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退院

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起き上がれるようになってからはパソコンで会長の仕事の手伝いをしながらリハビリすることになった。
会長はそんなことしなくてもいいと何度も言っていたけど、病院は暇で手持ち無沙汰で仕方ないのだ。

会長は毎日とはいかないまでも、1週間で3回以上はお見舞いに来てくれた。

始めの方こそ責任など感じなくて大丈夫だと帰ってもらおうとしたけれど、なかなか帰らない会長に諦める他なかった。
まぁ、会長と居られるって言うのだから嬉しいんだけど。

退院の日も会長が迎えに来てくれて一緒に学校に帰った。

「心配したんだよ! お見舞いの許可が下りなくて、お見舞い行けなくてごめんね」

教室に行くと和葉が申し訳なさそうにそう言ってくれた。

「ううん。許可なかなか下りないの知ってるから。心配してくれてありがとう」
「龍介の彼氏はなんて言ってた? 心配してたでしょう?」
「あー、実は……、別れたっていうか」
「え!?」
「その、いろいろあってさ。相手は俺のこと好きじゃなくなったんだ。だから別れた」
「あ……えっと。ごめん。僕知らなくて」

和葉が申し訳なさそうに謝ってくれた。

「いや、気にしないで。俺も報告遅れてごめん」

でも、会長と付き合ってたこと、誰にも言ってなくて本当に良かった。

「石平くん。ちょっといい?」

教室の入り口から元セフレの親衛隊員に呼ばれた。
会長と付き合ってる間は話しかけてすら来なかったのに……。
俺への興味がその頃ちょうど無くなったんだと思っていたけど、このタイミングで話しかけてくるってことは、俺と会長の関係を知っているのかな。

俺がその子のもとへ行くと、「ここじゃ人目が多いから……」と場所の移動をお願いされた。
うなずいて先を歩くその子の後を着いて行くと普段は鍵がかかっているはずの旧音楽室に着いた。

その子がドアを開けると中から手が伸びてきて俺の腕を掴んで力任せに引き入れられた。

「遅ぇぞ!」
「待ってたぜぇ」

ニタニタと笑う体格の大きい生徒が10人ほど集まっていた。

「君がいけないんだよ。僕は石平くんも、会長のことも好きだったのに! でも……君に何かあったら許さないって脅しをかけてきてた会長も、今は君の記憶を失ってるみたいだから。だからね、会長しか受け入れたことがない君を汚したらどんな気分かなって。いい気味だなってね。僕は、君たちのおかげで愛憎って感情を知ることができたよ……」

光を失ったような、ガラス玉のような目で笑う彼を怖く感じた。
俺の体を無数の厳つい腕が撫で回す。
ゾッとした。鳥肌が立って、今からされるだろう行為を想像して吐き気がした。
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