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ルカ・ギルバー視点

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腕の中でモゾモゾと快感に耐えるバトラルを静かに見つめ、ルカは内から溢れ出る嗜虐心を満たしていた。今までそんな気持ちになったこともないのに、バトラル相手にはどうしようもないほどの嗜虐心が溢れ出てくる。そして、その衝動をぶつけても、バトラルは嫌がりもしないし、怖がりもしない。むしろどこか期待したような濡れた眼差しを送っているように感じる。腕の中でビクビクと震え何度目かの絶頂をしたらしいバトラルと、目があってしまいルカが起きていたことがバレてしまったが、次の瞬間にはバトラルはわずかに目を見開いただけですぐに気を失った。

「バトラル……?」

さすがに虐めすぎてしまったのだろう。妊婦に無理をさせるものではないと分かってはいても、抵抗しないバトラルについやりすぎてしまった。バトラルからエネマグラを抜き取り、その小さな体を抱きしめる。不思議とバトラルは満足そうな、穏やかな表情で寝ている。ルカに好き放題されたのにだ。

「好きだ、バトラル。愛してる」

その言葉が好きなだけ言える立場になったということが幸せすぎた。

「はぁ、これから忙しくなるな」

戦争で功績を残せたことが、バトラルの夫の地位を手に入れられた大きな理由だが、結局は兄の所業で国が取り上げていたギルバー家の領地を取り仕切る者が必要なのだ。侯爵を引き継いでも、領地は取り上げられていたが、バトラルの夫になるのならばそれなりの収入が必要だろうと返された。
そもそも次男だったルカは侯爵を継ぐつもりも、領地を経営するつもりも全くなく、一生を一般の軍人として過ごすつもりだっただけに、勉強も込みで相当立て込むだろう。

トントントン

「入るぞ」

控えめなノックと共に入ってきたのはバトラルの1番目の夫、クライブだった。
ルカはシャツとズボンだけを素早く身につけ居住まいを正し礼をした。

「殿下」

クライブは呼びかけたルカを一瞥し、バトラルを見た。

「……ボロボロだが満足そうな寝顔だな。だがギルバー侯爵はピンピンしている」
「少々羽目を外しすぎてしまいました」
「……いや、バトラルにはそれくらいが良いのだろう。バトラルはそういうのが好きらしいからな。私やバイロンもバトラルの気持ちに添う努力はするが、私たちだけでは足りない部分を、ギルバー侯爵が満たしてやってほしい」
「は。ありがたきお言葉でございます」

クライブはルカの言葉を聞き、小さく頷き、それから2人掛けのソファに腰掛けた。
初夜の翌日にやってきて、ただ世間話をするつもりではないだろう。
ルカはバトラルが寝ている間に布団から出られないように布団で包み、クライブの座ったソファの向かいのソファに腰掛けた。

「ギルバー侯爵がバトラルの3人目の夫になるのはもちろん決定しているし、次の子はギルバー侯爵の子だ」
「はい」
「だが、バトラルはオメガの中でも優秀なために、高位貴族のアルファとの子を望む声が大きい。そこで、ルカの次の夫はボートルニアで一番大きな領地を誇り、国の防壁であるギースベルト辺境伯が押されている」
「ギースベルト辺境伯……、ですが彼はオメガ嫌いで有名では」

オメガ差別などなく、むしろ、オメガが優位なこの国では珍しく、ギースベルト辺境伯はオメガ嫌いで有名だ。辺境伯なため、皇都にはほとんど来ることがないため、存在も発言も知る人ぞ知る状態になっているが、そんな男が夫に加わるなど、ルカからしたら不安でしかない。

「ああ。ギースベルト辺境伯本人は、必要ないと突っぱねるだろうな。だが、ギースベルトには特に跡取りが必要だ。バイロンとの子を産み、ギルバー侯爵の子を孕んだあと、バトラルはギースベルト辺境伯との顔合わせとして2ヶ月間、ギースベルト辺境伯領へ滞在してもらうことに決まった」
「そんな……」

せっかく夫になれたというのに、しばらくしたら2ヶ月も、いや移動も含めれば3ヶ月から4ヶ月も離れなければならないのかと思うと、絶望だった。

「離れるのは辛いが、皇帝陛下の決定だ」
「……はい」
「先ほど決定してしまった内容だ。取り急ぎ、ギルバー侯爵に伝えておこうと思って来たんだ。せっかくの時間を邪魔してすまなかった。では失礼する」
「は。わざわざありがとうございました」
「ああ」

クライブが席を立ち、部屋から出ていくのをルカは複雑な気持ちで見送り、バトラルの眠るベットに戻った。

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