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菫川ヒイロ

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ライバル

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 私、グリアスには今、好きな人がいます。
 それはフルリラ伯爵。頭が良くて、外見もいいという、なんとも素晴らしい
 男性です。
 
 
 そんなフルリラ伯爵ですから、当然のようにみんなが好意を寄せています。
 その中には私の親友、マルフスも含まれておりました。
 
 
 みんなフルリラ伯爵に振り向いてもらおうと毎日、てんやわんやの大騒ぎ。
 そんな中で私達はどうにか抜け出すべく同盟を組みました。
 個人戦で挑む者たちを私達は二人で捻り潰す日々。
 
 
 一人、一人と数が減って行きそして最後に残ったのは私達二人。
 ここからはもう親友だとかは関係ありません!
 いかにしてフルリラ伯爵に振り向いてもらうのか、その為に私達は死力を尽くし
 ました。
 
 
 血反吐が出る程のその戦いは結局マルフスの勝利に終わり。
 そして彼女はフルリラ伯爵との婚約を勝ち取ったのです。
 
 
「ありがとうグリアス。貴女が相手じゃなかったら私、ここまでやる事は決して
 出来なかったわ」
 
 
 そう言って彼女が手を伸ばして来た時、私は自分がどうして敗北したのかが
 分かりました。だから、彼女の手をとって私は祝福したのです。
 
 
「おめでとう、マルフス」




 *****




 数日後、漸く傷も癒え、私は家でくつろいでおりました。
 
 
「グリアス、調子はどう? 」


 マルフスが突然やって来たのです。
 彼女とはあの日以来、少し気まずくて会っていなかったのですが、まさか彼女の
 方から会いに来てくれるとは思っていませんでした。
 
 
「この通り、もう復活したわ。大丈夫よ」


 私は軽く腕を動かしてみます。
 少し痛みはあるものの、この程度なら問題ありません。
 
 
「そう、それはよかったわ。それならまた貴女と戦える! 」


「!? 」


 彼女がどうしてまだ戦わないといけないのか、私には分かりません。
 彼女にはもうフルリラ伯爵という立派な相手がいるのですから。
 
 
「婚約破棄して来たわ! 」


「!! 」


 彼女の言葉に私は驚いて、言葉が出ませんでした。
 
 
「私、あの後考えたのよ。確かにフルリラ伯爵と婚約出来た事はとても嬉しかった
 けど、私にはそれ以上に貴女との戦いの日々が忘れられないの! ねえ、貴女も
 そうでしょ? 」
 
 
 彼女にそう言われて私はもう認めるしかありませんでした。
 確かにそうなんです! 彼女とのあの日々がとても充実していて、私はもう一度
 彼女と戦いたいと思ってしまった。
 
 
 だから私は彼女に手を伸ばす。
 
 
「さあ、次の婚約者候補を探しに行きましょう! 」


 私達の戦いは終わらない。
 
 
 私達はライバルなのだから。
 
 
 
 
 





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