を気遣っていてくれた事も分かっているし、
君がとっても素敵な女性だという事も分かっている。
分かっている、分かっているんだ僕は。
君が何が好きで、何が嫌いだなんてもちろん知っているし、
僕の好き嫌いを君が理解してくれている事も知っている。
うんうんうん。
君と一緒に行った場所も全部覚えているし、いまでもしっかり思い出せる。
君と一緒に見た景色も、風も臭いも、何だって覚えているし思い出す事は
出来るんだよ僕は、僕はね。
君が何で笑ったのかだって覚えているし、君が怒った事だって。
君との思い出はとても素晴らしいものばりで、僕はいつも思うよ
なんて素晴らしいんだってね。
でもどうしてなんだろうね? どうしてなのかな?
これは一体どういう事なんだろうか?
こればかりは仕方の無い事だと思うんだ。
今までの感謝の気持ちも当然あるし、別に君が嫌いになった訳ではなくて
君以上に好きな人が出来た、そういう事なんだ。
だから分かって欲しいし、君なら分かってくれると思うんだよね僕は。
だってそうだろソニア、僕達はそうっだたじゃないか!
そうさ、そうなんだ! 僕達はそうなんだ!
分かりあえる、分かり合えるんだぞソニア!
僕達二人なら分かり合える! どんな困難だって乗り越えられる!
今までだってそうして来たじゃないか! 僕達はそうやって一つずつ、
時間はかかったけど乗り越えて来た!
暑い日も、寒い日も、そんなものになんて負けずにやって来たじゃないか!
いまさら何を恐れる事があるって言うんだ!
君は最高さ! 君が居れば僕だって最高になれる、僕達は最高なんだ!
そうさ、いつだって最高の二人になれる。
だから僕達は結婚すべきなんだ! 」
「え? 」
「え!? 」
どうしてこうなった? 僕は一体何を言っているんだろうか?
「結局どういう事なの? 結婚するって事? 」
僕は少しだけ考えて答える。
「はい、お願いします」
「こちらこそお願いします」
こうして僕達は結婚したのだった。
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