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ジョーダン視点 クライブ視点
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(ジョーダン視点)
「それではジョーダンさん。今日の薬を打ちましょうねぇ」
白衣の男がそう言って、嬉しそうに私の腕に注射の針を差し込む。様や殿などの敬称ではなく、平民のようにさん付けで呼ばれることに不快感はあるが、それでも、今や犯罪者に成り下がった私がさん付けで呼ばれているだけマシなのだろう。
「……ゃ、やめてください」
「こーら。だめですよ。抵抗したら。ジョーダンさんだって痛い思いをしたくはないでしょう?」
「っ、くそ。離せっ」
白衣の男は、兵士に押さえつけられ抵抗する私を優しく諭しながらも、呆れたような目で私を見下ろした。
「本当に困った人ですねぇ。そんなに嫌がられるとこちらも罪悪感が湧きますよ」
「なら!」
「でも、ジョーダンさんは犯罪者でしょう。しっかりと罪を償っていただかないと。良いですか? この研究は国のために役立つのですよ」
有無を言わせない態度ではあるが、被験者だからか体に傷ひとつ付かないほどに、丁寧に押さえつけられている。
だが、いくら表面を丁寧に扱われたところで、体の中に得体の知れない薬を入れられ、オメガ性に変えられてしまうかも知れないのだと思うと、気が狂いそうだった。
「おや。体に変化が起こっていそうですね。気分はどうですか?」
「……ぁつい……、あ、あついっ」
体の奥底から、熱い何かがわき起こり、下半身に集まっていく。今すぐに己の中心に触れて、その熱をおさめたいが、兵士に体を押さえつけられているために、ただ体をビクビクと跳ねさせることしかできない。
「ああ、擬似ヒートがうまくいっているようですね。オメガ性になるのに、この工程が必要なのではないかと論文があげられましてね。人間の構造に近い魔物を使った実験データだったのですが、って、そんなの興味ないですよね」
「ぁ……ぁ、興味、ない! ぁ、そんなことより、触らせて、くれ! 離せ、離して」
押さえつけられた手足の自由を取り戻そうとバタバタと動かす私を白衣の男はにっこりと笑って観察している。
「だめです。すみません。でも今拘束を解いてしまえば、あなたはご自分の体を傷つけてしまわれるかもしれませんから、申し訳ありませんが、明日まで拘束させていただきますね。兵士のみなさん、こちらのスライム製の縄を使ってジョーダンさんを拘束してください。これでしたら、どれだけ暴れても傷なんてつけずにしっかりと拘束できますから」
「なっ……、あ、お願いだ……、少しだけ……ほんの、少しで良いから」
私のそんな懇願の言葉など誰も聞くことはなく、いとも簡単にスライムで出来た縄で拘束されてしまい、その上、拘束した後は全員、牢屋の外に出て行ってしまった。
「それでは、明日の朝、もう一度同じ注射を打ちにきますので」
「なっ、い、嫌だ!! 一体いつまでっ」
体が疼いて仕方がない。それなのに、自分で慰めることもできない。体はどんどん火照っていくというのに、明日の朝また同じ注射を打たれると聞いて、私は絶望した。
明日だけじゃないのかも。もしかしたら、明後日もかも。それが、いつ終わるのかわかったものではない。そう怯える私を嘲笑うかのように、白衣の男も兵士たちも、無言で去っていった。
「ぁ……、いやだ、お願いだ……ぁあっ」
暗く冷たい牢屋の中に、自分の空い声だけが響いた。
ーー
(クライブ視点)
「ぅぁっ……ぁあっ、んん……ぁ」
暗い階段を降りた先、牢屋の並ぶ廊下を突き当たった場所に足を運んだ私の前では、すっかりと目から精気が消えたジョーダンが、口からよだれを流し、声をあげていた。
擬似ヒート薬を投与し始めてから1ヶ月。
ただ食事だけを与えられ、あとは縛られ放置される生活では、まともに自我を保つことはできなかったらしい。
「やぁ、久しぶりだね。あれから1ヶ月ほど経ったが……」
「ぁあ……んん……」
話しかけても少しもこちらを確認すらせず、ただただ声をあげるだけの彼は、もはや人形みたいなものだろう。
「君も分かるだろう。アルファは確かに嫉妬の感情は少ない。だが、その代わりに自分が決めたオメガに執着する。私やバイロンからバトラルを拐おうなんて……。まぁ、今の君にこんなことを言っても意味はないか」
「ぁ……ぁ……」
「ああ、そうだ。君に伝えないといけないことがあるんだったよ。ふふ。先ほどの検査の結果によって実験が終わったんだ。おめでとう。君はオメガ性になった。オメガ性は我が国ボートルニア帝国において優遇される。それが例え犯罪者だとしてもね。だから、今後絶対に極刑にはならないよ」
「ぅぁ……あ……ああ」
こちらが何を言ってるかなど、もはや理解などできないのだろう。
「まぁ、だが、この実験は成功とは言い難いね。ここまで人格が破壊されているようでは実用の道はまだまだ遠いだろう。だが、君のおかげで研究者たちには良い研究結果が得られただろう」
「はい殿下。今回の研究結果で、多くの課題が見つかりました。今回の実験はとても有意義なものでした。ジョーダンさん、ご協力感謝いたします」
研究者の男が、ジョーダンを見てにっこりと笑い、礼を言っても、やはりジョーダンはただ声を上げるのみで無反応だった。
「殿下、ジョーダンさんは今後どうなるのですか?」
「ああ、下位貴族に下げ渡す。転換オメガから生まれた子供の性別がどうなるかも今後役に立つ研究内容だろう。下げ渡し先の貴族達にはこちらから話を通しておくので、研究を続けてくれ」
「はっ」
研究者の男は、返事をすると、次の研究に向かって慌ただしく出て行った。
「さて、私はバトラルと昼食でも摂ろうかな」
愛しいバトラルを思い浮かべると、自然と口角が上がるのを抑えられない。
私はもはや人形と化したジョーダンを放置し、バトラルの元へ向かった。
「それではジョーダンさん。今日の薬を打ちましょうねぇ」
白衣の男がそう言って、嬉しそうに私の腕に注射の針を差し込む。様や殿などの敬称ではなく、平民のようにさん付けで呼ばれることに不快感はあるが、それでも、今や犯罪者に成り下がった私がさん付けで呼ばれているだけマシなのだろう。
「……ゃ、やめてください」
「こーら。だめですよ。抵抗したら。ジョーダンさんだって痛い思いをしたくはないでしょう?」
「っ、くそ。離せっ」
白衣の男は、兵士に押さえつけられ抵抗する私を優しく諭しながらも、呆れたような目で私を見下ろした。
「本当に困った人ですねぇ。そんなに嫌がられるとこちらも罪悪感が湧きますよ」
「なら!」
「でも、ジョーダンさんは犯罪者でしょう。しっかりと罪を償っていただかないと。良いですか? この研究は国のために役立つのですよ」
有無を言わせない態度ではあるが、被験者だからか体に傷ひとつ付かないほどに、丁寧に押さえつけられている。
だが、いくら表面を丁寧に扱われたところで、体の中に得体の知れない薬を入れられ、オメガ性に変えられてしまうかも知れないのだと思うと、気が狂いそうだった。
「おや。体に変化が起こっていそうですね。気分はどうですか?」
「……ぁつい……、あ、あついっ」
体の奥底から、熱い何かがわき起こり、下半身に集まっていく。今すぐに己の中心に触れて、その熱をおさめたいが、兵士に体を押さえつけられているために、ただ体をビクビクと跳ねさせることしかできない。
「ああ、擬似ヒートがうまくいっているようですね。オメガ性になるのに、この工程が必要なのではないかと論文があげられましてね。人間の構造に近い魔物を使った実験データだったのですが、って、そんなの興味ないですよね」
「ぁ……ぁ、興味、ない! ぁ、そんなことより、触らせて、くれ! 離せ、離して」
押さえつけられた手足の自由を取り戻そうとバタバタと動かす私を白衣の男はにっこりと笑って観察している。
「だめです。すみません。でも今拘束を解いてしまえば、あなたはご自分の体を傷つけてしまわれるかもしれませんから、申し訳ありませんが、明日まで拘束させていただきますね。兵士のみなさん、こちらのスライム製の縄を使ってジョーダンさんを拘束してください。これでしたら、どれだけ暴れても傷なんてつけずにしっかりと拘束できますから」
「なっ……、あ、お願いだ……、少しだけ……ほんの、少しで良いから」
私のそんな懇願の言葉など誰も聞くことはなく、いとも簡単にスライムで出来た縄で拘束されてしまい、その上、拘束した後は全員、牢屋の外に出て行ってしまった。
「それでは、明日の朝、もう一度同じ注射を打ちにきますので」
「なっ、い、嫌だ!! 一体いつまでっ」
体が疼いて仕方がない。それなのに、自分で慰めることもできない。体はどんどん火照っていくというのに、明日の朝また同じ注射を打たれると聞いて、私は絶望した。
明日だけじゃないのかも。もしかしたら、明後日もかも。それが、いつ終わるのかわかったものではない。そう怯える私を嘲笑うかのように、白衣の男も兵士たちも、無言で去っていった。
「ぁ……、いやだ、お願いだ……ぁあっ」
暗く冷たい牢屋の中に、自分の空い声だけが響いた。
ーー
(クライブ視点)
「ぅぁっ……ぁあっ、んん……ぁ」
暗い階段を降りた先、牢屋の並ぶ廊下を突き当たった場所に足を運んだ私の前では、すっかりと目から精気が消えたジョーダンが、口からよだれを流し、声をあげていた。
擬似ヒート薬を投与し始めてから1ヶ月。
ただ食事だけを与えられ、あとは縛られ放置される生活では、まともに自我を保つことはできなかったらしい。
「やぁ、久しぶりだね。あれから1ヶ月ほど経ったが……」
「ぁあ……んん……」
話しかけても少しもこちらを確認すらせず、ただただ声をあげるだけの彼は、もはや人形みたいなものだろう。
「君も分かるだろう。アルファは確かに嫉妬の感情は少ない。だが、その代わりに自分が決めたオメガに執着する。私やバイロンからバトラルを拐おうなんて……。まぁ、今の君にこんなことを言っても意味はないか」
「ぁ……ぁ……」
「ああ、そうだ。君に伝えないといけないことがあるんだったよ。ふふ。先ほどの検査の結果によって実験が終わったんだ。おめでとう。君はオメガ性になった。オメガ性は我が国ボートルニア帝国において優遇される。それが例え犯罪者だとしてもね。だから、今後絶対に極刑にはならないよ」
「ぅぁ……あ……ああ」
こちらが何を言ってるかなど、もはや理解などできないのだろう。
「まぁ、だが、この実験は成功とは言い難いね。ここまで人格が破壊されているようでは実用の道はまだまだ遠いだろう。だが、君のおかげで研究者たちには良い研究結果が得られただろう」
「はい殿下。今回の研究結果で、多くの課題が見つかりました。今回の実験はとても有意義なものでした。ジョーダンさん、ご協力感謝いたします」
研究者の男が、ジョーダンを見てにっこりと笑い、礼を言っても、やはりジョーダンはただ声を上げるのみで無反応だった。
「殿下、ジョーダンさんは今後どうなるのですか?」
「ああ、下位貴族に下げ渡す。転換オメガから生まれた子供の性別がどうなるかも今後役に立つ研究内容だろう。下げ渡し先の貴族達にはこちらから話を通しておくので、研究を続けてくれ」
「はっ」
研究者の男は、返事をすると、次の研究に向かって慌ただしく出て行った。
「さて、私はバトラルと昼食でも摂ろうかな」
愛しいバトラルを思い浮かべると、自然と口角が上がるのを抑えられない。
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